6.3.2 シェルとチューブ(No.39)(2010.01.19)
シェル(胴部)の構造と仕様
一般的にシェル&チューブ式(shell & tube)が多用されていることはすでに述べた。
このシェルは外界と流体との境界を形成する部位(原子力用語ではバウンダリを維持する)であり、内部には流れを制御し流速を増すことで伝熱係数を改善するためにじゃま板(バッフル)が複数設置されている。その他にじゃま板を支持するタイロッドやチューブを支持して振動を抑えるチューブサポート、シェル側入口ノズルから流入する流体によりチューブ表面のエロージョン防止のための緩衝板などが設けられている。シェルのサイズについてはTEMAでは特に規定されておらず、各製造者の標準に従っている。
チューブ(管部)の仕様
チューブには直管と曲げ管の二種類があり、後者はUチューブに採用される。チューブ側の構造にはチューブを支持するチューブシート(管板)やチューブ側の入口部と出口部を形成するチャンネル(仕切室)や流体を分割する仕切板などがある。
このチューブの長さや外径についてはTEMAで規定されており、全てインチ表示である。一般的な長さとしては、
96" (2438mm), 120" (3048mm), 144" (3658mm), 192" (4877mm), 240" (6096mm)
この長さは実際の全長で、この中にはチューブシート厚さやそこからの突き出し長さも含むので、伝熱に寄与する長さは次式で計算する。
有効長さ = 全長-(チューブシート厚み+突き出し長さ)
また、Uチューブでの全長は曲がり部の接線部からの直線長さであり、曲げ部の長さを含んでいないことに注意したい。そのために、伝熱計算で曲げ部を有効長さに加えるかどうかの選択があるので、これも注意したい。。
チューブ外径もインチ表示で、
- 1インチ未満:1/4" 3/8" 1/2" 5/8" 3/4" 7/8"
- 1インチ以上:1" 1.1/4" 1.1/2" 2"
この中で3/4"(19.1mm)、1"(25.4mm)、1.1/2"(38.1mm)が多く使用されている。また、チューブ肉厚も規定されており、B.W.G表示になっている。このB.W.GはBirmingham Wire Gaugeの略で、電線の太さやメッシュや金網の線の太さに今でも使用されている単位である。先ほどの3/4"(19.1mm)、1"(25.4mm)、1.1/2"(38.1mm)を例に取ると、材質別にB.W.G番号がTEMAにて規定されている。
3/4"(19.1mm):B.W.G16 (1.65mm) or B.W.G14 (2.11mm) or B.W.G12 (2.77mm) for Carbon Steel
3/4"(19.1mm):B.W.G18 (1.24mm) or B.W.G16 (1.65mm) or B.W.G14 (2.10mm) for Other Alloys
1"(25.4mm):B.W.G14 (2.11mm) or B.W.G12 (2.77mm) for Carbon Steel
1"(25.4mm):B.W.G16 (1.65mm) or B.W.G14 (2.11mm) or B.W.G12 (2.77mm) for Other Alloys
流体選定とシェル&チューブ
二つの流体のどちらをシェル側にするかチューブ側にするかは、その流体の特性や運転条件に依る。
シェルとチューブの構造を考えてみるとわかるが、チューブ側の管内クリーニングは物理的(ジェット水洗やブラシなど)にも化学的(ケミカルクリーニング、化学洗浄)にも容易であるが、シェル側のクリーニングは構造的に複雑で溜まり部が存在するために困難である。そこで汚れ係数が大きい流体や摩耗性や腐食性の可能性がある流体はチューブ側へ流すことになる。以下に流体のシェル側チューブ側選定のためのフローチャートを紹介します。
ここでA流体とB流体の性状を比較しながら選定を進めます。例えば、A流体の汚れ係数(あるいは摩耗性や腐食性)がBに比べ大きい場合には、A流体をチューブ側に選定します。ただし、A流体がスラッジなどを含み狭いチューブ内で閉塞する可能性が大きい場合にはA流体をシェル側に選定します。(シェル側のクリーニングが問題になりますが)
また、先ほどの性状が同程度の場合には設計圧力が高い流体をチューブ側に選定することでコストアップを回避します。設計温度での選定はフローチャート通りには単純ではありません。例えば加熱による伸びの問題や熱応力の問題、そして材質選定などが絡んできますので最終判断には注意が必要があります。そのために流体Aの設計温度が高いからと行って「A流体→チューブ側」に矢印を直接繋いでおりません。
- 第1章 物質収支の計算
- 1.1 設計基本
- 1.2 物質収支計算ツールの準備
- 1.3 原子バランスの組み込み
- 1.4 気液分離
- 1.5 ストリームの合流(Addstream)
- 1.6 平衡定数の計算
- 1.7 平衡定数近似式の確定
- 1.8 平衡定数Kと圧平衡定数Kp
- 1.9 水蒸気改質炉出口組成計算
- 1.10 凝縮水分離とPSA水素精製
- 1.11 改質条件とCO転化条件と水素回収率への影響
- 第2章 熱収支の計算
- 2.1 熱収支計算の基礎
- 2.2 熱収支計算表の作成
- 2.3 ガス系の加熱と冷却
- 2.4 水蒸気改質炉の物質熱収支
- 2.5 予熱空気と水蒸気改質炉
- 2.6 燃焼系熱回収とスチーム発生
- 2.7 改質炉対流部プロセス設計
- 第3章 容器の設計
- 3.1 容器の種類
- 3.2 貯蔵タンク
- 3.3 分離器
- 第4章 回転機の設計
- 4.1 回転機の基礎
- 4.2 ポンプの設計
- 4.2.1 ポンプの種類と選定
- 4.2.2 ポンプのデータシート
- 4.2.2 ポンプのデータシート(流量について)
- 4.2.2 ポンプのデータシート(揚程について)
- 4.3 遠心ポンプの設計
- 4.3.1 遠心ポンプ効率の推定
- 4.3.2 遠心ポンプのNPSH
- 4.3.3 遠心ポンプのプロセス計算
- 第5章 水蒸気改質炉設計
- 5.1 改質管の設計
- 5.1.1 改質管とは
- 5.1.2 改質管の材料
- 5.1.3 Larson-Miller Parameter(LMP)
- 5.1.4 改質管の肉厚計算
- 5.2 水蒸気改質炉対流部の設計
- 5.2.1 伝熱計算
- 5.2.2 スタートアップ時の挙動
- 5.3 運転停止と水蒸気改質炉の設計
- 5.3.1 運転停止の種類
- 5.3.2 緊急停止における水蒸気改質炉
- 5.3.3 対流部熱交換器のクリープ破断
- 5.4 安全停止と改質炉設計
- 第6章 熱交換器の設計
- 6.1 熱交換器とプロセス設計
- 6.1.1 熱交換器性能とその影響
- 6.1.2 熱交換器のプロセスデータ
- 6.2 熱交換器と物性
- 6.2.1 凝縮と物性
- 6.2.2 凝縮曲線の作り方
- 6.2.3 凝縮曲線と熱交換器設計
- 6.2.4 エンタルピーの計算
- 6.2.5 凝縮熱伝達と有機溶剤
- 6.2.6 凝縮熱伝達と不凝縮ガスの影響
- 6.2.7 熱伝達と粘度の影響
- 6.2.8 熱伝達と材料の影響
- 6.3 熱交換器の選定
- 6.3.1 熱交換器の分類と種類
- 6.3.2 シェルとチューブ
- 6.3.3 熱交換器の用途とTEMA型式
- 第7章 計装制御
- 4.1 FLPT
- 4.2 圧力制御
- 4.2.1 化学プラントにおける圧力制御
- 4.2.2 圧縮機吸込側の圧力制御システム
- 4.2.3 圧縮機吸込側の圧力調節弁の容量
- 4.2.4 圧力上昇の要因
- 4.2.5 Closed outlet