この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

6. 熱交換器の設計

6.3 熱交換器の選定
6.3.2 シェルとチューブ(No.39)NEW(2010.01.19)

シェル(胴部)の構造と仕様

一般的にシェル&チューブ式(shell & tube)が多用されていることはすでに述べた。
このシェルは外界と流体との境界を形成する部位(原子力用語ではバウンダリを維持する)であり、内部には流れを制御し流速を増すことで伝熱係数を改善するために邪魔板(バッフル)が複数設置されている。その他に邪魔板を支持するタイロッドやチューブを支持して振動を抑えるチューブサポート、シェル側入口ノズルから流入する流体によりチューブ表面のエロージョン防止のための緩衝板などが設けられている。シェルのサイズについてはTEMAでは特に規定されておらず、各製造者の標準に従っている。

チューブ(管部)の構造と仕様

チューブには直管と曲げ管の二種類があり、後者はUチューブに採用される。チューブ側の構造にはチューブを支持するチューブシート(管板)やチューブ側の入口部と出口部を形成するチャンネル(仕切室)や流体を分割する仕切板などがある。
このチューブの長さや外径についてはTEMAで規定されており、全てインチ表示である。一般的な長さとしては、

96" (2438mm), 120" (3048mm), 144" (3658mm), 192" (4877mm), 240" (6096mm)

この長さは実際の全長で、この中にはチューブシート厚さやそこからの突き出し長さも含むので、伝熱に寄与する長さは次式で計算する。

有効長さ = 全長-(チューブシート厚み+突き出し長さ)

また、Uチューブでの全長は曲がり部の接線部からの直線長さであり、曲げ部の長さを含んでいないことに注意したい。そのために、伝熱計算で曲げ部を有効長さに加えるかどうかの選択があるので、これも注意したい。。
チューブ外径もインチ表示で、

1/4", 3/8", 1/2", 5/8", 3/4", 7/8", 1", 1.1/4", 1.1/2", 2"

この中で3/4"(19.1mm)、1"(25.4mm)、1.1/2"(38.1mm)が多く使用されている。また、チューブ肉厚も規定されており、B.W.G表示になっている。このB.W.GはBirmingham Wire Gaugeの略で、電線の太さやメッシュや金網の線の太さに今でも使用されている単位である。先ほどの3/4"(19.1mm)、1"(25.4mm)、1.1/2"(38.1mm)を例に取ると、材質別にB.W.G番号がTEMAにて規定されている。

3/4"(19.1mm):B.W.G16 (1.65mm) or B.W.G14 (2.11mm) or B.W.G12 (2.77mm) for Carbon Steel
3/4"(19.1mm):B.W.G18 (1.24mm) or B.W.G16 (1.65mm) or B.W.G14 (2.10mm) for Other Alloys
1"(25.4mm):B.W.G14 (2.11mm) or B.W.G12 (2.77mm) for Carbon Steel
1"(25.4mm):B.W.G16 (1.65mm) or B.W.G14 (2.11mm) or B.W.G12 (2.77mm) for Other Alloys

流体選定とシェル&チューブ

二つの流体のどちらをシェル側にするかチューブ側にするかは、その流体の特性や運転条件に依る。
シェルとチューブの構造を考えてみるとわかるが、チューブ側の管内クリーニングは物理的(ジェット水洗やブラシなど)にも化学的(ケミカルクリーニング、化学洗浄)にも容易であるが、シェル側のクリーニングは構造的に複雑で溜まり部が存在するために困難である。そこで汚れ係数が大きい流体や摩耗性や腐食性の可能性がある流体はチューブ側へ流すことになる。以下に流体のシェル側チューブ側選定のためのフローチャートを紹介する。

ここでA流体とB流体の性状を比較しながら選定を進めます。例えば、A流体の汚れ係数(あるいは摩耗性や腐食性)がBに比べ大きい場合には、A流体をチューブ側に選定します。ただし、A流体がスラッジなどを含み狭いチューブ内で閉塞する可能性が大きい場合にはA流体をシェル側に選定します。(シェル側のクリーニングが問題になりますが)
また、先ほどの性状が同程度の場合には設計圧力が高い流体をチューブ側に選定することでコストアップを回避します。設計温度での選定はフローチャート通りには単純ではありません。例えば加熱による伸びの問題や熱応力の問題、そして材質選定などが絡んできますので最終判断には注意が必要があります。そのために流体Aの設計温度が高いからと行って「A流体→チューブ側」に矢印を直接繋いでおりません。

二重管式熱交換器

チューブ式熱交換器の一つに二重管式熱交換器があります。このタイプの熱交換器は構造が簡単で安価であるという特徴を有していますので、伝熱面積が1m2以下の熱交換器に適しています。
例えば、水と空気の熱交換器で伝熱量が4,000kcal/h、流量がそれぞれ2,000kg/hと300kg/h、温度条件が水側で100℃→98℃、ガス側で30℃→80℃の場合を想定しますと、シェル&チューブ式の仕様は、

BEMタイプ、シェル径200mm、チューブ24本、チューブ外径と長さ25.4mm×3,000mm、総括伝熱係数18kcal/m2hC、伝面5.6m2

これに対して二重管式であれば、

外径60.3mm内径52.5mm、チューブ1本、チューブ長さ3,000mm、総括伝熱係数190kcal/m2hC、伝面0.3m2

このように伝面が1/20となりコストも40%程度下がる。このような小型熱交換器の領域では二重管式やプレート式などの採用を考慮すべきである。