この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

6. 熱交換器の設計

6.2 熱交換器と物性
6.2.5 凝縮熱伝達と有機溶剤

コンデンサー(凝縮器)やリボイラー(再沸器)は凝縮熱伝達を利用した熱交換器で、形式としては多管式熱交換器(Shell & tube)が多く採用されています。また、横型だけでなく縦型も採用されており、熱伝達係数が良好なのが特徴です。

石油精製プラントや石油化学プラントでは、これらの熱交換器は蒸留塔のコンデンサーやリボイラーとして多くの実績があり、その熱伝達の現象面については十分に研究がなされているように思われますが、実はそうではなく、まだまだ改善の余地が残されている分野です。

その理由の一つとして凝縮熱伝達の現象の違いがあります。すでに知られていることですが、凝縮には膜状凝縮と滴状凝縮の二つがあります。水の場合で膜状凝縮における熱伝達係数は4,000~6,000kcal/m2hr-K(4,600~7,000W/m2-K)ですが、滴状凝縮では30,000~40,000kcal/m2hr-Kと言われています。
実際の装置における凝縮はおそらく膜状凝縮と滴状凝縮の中間ではないかと考えられているのですが、実際の設計では安全を見て膜状凝縮における熱伝達係数を採用しています。

膜状凝縮における境膜係数の推算式

Nu数で有名なNusseltは膜状凝縮における熱伝達が膜の厚さのみに支配されるとして、液膜内の流れが層流として次式を理論的に導き出しました。

使用されている各変数の内容を以下に示します。

膜状凝縮には垂直面での凝縮と水平面での凝縮があり、先ほどの推算式の係数が違っています。垂直壁や垂直管で係数Cは 0.943 として与えられており、水平管では L を管の外径に置き換えて、係数Cは 0.725 と与えられています。

水と有機溶剤

膜状凝縮における境膜伝達係数を水と他の有機溶剤について計算してみましょう。いずれも圧力を大気圧付近にしており、係数Cは0.943、温度差を10℃、長さを1mとしており、その結果を下表に示します。

物性 単位 飽和水 アンモニア エタノール メタノール アセトン トルエン ヘキサン
圧力 MPa 0.101 0.104 0.104 0.112 0.101 0.100 0.102
温度 deg.C 100 -33 79 67 56 110 69
熱伝導度 W/m-K 0.674 0.612 0.154 0.188 0.152 0.113 0.105
密度 kg/m3 959 681 734 747 748 780 614
粘度 mPa-s 0.279 0.259 0.444 0.332 0.238 0.261 0.203
潜熱 kJ/kg 2257 1336 855 1091 513 365 338
境膜伝熱係数 W/m-K 6481 4539 1309 1753 1345 986 867

このように水と比べ有機溶剤の伝熱係数が13~27%に低下していることがわかるでしょう。この理由は有機溶剤の熱伝導度が水に比べ低いことが上げられます。ただし、ここで扱った物質では粘度がそれほど大きくないので伝熱係数が良好ですが、粘度が大きい場合にはさらに伝熱係数が低下しますので注意を払う必要があります。

膜状凝縮と滴状凝縮

「化学工学概論」(八田四郎次、前田四郎共著:共立出版発行)によれば、膜状凝縮とは

凝縮した液が膜状に壁面に付着しながら重力で流下する状態。

鉛直方向に設置されている冷却面を考えると、上部では液膜厚みが薄く重力の影響が大きいので層流を形成しているが、下に行くに従い液膜の厚みが増し、乱流を形成する。
これに対して滴状凝縮とは、

凝縮液が滴状となって滑り落ち、壁面の大部分が絶えず裸で直接蒸気に触れている状態。

この滴状凝縮に関する現象については良くわかっていないので、凝縮器などの設計においては膜状凝縮を前提においた性能計算を行うことになっている。