この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

5. 水蒸気改質炉設計

5.2 水蒸気改質炉対流部の設計
5.2.1 伝熱計算

対流部の機器設計を行うためには、プロセス条件をもとに対流部の伝熱計算を行う必要があります。この伝熱計算に必要なプロセス条件を以下に示します。

  1. 交換熱量(W or GJ/h)
  2. プロセス側および燃焼ガス側の入口出口温度(℃)
  3. プロセス側の入口圧力と許容圧損(MPa)
  4. プロセス側の流量、密度(分子量)、比熱、粘度、熱伝導度
  5. プロセス側および燃焼ガス側の汚れ係数

これらをもとにプロセス側(管内)の伝熱係数を計算し、次に燃焼ガス側の伝熱係数、汚れ係数および管壁の伝熱係数を求め、最終的に総括伝熱係数(Overall U)を計算します。
一般的な総括伝熱係数(ただし管外側基準 & bare tube base)は、燃焼ガスの高温領域(1000~600℃)では約100W/m2-deg.C、低温領域(600~100℃)では約150W/m2-deg.Cである。

伝熱計算では管内基準と管外基準があり、チューブ内径をもとに伝熱計算を行う場合を管内基準と言い、外径をもとに行うのを管外基準という。また、燃焼ガスの低温領域では伝熱面積を大きくするために、チューブにフィンを付ける。このフィンの大きさにより伝熱面積が変わってしまうので、フィンがない状態(bare tube)で伝熱面積を計算して総括伝熱係数を算出することを bare tube base と言う。

先ほどの総括伝熱係数をもとに伝熱面積を計算してみたい。ただし、廃熱ボイラ(WHB)+スチーム過熱器(SSH)は全て廃熱ボイラとし、空気予熱器(CA Heater)については型式により大きく伝熱係数が異なるので、省略する。

表1 プロセス条件

機器名 MG Heater WHB NG Heater
交換熱量 GJ/h 33.92 77.24 15.44
交換熱量 MW 9.42 21.46 4.29
プロセス側温度℃ 364/560 252/252 25/370
燃焼ガス側温度℃ 950/808 808/471 471/400
平均対数温度差℃ 416 362 209
総括伝熱係数W/m2-℃ 100 100 150
伝熱面積m2 815 2135 493
設計温度℃ 755 530 420
設計圧力MPa 3.3 4.5 3.6

設計温度を参考に材料選定を行うと、MG HeaterでSUS304HTB、WHBでSTBA24(2-1/4Cr1Mo)、最後のNG HeaterではSTB410(C.S)を採用した。

STBA24の代わりに、最近ではクロム耐熱鋼STBA26(9CrMo)を使用することが多い。この材料は炭素無添加でクリープ強度が改善されている材料。

5.2.2 強度計算

ここでは熱交換器のチューブ肉厚を計算してみたい。この肉厚計算は本来は機器設計の範疇であるが、後述する過熱(overheating)の際の挙動の検討のために必要となる。
その結果を下表に示す。ただし、設計条件は表1の数値を使用し、各材料における許容応力はJISを参考にしている。なお、JISの各温度における許容(引張)応力の表からは、STB410の使用限界温度は550℃、STBA24の使用限界温度は650℃、SUS304の使用限界温度は800℃となっている。

表2 肉厚計算

機器名 MG Heater WHB NG Heater
材料 SUS304HTB STBA24 STB410
許容応力 MPa 16.4 60.8 66.2
内径mm 139.7 114.3 101.6
肉厚mm(MSW) 15.5 6.0 4.0

5.2.3 スタートアップ時の挙動

すでに述べたように、水蒸気改質炉のスタートアップ(スチーム昇温)時において、NG Heaterのプロセス側(管内)に何も流れない No flow の状態が発生する。この状態は9~12時間程度続くことがあり、プラントの運転やメンテナンス状況などにも依るが、多い場合には年に2~3回は起こりえる。(国内では極めて少ないが)

そうなるとチューブは高温の燃焼ガスにさらされ、メタル温度は設計温度を超える可能性がある。さきほどの表からもわかるように、NG Heaterでは設計温度を約20℃超えてしまう。

  1. 設計温度:450℃
  2. 燃焼ガス温度:471℃(常時)

そこで前述のクリープ破断の可能性を検討しておく必要がある。つまり、No flowの状態ではメタル温度は燃焼ガス温度に等しくなるとして、クリープ破断応力が許容応力(66.2MPa)に等しくなる時間をクリープ破断に至る寿命と考える。
まず、適当に燃焼ガス温度を仮定して、STB410におけるクリープ破断に至る寿命を求めてみます。すると、

  1. メタル温度=燃焼ガス温度 471℃:寿命 100,000時間以上
  2. メタル温度=燃焼ガス温度 480℃:寿命 100,000時間以上
  3. メタル温度=燃焼ガス温度 500℃:寿命 35,000時間
  4. メタル温度=燃焼ガス温度 520℃:寿命 11,000時間

つまり、プロセスガスの流れがとまっても、燃焼ガス温度が通常時471~480℃程度であれば、プラントの設計寿命(およそ10~15年とすると100,000時間)内では材料はクリープにより破壊されることはないが、それより高温では短い時間内でクリープ破壊される可能性があることがわかる。

もし、何らかの原因で燃焼ガス温度が上記の温度より上昇した場合、寿命は急激に短くなる。例えば、540℃では3400時間、560℃では1100時間、580℃では450時間となる。それでも年に2~3回で12時間程度であれば、10~15年間運転しても合計は240~540時間となり、すぐに大きな問題にはならないと言える。

ただし、ここでは微細な金属組織への影響については考慮していないことに注意

しかし、このような現象がさらにシビアになる可能性はあるのであろうか。実は起こりえるのである。もし、起こりえるとしたらどのような運転においてか。そして、メタル温度が更に上昇する場合にはどう対応すれば良いのかについては次回に述べたい。



このSTB410におけるクリープ破壊と寿命に関する計算表を用意しておりますので、詳細はSTB410のクリープ強度と寿命をダウンロードして下さい。

総括伝熱係数の計算式

リフォーマーチューブの設計にも仕様している総括伝熱係数の計算式をお温習いしてみましょう。まず、記号の定義を以下のようにします。

U 総括伝熱係数 W/m2℃
hi 管内境膜伝熱係数 W/m2℃
ho 管外境膜伝熱係数 W/m2℃
fi 管内汚れ係数 m2℃/W
fo 管外汚れ係数 m2℃/W
k 管材質の熱伝導率 W/m℃
t 管厚さ m
di 管内径 m
di 管外径 m

総括伝熱係数を内径基準としますと、

1/U = (1/hi)(do/di)+fi(do/di)+(t/k)(do/dw)+1/ho+fo

ただし、dwは対数平均径で、(do-di)/ln(do/di)で計算します。