この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

4. 回転機の設計

4.1 回転機の基礎
4.1.1 回転機の種類

化学プラントには多くの回転機(rotating machine)が使用されています。この回転機にはポンプ(pump)、圧縮機(compressor)、ファン(fan)、ブロアー(blower)、スチームタービン(steam turbine)、ガスタービン(gas turbine)、ハイドロリックタービン(水車)やガスエンジンやディーゼルエンジンなどの(engine)など、多くの種類があります。

これらの回転機は化学プラントや石油精製あるいは石油化学プラントでは用途別に使用されています。例えば、

回転機の種類 主な適用プラント 主な用途
ポンプ 化学、石油精製、石油化学、原子力 プロセス流体移送、製品払出
圧縮機 化学、石油精製、石油化学 プロセスガス圧縮、原料ガスや製品ガスの送出
ブロワー 化学、石油精製、石油化学 ボイラー・加熱炉燃焼ガスの排出、燃焼空気の供給
ファン 化学、石油精製、石油化学、原子力 ボイラー・加熱炉燃焼ガスの排出、燃焼空気の供給、空調
スチームタービン 化学、石油精製、石油化学、原子力 圧縮機用駆動機、ブロワー駆動機、ポンプ駆動機、発電機用駆動機
ガスタービン 化学、石油精製、石油化学 空気圧縮機用駆動機、発電機用駆動機
ハイドロリックタービン 化学、石油精製 高圧回収(液とガス)、発電機用駆動機(水力発電)
エンジン 化学、石油精製、石油化学 発電機用駆動機

4.1.2 回転機と流体の運動

回転機の機能や構造を理解するためには、流体の運動についての知識が必要になります。詳細は専門書に委ねますので、ここでは基本的かつ応用力がある事柄について説明したいと思います。
遠心式ポンプや遠心圧縮機などのように羽根(impeller blade)の間を流体が通過する間に、羽根により流れ方向が変わるために流体と羽根の間に力の授受が行われます。運動量理論によれば、この回転する流体(質量m)はF を回転する方向に作用する円周力とし、r をその半径とすれば次式で示す回転力T(トルク,torque)を受けることになります。

T = Fr

このm・rv は角運動量で、v は速度、t は時間を意味しています。
回転運動の場合に、変位θの単位時間当たりの変化(dθ/dt)を角速度ωとすれば、v = rωになります。なお角速度ωは毎分回転数nを使って、ω = 2πn/60 で計算します。

動力Lは回転力と角運動量の積で表されます。つまり、

L = T・ω = Fr・ω = Fv

ここで力Fはd(mv)/dtですから次式となります。

L = Fv = d(mv)/dt・v = d(mvv)/dt

この式は動力は質量と速度^2の積の時間当たりの変化で表されることを意味しています。また、時間当たりの質量が質量流量で等速度運動とすれば、動力は流量Q、密度ρと速度^2の積になり、ベルヌーイの定理からヘッド(揚程あるいは水頭)は速度^2ですから、動力は流量Q、密度ρとヘッドの積になります。

L = ρQH

以上の説明から回転機にとって重要な関係を導き出すことが出来ます。つまり、

  1. 回転速度vは回転数nに比例する。
  2. ヘッドは回転速度vの2乗、すなわち回転数nの2乗に比例する。
  3. 動力は回転速度vの3乗、すなわち回転数nの3乗に比例する。

4.1.3 ヘッドと圧力

先ほどのヘッドは速度ヘッドや圧力ヘッド、そして位置ヘッドと損失ヘッドの合計です。回転機では流体を回転させ高速度を得ることで流体の圧力を上昇させ、液体を低位置から高位置に移送したり、気体を圧縮させて圧力を高めたりします。
この圧力ヘッドは速度の関数ですから、圧力を高めるためには回転数を大きくするか羽根長さを大きくする必要があります。しかし、高速回転することで羽根に大きな引っ張り応力が生じますので、機械設計上の理由から回転速度に制限が設けられます。

例えば、分子量の異なるガスを圧縮する場合を考えてみましょう。計算の前提として、吸込条件を大気圧(0.1013MPa)で温度25℃とし、回転数は10,000回転で一定とします。
その計算の結果、分子量が小さなメタンや水素では空気に比べ吐出圧力が低いことがわかります。また水素の場合、計算上吐出圧力は吸込圧力より下がってしまい、遠心式圧縮機は適用できないことが理解できると思います。(現象的にどうなるのかは不勉強で不詳)

項目 単位 空気 メタン 水素
回転数 rpm 10,000 10,000 10,000
角速度ω rad/sec 1047.2 1047.2 1047.2
羽根長さ mm 600 600 600
速度ヘッド m 20142 20142 20142
ガス分子量 29 16 2
密度 kg/m3 1.19 0.654 0.082
吐出圧力 MPa(abs) 0.234 0.129 (0.016)

圧縮機、ブロワー、ファンの違いは?

圧縮機の吐出圧力は100kPa(1kg/cm2G)以上でかつ圧縮比が2以上と解説されているものもあるが、実際には2以下の圧縮比を有する圧縮機も数多く、分類基準は明確ではない。
旧機械工学便覧では、吐出圧力1mAq未満をファン、1~10mAqをブロワー、10mAq(100kPa)以上を圧縮機と仮に分類している。これに従って馬力計算式も若干異なっているが、基本式は皆同じである。