この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

5. 水蒸気改質炉設計

5.1 改質管の設計(Reformer Tube)
5.1.4 改質管の設計

先ほど説明したLarson-Miller Parameterから材料の破断時間を求め、そのときの破断応力を用いて改質管の肉厚を計算します。
この改質管の設計に関与するパラメータは以下の5項目です。

  1. 設計圧力(MPa)
  2. 設計温度(℃)
  3. チューブ(改質管)内径(mm)
  4. チューブ(改質管)材料の破断応力(MPa)
  5. チューブ(改質管)材料の破断時間(寿命)(hours)


次に肉厚の計算式を示します。ただし、

  • t:チューブ(改質管)肉厚(mm)、Dm:チューブ(改質管)平均径
  • Di:チューブ(改質管)内径(mm)
  • USTi:内側不健全層厚さ(mm)
  • USTo:外側不健全層厚さ(mm)
  • P:設計圧力(MPa)
  • S:破断応力(MPa)、η:安全係数

この不健全層厚さ(UST:Unsound Thickness)とは、遠心鋳造法においてチューブ内側と外側に形成される層で、厚みはそれぞれ1.6mmと0.8mmで、母材よりは強度が若干低下している。そこでメタル温度の低下を目的に、チューブ(改質管)内面のみを機械加工により削り薄くするようにしている。そこでUSTiは0mmで、USToは0.8mmとする。

先ほどの5つの項目に対する影響因子を、プロセス設計由来のものと機器設計由来のものとに分けてみると、下表のようになります。この点からリフォーマーチューブ設計は機械設計だけではなくプロセス設計との関わり合いが強いことがお分かりになるでしょう。

  1. 設計圧力プロセスガス圧力をもとに決定する。これ以外にチューブ全長での差圧やメタル温度を考慮する必要がある。
  2. 設計温度チューブ平均径におけるメタル温度をもとに決定する。メタル温度に影響する要因としては、燃焼ガス温度やバーナーの火炎温度、それにチューブ外側伝熱係数(燃焼ガスの輻射および対流伝熱)やチューブ内側伝熱係数チューブ壁の抵抗係数などが上げられます。これらは炉の構造や燃焼方式から由来するものです。
  3. チューブ内径は充填する触媒量熱流束(Heat Flux)を考慮して決定します。一般には触媒の充填量からは最小チューブ内径が、熱流束からは最大チューブ内径が計算でき、チューブコスト+触媒コストを考慮しつつ最適化を行って決定します。
  4. 破断応力は選定した材料データ(Larson-Miller Parameter)から決定します。
  5. 破断時間(寿命):破断時間は100,000時間(約10年間)が標準とされています。
パラメータ プロセス設計 機器設計 備考
設計圧力 プロセスガスの圧力条件 --- チューブ差圧、メタル温度
設計温度 プロセスガスの温度条件 燃焼ガス温度、伝熱係数、火炎温度 炉構造、燃焼方式
チューブ内径 触媒量 チューブ長さと本数 コスト
破断応力 材料選定 材料メーカ選定 LMPと安全係数
破断時間(寿命) 運転時間、運転履歴 材料メーカ選定 100,000時間が標準

5.1.5 改質管設計の具体例

今までの内容を具体例を挙げて説明します。
まず、設計圧力と設計温度を決定するためにはリフォーマーの物質熱収支を計算する必要があります。これについてはすでに第1章で説明した物質収支計算表(GasBal)にて検討しておりま。ただし、今回でリフォーマーチューブの差圧を修正し、出口圧力を変更しましたので、改めて物質熱収支計算表(GasBal&0.9とFlueGasBal&0.22 as latest version)を公開しましたので、詳細はトップページの「Useful Tools」からダウンロードして下さい。

  1. 入口条件:2.8MPa(絶対圧)、560℃
  2. 出口条件:2.3MPa、875℃
  3. Heat Duty:236.157GJ/hr
  4. 火炎温度:1852℃(参考値)
  5. 燃焼ガス量:6442kmol/hr

最小触媒量を14m3とし、平均熱流束を内径ベースで0.3GJ/m2と仮定します。そこで、

  1. チューブ長さ10m
  2. チューブ内径4inch(101.6mm)

と設定しますと、触媒量からチューブ本数は約173本となり、これが最小チューブ本数となります。また、平均熱流束からはチューブ本数を算出しますと247本となり、これが最大チューブ本数となります。両者の間には1.4倍強の開きがありますので、コストをにらんだ最適設計が要求されます。

ここでは最適化は行わずに平均熱流束ベース(チューブ247本)でのチューブ(改質管)のシミュレーションを行い、プロセスガスとチューブメタルの温度分布を求めました。その結果を下図に示しました。

この結果、チューブメタルの最高温度は約930℃でしたので、余裕を10℃として設計温度を940℃とします。なお、余裕の取り方は運転中の停止回数など運転履歴に依存します。また、設計圧力は入口圧力の2.8MPa(絶対圧力)とします。

チューブ材料はKHR35CTと、LMP(30.329)より破断応力を求めます。その際、AVG.とMIN.の二つがありますが、それぞれ平均の破断応力と最小の破断応力を意味しています。
この例では、最小の破断応力(21.5MPa)をベースに、安全係数を0.8として肉厚を計算しますと、次のようになります。

バーナー燃焼方式とチューブ(改質管)温度分布

水蒸気改質炉の燃焼方式はバーナーの設置場所や火炎の向きにより、Down firing、Up firing そして Side firing などの種類がある。これらの燃焼方式は水蒸気改質炉形状と密接な関係があり、チューブ(改質管)を均一に加熱出来るように個々のバーナーの燃焼容量や火炎長さを適切に設定している。それゆえ、チューブ(改質管)の温度分布も燃焼方式に影響される。
なお、右図の温度分布は down firing の例である。