Don't lose to corona.


Google
WWW を検索 サイト内を検索

基本設計を開始する際の出発点がプロセス設計です。化学工学についてある程度知っており、プロセス設計を学びたい方を対象としています。「プロセス設計の実務」はプロセス設計への実務編としてもご利用下さい。

プロセスエンジニアリングの計算ルール

ガスの圧力損失計算液体の圧力損失計算水スチームのフラッシュ計算縦型円筒容器の容量計算 前のページへ
ガス放出の必要時間液体ドレンの必要時間圧縮機の軸馬力計算ポンプの軸馬力計算 次のページへ

6.2.6 凝縮熱伝達と不凝縮ガスの影響

前回は凝縮熱伝達についてお話ししましたが、扱う流体中に凝縮しないガス、つまり、水蒸気中の空気などの不凝縮ガス(まれにイナートガスと言うこともある)が存在する場合には、不凝縮ガスが伝熱抵抗となるために熱伝達係数が低下します。

ただし、どれほど影響を受けるかというのは、圧力や不凝縮ガスの割合によっても大きく変わります。

例えばコンデンシングタイプのスチームタービンでは、排気スチームをコンデンサーで冷却凝縮させることにより大きなスチームのエンタルピー落差を作り、他形式のタービンに比べ大きな動力を回収しております。そのためにはコンデンサーの温度を45~70℃に保っていますが、この温度(圧力)を一定値以下にするために、エジェクターや真空ポンプを使って漏れ込んできた空気を抜きだしています。これを怠りますと復水器の温度圧力が上昇し、排気スチームのエンタルピー落差が減少して回収できる動力が急激に減少することになります。

実際にコンデンシング・スチームタービンの排気圧力を上げていきますと、コンデンサーで凝縮しなかったスチームが大気中に放出されはじめ、あたかも背気タービンのような様相を呈していきます。勿論、回収動力は急激に低下していきます・・・。

ここで不凝縮ガスの熱伝達に対する影響を定量的に見るために、以下に示す条件を設定致しました。

  1. 被凝縮流体:スチーム+空気(約1wt.%)、約7200kg/h、380~55℃
  2. 冷却側流体:冷却水、約367000kg/h、41~55℃
  3. 運転圧力:大気圧
  4. 冷却凝縮熱量:約6000kW

これと比較するために、不凝縮ガスを一切含まないケースを考えます。その結果を下表に示します。


項目 単位 不凝縮ガス含む
不凝縮ガス含まず
熱負荷 kW 5964 5958
伝熱面積 m2 67.6 76.9
総括伝熱係数 W/m2-K 1636 1459
温度差 deg.C 53.7 53.1


このように不凝縮ガスをわずか1%でも含みますと、総括熱伝達係数が低下し所要の伝熱面積が増加します。この例では、総括伝熱係数は約10%低下し、伝熱面積がその割合で逆に増加しています。
この現象はプラントの蒸留塔のコンデンサーに多く見られますが、特にメインコンデンサーの下流に位置して不凝縮ガスを多く含むセカンドコンデンサーにて顕著に表れます。そこで、コンデンサーの設計を行う場合には、記載が無くても不凝縮ガスの存在を一応疑ってみて、必要ならば流体の物性を決定して下さい。

追記
先ほどの例では、不凝縮ガスを含む流体と不凝縮ガスを含まない流体のdew pointはそれぞれ55℃と100℃でしたが、不凝縮ガスを含まない流体の圧力を下げて不凝縮ガスを含むケースと同じdew point(55℃)にした場合には、伝熱特性はどうなるでしょうか?

不凝縮ガスとイナートガス

不凝縮ガスとは不凝縮ガスを含む混合ガスを冷却する際に凝縮しないガスで、例えばスチームタービンや冷凍機に侵入した空気などが代表的な不凝縮ガスです。
これに対してイナートガスは不活性ガスと訳され、例えばタンカー内部の酸素濃度を下げるために注入されるN2 78%, CO2 14%, O2 2~4%のガスや、溶接時に使用されるアルゴンやヘリウム、LPGタンク内に注入するN2などがあります。
化学プロセスでは反応に関与しないガスを不活性ガスと言っており、例えばアンモニア合成におけるメタンやアルゴンがこれに相当します。メタンもアルゴンもアンモニアの冷却凝縮においては不凝縮ガスとしての挙動を示すのでプロセス性能に大きく影響します。そこで合成ガスをPSA装置を通すことでメタンを除去する工夫がなされています。