この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

6. 熱交換器の設計

6.2 熱交換器と物性
6.2.6 凝縮熱伝達と不凝縮ガスの影響NEW

前回は凝縮熱伝達についてお話ししましたが、扱う流体中に凝縮しないガス、つまり、水蒸気中の空気などの不凝縮ガス(まれにイナートガスと言うこともある)が存在する場合には、不凝縮ガスが伝熱抵抗となるために熱伝達係数が低下します。

ただし、どれほど影響を受けるかというのは、圧力や不凝縮ガスの割合によっても大きく変わります。

例えばコンデンシングタイプのスチームタービンでは、排気スチームをコンデンサーで冷却凝縮させることにより大きなスチームのエンタルピー落差を作り、他形式のタービンに比べ大きな動力を回収しております。そのためにはコンデンサーの温度を45~70℃に保っていますが、この温度(圧力)を一定値以下にするために、エジェクターや真空ポンプを使って漏れ込んできた空気を抜きだしています。これを怠りますと復水器の温度圧力が上昇し、排気スチームのエンタルピー落差が減少して回収できる動力が急激に減少することになります。

実際にコンデンシング・スチームタービンの排気圧力を上げていきますと、コンデンサーで凝縮しなかったスチームが大気中に放出されはじめ、あたかも背気タービンのような様相を呈していきます。勿論、回収動力は急激に低下していきます・・・。

ここで不凝縮ガスの熱伝達に対する影響を定量的に見るために、以下に示す条件を設定致しました。

  1. 被凝縮流体:スチーム+空気(約1wt.%)、約7200kg/h、380~55℃
  2. 冷却側流体:冷却水、約367000kg/h、41~55℃
  3. 運転圧力:大気圧
  4. 冷却凝縮熱量:約6000kW

これと比較するために、不凝縮ガスを一切含まないケースを考えます。その結果を下表に示します。

項目 単位 不凝縮ガス含む 不凝縮ガス含まず
熱負荷 kW 5964 5958
伝熱面積 m2 67.6 76.9
総括熱伝達係数 kW/m2-C 1459 1636
温度差 deg.C 53.2 53.7

このように不凝縮ガスをわずか1%でも含みますと、総括熱伝達係数が低下し所要の伝熱面積が増加します。この例では、総括伝熱係数は約10%低下し、伝熱面積がその割合で逆に増加しています。
この現象はプラントの蒸留塔のコンデンサーに多く見られますが、特にメインコンデンサーの下流に位置して不凝縮ガスを多く含むセカンドコンデンサーにて顕著に表れます。そこで、コンデンサーの設計を行う場合には、記載が無くても不凝縮ガスの存在を一応疑ってみて、必要ならば流体の物性を決定して下さい。

追記
先ほどの例では、不凝縮ガスを含む流体と不凝縮ガスを含まない流体のdew pointはそれぞれ55℃と100℃でしたが、不凝縮ガスを含まない流体の圧力を下げて不凝縮ガスを含むケースと同じdew point(55℃)にした場合には、伝熱特性はどうなるでしょうか?

膜状凝縮と滴状凝縮

「化学工学概論」(八田四郎次、前田四郎共著:共立出版発行)によれば、膜状凝縮とは

凝縮した液が膜状に壁面に付着しながら重力で流下する状態。

鉛直方向に設置されている冷却面を考えると、上部では液膜厚みが薄く重力の影響が大きいので層流を形成しているが、下に行くに従い液膜の厚みが増し、乱流を形成する。
これに対して滴状凝縮とは、

凝縮液が滴状となって滑り落ち、壁面の大部分が絶えず裸で直接蒸気に触れている状態。

この滴状凝縮に関する現象については良くわかっていないので、凝縮器などの設計においては膜状凝縮を前提においた性能計算を行うことになっている。