この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

2. 熱収支の計算(続き)

2.6 燃焼系熱回収とスチーム発生

2.6.1 燃焼系での熱回収

水蒸気改質炉から発生する燃焼ガスは出口で約1000℃の高温であり、そこからの排熱回収をどのように行うかが、水素設備の原単位を大きく左右します。
すでに述べたように燃焼用空気として予熱空気を使用する場合には、その熱源として燃焼ガスを使用しますが、それだけでは大量の排熱(約125GJ/h)が余ってしまします。そこで水素設備のプロセス側(GasBal0.8)に戻って、燃焼ガスの排熱の使い道を考えてみます。
まず、気が付くのが、原料天然ガスの加熱と原料天然ガスとスチームとの混合気の加熱です。つまり、

  1. NG Heater:原料天然ガスの加熱。加熱温度370℃は原料天然ガスの脱硫触媒の運転温度を考慮して設定。
  2. MG Heater:原料天然ガスとスチームとの混合気の加熱。加熱温度560℃は原料天然ガスのカーボン析出を考慮して設定。

この両者の加熱量はそれぞれ15.44GJ/hと33.92GJ/hであり、燃焼系からの排熱で十分に補うことが可能です。それでも約80GJ/hの排熱が余剰となります。

2.6.2 余剰排熱の利用

余剰排熱の利用法には先ほども説明したように、他のシステムの熱源として利用する以外に以下のような方法があります。

  1. スチームを発生させ、プロセス用スチームや蒸留系の熱源として利用する。
  2. 同じくスチームを発生させ、そのスチームを動力に発電機をまわして電気を得る。→スチームタービン発電機
  3. 同じくスチームを発生させ、暖房用熱源として利用する。
  4. 冷凍機の蒸発器の熱源として利用する。
  5. その他

もし、自設備および関連設備にて大量のスチームを必要とする場合には、スチームを発生させて自家消費し、残りを関連設備に供給する方法が最も安価であり、総合的なエネルギー効率を改善する方法となります。
水素設備の場合、石油精製などのユーティリティーセンターとしての役割を果たしているので、発生したスチームを有効に利用出来る素地があります。そこで、ここではスチームを発生させることで排熱回収を行うことにします。

まず、プロセス側の温度と必要な熱量を表にまとめてみます。なお、スチーム発生用の機器をWHB(Waste Heat Boiler)とし、その所要熱量つまり使用可能熱量は、燃焼系全体の余剰熱量(126.59GJ/h)からNG Heater & MG Heater熱量を差し引いた数値としました。

目的 機器名 所要熱量 温度範囲
原料天然ガスの加熱 NG Heater 15.44GJ/h 25~370℃
原料+スチームの加熱 MG Heater 33.92GJ/h 364~560℃
スチームの発生 WHB 77.24GJ/h 252~350℃
合計 --- 126.59GJ/h ---

なお、スチーム発生の温度範囲(252~350℃)は、スチーム圧力(4.1MPa)の飽和温度252℃と実際に供給している温度350℃を併記したもので、供給されるスチームは252℃から350℃まで過熱されていることになります。
ここで使用した計算をversion0.92に示しましたのでダウンロードしてご覧下さい。

version0.92をダウンロードするLinkIcon

この結果と燃焼系の排ガス温度を比較し、以下の順番にさきほどの加熱器などを並べ、それを下図に示しました。

機器名 プロセス側温度 燃焼系排ガス温度
MG Heater 364~560℃ 950~808℃
WHB 252~350℃ 808~471℃
NG Heater 25~370℃ 471~400℃
CA Heater 25~350℃ 400~164℃




スチーム発生システム

スチームを発生させるためには適応した水と機器が必要となります。適応した水とはスチームの圧力に対応した品質という意味で、JISなどに規定されています。この水を得るためには水処理設備、その中でも高圧スチーム発生には純水製造設備が必要となります。
適応した水(ボイラ給水)の供給が可能になれば、スチーム発生に必要な以下の設備が必要となります。

設備と機器

純水給水ポンプ:純水設備からスチーム発生システムへ純水を供給するポンプ。

純水予熱器:低圧エコノマイザとも言う。供給される純水を脱気器に供給する前に予熱する熱交換器。

脱気器:純水中の酸素を除去するための機器で脱気用に低圧スチームが必要。

ボイラ給水ポンプ:脱気器を出た給水を昇圧しボイラに供給するためのポンプ。

ボイラ給水加熱器:高圧エコノマイザとも言う。ボイラ給水の加熱器。

ボイラ:スチーム発生器で加熱方式や蒸発方式により多種多様。

スチーム加熱器:発生したスチームの過熱器。