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基本設計を開始する際の出発点がプロセス設計です。化学工学についてある程度知っており、プロセス設計を学びたい方を対象としています。「プロセス設計の実務」はプロセス設計への実務編としてもご利用下さい。

プロセスエンジニアリングの計算ルール

ガスの圧力損失計算液体の圧力損失計算水スチームのフラッシュ計算縦型円筒容器の容量計算 前のページへ
ガス放出の必要時間液体ドレンの必要時間圧縮機の軸馬力計算ポンプの軸馬力計算 次のページへ

4.2.2 ポンプのデータシート(運転条件-1)

ポンプのデータシートには、運転条件(Operating condition)、部品構成(Construction)、材料(Materials)、性能(Performance)、シール(Seal)、ユーティリティー条件(CW)、付属品、電動機仕様などがあります。プロセスエンジニアが主として記載する項目は運転条件(Operating condition)ですが、これ以外にもあらかじめ設定すべき項目がありますので、それらを順番に説明します。特にこだわらない限り、遠心ポンプを対象としています。まず、運転条件について説明します。

流体名:具体的に記載すること。例えば、”ボイラ給水”や”DEA溶液”など。

腐食性/浸食性:例えば、”腐食性アミン塩”など。また、流体中に固体(スラリー、粒子)を含む場合には重量濃度などを記載すること。ただし、5wt%以下では大きな影響はないと考えて良いが、固体の大きさに注意のこと。

温度(deg.C):例えば、84deg.Cなど。スタート時など通常モード以外に他の運転モードが予想され運転温度が変わる場合には最低または最高温度を記載すること。この温度により流体の密度や蒸気圧あるいは粘度が変わるので注意のこと。

比重(-):例えば、0.88。取扱流体や運転温度が変わることが予想され、通常時より大きな比重が予想される場合には最高比重を記載すること。

蒸気圧(MPa):例えば、0.04MPa。(最高)運転温度における流体の蒸気圧を記載すること。ただし、流体にガスが溶解している場合には特に注意すること。

粘度(mPa.s):例えば、0.7mPa.s。(最低)運転温度における粘度を記載。ただし、10cSt以下では性能への影響は無いと考えて良い。

流量(m3/h):通常時の流量を記載すること。また、別途、設計流量が存在する場合には別途記載すること。

吐出圧力(MPaG):吐出圧力を記載する。

吸込圧力(MPaG):吸込圧力を記載する。また、運転中に吸込圧力が上昇し、通常時に比較してかなり高い場合には最高吸い込み圧力を記載すること。それにより吐出圧力も上昇するので、最終的にはポンプの設計圧力(ケーシング)の修正が必要になります。

全揚程(MPaG or m):吸込圧力と吐出圧力との差、つまり全揚程を記載すること。ただし、この数値は通常時の吸込圧力を使用して計算すること。

NPSH(m):有効正味吸込揚程を計算し記載すること。

保温保冷:屋内か屋外かを記載すること。特に常温下で粘度が上がる、あるいは固化したり流体が分離する場合には積極的にスチームあるいは温水で保温する必要がある。


次に各項目についての注意点や特記事項を説明します。

腐食性/浸食性

腐食性ならびに浸食性はポンプの材料選定に影響します。

  1. 腐食性が強い場合には金属以外の材料、例えばテフロンやセラミックを使用することも考えなければなりません(例えば、マグネットポンプやセラミックスクリューポンプなど)。特に硫酸など、濃度により材料選定が異なる場合には要注意です。
  2. 腐食性が弱い場合には、回転部分である羽根のみ耐食材料を選定し、非回転部分であるケーシングなどは従来の材料を採用する場合もあり、この判断基準は今までの実績を考慮して決める必要があります。
  3. 浸食性は固形物を含むスラリー流体を取り扱う場合に考慮する必要があります。これも今までの実績を考慮して材料選定を行って下さい。なお、固形物を多く含む場合には、配管内で固形分が沈殿する場合がありますので、配管径のサイジングには限界流速を考慮して決めなければなりません。圧損が増加するからといって、むやみに配管径を大きくすることはできません。
  4. スラリー濃度によりポンプ効率および吐出量が減少しますので注意して下さい。例えば、スラリー濃度30%では、スラリーを含まない場合に比べ効率が85%、吐出量が75%以下に低下します。

温度

温度は流体の密度、粘度、蒸気圧に関係しますので、通常運転時における温度以外にも注意して記載して下さい。

  1. ポンプの吸込側の容器や配管が屋外に設置されている場合には、大気温度や太陽熱の影響を受けますので、夏季は温度が上昇し、冬期は温度が低下します。
  2. 特に屋外に設置されているタンクなどの容器容量が大きく滞留時間が数日に渡っている場合には、タンク内の流体温度が予想以上上昇することがあります。その際、内部流体が蒸発し、液組成が変わったり濃度が上昇することから腐食性が増加したり安定性が損なわれるケースが考えられます。そのような場合には、ポンプだけではなく容器の養生(日陰用の屋根など)を考慮する必要があります。

比重

ポンプの吐出流量Qと揚程Hとの関係は、揚程-流量曲線(H-Q曲線)で示されるように1対1の関係にあります。流量Q(m3/h)が同じであれば揚程Hは一定ですから、流体比重が変わりますと吐出圧力が変わってきます。また、ポンプの動力Nは流量Q、揚程Hおよび密度ρの関数ですから、比重に比例して動力も変わってきます。

N = (ρg)QH

比重が異なる運転モードを想定する場合には、電動機の容量が足りないかどうかをチェックして下さい。

蒸気圧

ポンプ流路内の静圧が流体の蒸気圧より低下しますと、キャビテーションを発生します。例えば、水ポンプで運転温度が100℃の場合では1気圧以下になると水蒸気を生じ、揚程、効率などが急激に低下します。生じた水蒸気は泡となって流路を流れながら潰れて行きます。その際の水撃作用のために騒音や振動を生じ、周辺の壁を浸食します。
ここで注意すべきことは、アミン溶液のように二酸化炭素などのガスを溶解している場合で、一般にはポンプ吸込に繋がっている容器の圧力をアミン溶液の蒸気圧とします。つまり、容器に貯槽されているアミン溶液は、その容器の圧力下でガスを溶解していますので、蒸気圧を容器の圧力とします。

粘度

粘度は壁近傍を流れる際に生じる剪断応力を速度勾配で除した物理量で、粘性係数とも言われます。流体には水で代表されるニュートン流体と、マヨネーズなどの非ニュートン流体があります。ニュートン流体の場合には、粘度は速度勾配に依らず一定であり、一般には温度の関数として表すことができます。
一方、非ニュートン流体では、粘度は速度係数に影響され一定ではありません。この非ニュートンにはビンガム流体や擬塑性流体などがあり、流体の種類により粘度の挙動も変化してきます。
また、非ニュートン流体は速度勾配が変わると違った性質を示すこともありますので、速度勾配を変えた際の粘度データを準備して圧損計算を行い、ポンプメーカと協議しながら機種選定や配管径の決定などを行って下さい。

次回は流量や圧力、NPSHなどについて計算例を含めて説明いたします。

気泡ポンプ(Air Lift Pump)とは?

ブリタニカ国際大百科事典には以下のような説明が載っています。筆者が学生時代に実験棟で研究実験をしていたのが、この気泡ポンプです。

空気揚水ポンプ,エアリフトともいう。揚水管の一部を水中に入れて,その下端に圧縮空気を吹込み,水よりも軽い混合物をつくり,揚水管外の水との比重差を利用して揚水するポンプ。圧縮空気を必要とするが,機械的な可動部分がなくて故障のおそれが少い利点がある。欠点は効率が低いこと,揚水管を深く水没させる必要があること,水圧脈動の影響を受けやすいことなどである。気体として不活性ガスを用い揚油用に用いるものもある。

また世界大百科事典では、

原動機を必要とせず,高圧水のもつエネルギーによってポンプ作用をさせるところに特色があり,沸騰水型原子炉などで用いられている。(3)気泡ポンプ 圧縮空気を用いて揚水作用をさせるポンプ。水中に突っ込んだ揚水管の下端へ圧縮空気を吹き込むと,気泡が管内を上昇するが,それにつれて水もいっしょに上方へ移動する。…

この気泡ポンプに関する研究論文を見つけましたので紹介します。旧い論文の中にも参考になる技術が眠っていることがあります。「水中に於けるAir Screenに関する研究(気泡による水の循環について)