この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

4. 回転機の設計

4.2 ポンプの設計
4.2.1 ポンプの種類と選定

プロセス仕様に合致したポンプを選定する作業はプロセスエンジニアが行います。この際、プロセスエンジニアは「ポンプデーターシート」を作成することになります。このデータシートの内容については後ほど説明します。
ポンプのデータシートを受け取った詳細設計エンジニアは、ポンプ形式を再確認後、ポンプ材質や容量・揚程などに合致したメーカーと型番を選定し、メーカーのエンジニアやプロセスエンジニアと協議しながらポンプの設計を推し進めていきます。

ですからプロセスエンジニアとしてポンプ設計の基本や種類形式を細かく知る必要はないのですが、ある程度の知識は必要です。このある程度の知識とは、例えば、

  1. ターボ形(遠心式など)と容積形(往復式や回転式)の違いと選択の基準
  2. ポンプの構造:ケーシング、軸(シャフト)、羽根車(インペラ)
  3. シール機構:メカシールとグランドパッキン
  4. キャビテーションの原因と対策

特にターボ形(遠心式)と容積形(往復式・回転式)の選定の基準は、一般常識として知っておく必要があります。例えば小流量高揚程あるいは粘性流体の場合には、ターボ形(遠心式)を選定するのではなく容積形を選定することになります。この理由は前回の”4.1.3 ヘッドと圧力”で説明した理屈、つまり高揚程における機械的制限がポンプにも当てはまるからです。また、高粘度液体の場合にはポンプ効率の低下や吐出流量・揚程の減少などの理由から遠心式を適用することが出来ません。

これ以外にポンプ選定で考慮すべき項目としては、流体性状(腐食性かどうかや粘度)、取り扱う流体温度(水冷構造の有無)、NPSH(net positive suction head:有効正味吸込揚程)などがあります。このNPSHはキャビテーション現象と密接な関係がありますので、別途、詳細にお話ししたいと思っています。とりあえずここではキャビテーションについて解説しておきます。

一般に流体を取り扱う回転機械ではその回転数を高く計画することによって機械全体を小型化できるが、流速が大きくなるにつれて圧力の低下をきたすために、部分的にその流体の蒸気圧以下となり、キャビテーション(空洞化)を併発するようになる。
キャビテーション(cavitation)は、流速や温度上昇による蒸気圧の上昇、あるいは曲がり部などで圧力損失が増加するために一時的に圧力が低下することで、流体の一部が蒸発したり流体中に溶解しているガスが遊離することにより発生する運転上の特異現象の一つである。この際、液体中に生じた蒸気やガスにより空洞が生成され、流れに沿いながら壊滅を繰り返すことで継続的な圧力変動を生じ、ポンプ羽根に浸食などのダメージを与える。

次回はポンプのデータシートを作成する上での注意点を中心に説明いたします。

ポンプは何故水を吸い上げるか?

容器内に水を入れωの回転速度で回転させると、中心部の水面が凹み周辺部が盛り上がる。これは半径方向に生じた遠心力(rω^2)がもたらしたもので、半径rにおける圧力pは次式で表される。

p = ρg(h0 + (ωr)^2/2g)

ここでρは水の密度、gは重力加速度である。この式から回転の中心では圧力が低くなることを示しており、低い位置から水を吸い上げるポンプの基本現象を示している。