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基本設計を開始する際の出発点がプロセス設計です。化学工学についてある程度知っており、プロセス設計を学びたい方を対象としています。「プロセス設計の実務」はプロセス設計への実務編としてもご利用下さい。

プロセスエンジニアリングの計算ルール

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2.7 水蒸気改質炉対流部のプロセス設計
2.7.1 対流部配置計画

§2.6 「燃焼系での熱回収とスチーム発生」にて説明したように、水蒸気改質炉の対流部には4つの熱交換器を配置することにした。
この配置を決定するために実績を参考にしたのだが、この実績にはそれなりの理由や背景があるので、もう一度それらを復習してみたい。

まず、配置計画上、考慮すべき項目としては、

  1. プラント全体の加熱システム
  2. プロセス側および燃焼ガス側の温度条件
  3. スタートアップなどの運転モードと運転方法


例えば、”プラント全体の加熱システム”に関して言えば、MG Heater(原料天然ガスとスチームとの混合気の加熱器)ではガスを560℃まで加熱する必要があるために、配置可能な場所は温度ポテンシャルの高い”水蒸気改質炉プロセス系下流(温度875℃)”、もしくは”水蒸気改質炉燃焼系下流(950℃)”に限定される。
MG Heater以外のWHBやNG HeaterおよびCA Heaterの被加熱側の温度は共に400℃弱なので、MG Heaterが対流部の最上流側(高温側)に配置される。

残るWHBやNG HeaterおよびCA Heaterをどの順番で配置するかは、”プロセス側および燃焼ガス側の温度条件”を考えて決めればよい。しかし、加熱後の温度が350~370℃と有意差がないので、プロセス側および燃焼ガス側の温度条件”で決定することは出来ない。この場合は、むしろ”スタートアップなどの運転モードと運転方法”を考慮して決定することになる。

このスタートアップなどの運転モードと運転方法はプロセス設計上不可欠な知識であり、プロセス設計が起因するの多くのトラブルの原因は運転に関する情報不足である。


詳細は省くが、スタートアップ時に原料であるNGがNG Heaterを流れない状況があるので、対流部出口にあるIDF(Induce Draft Fan)の防護のために、”自己温度制御性”があるCA Heaterを最も出口に近い場所に配置し、以下の順番とした。

  • WHB→NG Heater→CA Heater


”自己温度制御性”とは、燃焼空気加熱器のように被加熱流体である空気と加熱流体である燃焼ガスの流量がほぼ一致すrために、万が一燃焼ガスの入口温度が上昇したとしてもそれが被加熱側の空気温度の上昇に繋がるために、燃焼ガスの出口(IDF入口)温度が大きく上昇しないような熱交換器の特性のことを言い、長年の経験から生み出した造語である。

宿題:なぜIDF入口温度が上昇すると困るのか?

そこで改めて水蒸気改質炉対流部のフローと熱交換器の温度条件を以下に示す。


表1 熱交換器の温度条件

機器名

プロセス流体温度範囲

燃焼ガス温度範囲

 

deg.C

deg.C

MG Heater
Mixed gas Heater

364~560

950~808

W.H.B
Waste Heat Boiler

252~350

808~471

NG Heater
Natural Gas Heater

25~370

471~400

CA Heater
Combustion Air Heater
25~350 400~164

2.7.2 水蒸気改質炉のスタートアップ

プロセス設計上重要な運転条件は定常時だけでなく、以下の運転モードがある。

  1. スタートアップ(起動)
  2. シャットダウン(停止)
  3. 緊急シャットダウン(緊急停止)
  4. 再スタートアップ(再起動)
  5. 原料種類変化による定常運転
  6. その他


スタートアップおよびシャットダウンは、予定されたスケジュールに基づきプラントを停止したり起動する際の運転である。また、緊急シャットダウンと再スタートアップは緊急にプラントを停止させ、その後の再起動に係わる運転である。最後の”原料種類変化による定常運転”とは、原料である天然ガスが例えば液体原料(ナフサ)に変わった場合の運転である。

水蒸気改質炉の燃焼系(輻射部+対流部)の設計で最も重要な運転モードは、スタートアップにおける運転条件である。詳細な説明は省くが、水素プラント、その中でもリフォーマーのスタートアップは以下の手順で行われる。

  1. N2による昇温
  2. STM(スチーム)による昇温
  3. NG(天然ガス)の供給開始と昇温


以上の運転手順における各熱交換器の運転状況を下表に説明する。詳細は省くがSTM昇温時においてはNG Heaterに何も流れない状態(no flow)が続くことがわかる。この条件(遷移条件:transient condition)下では、NG Heaterのコイルは過熱(overheating)されてクリープ破壊を起こす。

このような運転状態をどうプロセス設計に反映させるかについては、対流部の機械設計において次回説明したい。この議論を行うためには”クリープ破断応力”に対する理解が必要となる。「クリープ破断応力について勉強する」


表2 熱交換器の運転状況 (BW:boiler water)

流体の種類

N2 heating
窒素ガスによる昇温

Steam heating
スチームによる昇温

NG heating
天然ガスによる昇温

MG Heater
Mixed gas Heater

N2

Steam

 NG + Steam
W.H.B
Waste Heat Boiler

BW + Steam

BW + Steam

BW + Steam
NG Heater
Natural Gas Heater

N2

No flow

NG
CA Heater
Combustion Air Heater
Air Air Air

熱交換器のネットワーク構築

大型プラントでは熱回収量max.+冷却熱量min.にして原単位を改善するために、熱交換器に関するネットワークの構築を行いますが、その際に注意すべき点,、あるいは考慮すべき点をいくつか上げてみましょう。まず、

  1. 加熱器の熱媒としてスチームや熱媒の使用を考える前に、他の冷却器で冷やされている流体を熱媒として使用できないのか?
  2. もし、使用できるとした場合に、定常時のみならずスタートアップやシャットダウンなどの非定常時でも使用できるのか?
  3. 仮に熱交換器のチューブが破損した場合に、チューブ側流体とシェル側流体が混合するが、爆発などのリスクはないのか?