この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

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6. 熱交換器の設計

6.3 熱交換器の選定
6.3.2 熱交換器の用途とTEMA型式(No.40)NEW(2010.01.22)

熱交換器の用途と温度交差

用途別に熱交換器を分類すると、

  1. 熱交換器:液-液熱交換器やガス-ガス熱交換器などの熱交換を主とする用途に使用される。
  2. 加熱器(ヒーター):スチームやホットオイルなどの熱媒を使って流体を加熱する用途に使用される。被加熱流体が蒸発する場合には蒸発器とも呼ばれる。
  3. 冷却器(クーラー):冷却水やブラインなどにより流体を冷却することを目的とする。より低温まで冷却する場合にはチラーとも呼ばれる。
  4. ボイラー:蒸気発生器とも呼ばれるが、スチームを蒸発発生させる用途に使用される。加熱媒体がプロセスガスなどの場合には廃熱ボイラーと特称される。
  5. エコノマイザー:石炭ボイラー設備においては節炭器とも呼ばれていた。名前の通り、燃料を節約するためにボイラー給水を飽和温度付近まで加熱するために使用される。
  6. リボイラー:蒸留塔下部付近に設置される加熱器で、再熱器とも呼ばれる。
  7. コンデンサー:凝縮器とも呼ばれ、スチームだけではなく種々の蒸気を冷却し、凝縮させるために使用される。全縮器(total condenser)と分縮器(partial condenser)がある。

この中でボイラーやリボイラーでは加熱側流体の入口および出口温度共に被加熱側流体温度(ほぼ一定値)より常に高く設定されている。逆にコンデンサーでは冷却側流体の入口および出口温度共に被冷却側流体温度(ほぼ一定値)より常に低く設定されている。このような温度関係を持つ熱交換器を非温度交差熱交換器と言うことにする。つまり、

加熱側流体の入口温度&出口温度>被加熱側流体の入口温度&出口温度
冷却側流体の入口温度&出口温度<被冷却側流体の入口温度&出口温度

この非温度交差熱交換器とは異なり、以下のような温度関係を有する熱交換器を温度交差熱交換器と言うことにする。つまり、

加熱側流体の入口温度>被加熱側流体出口温度、加熱側流体の出口温度<被加熱側流体の出口温度
冷却側流体の入口温度<被冷却側流体出口温度、冷却側流体の出口温度>被冷却側流体の出口温度

温度交差とTEMA型式

温度交差がない熱交換器に対しては、最も簡単な構造で価格も安いBEM(AEM)の固定管板型式またはUチューブ型式のBEU(AEU)が採用される。
この型式においてはシェル側は1パスであり、ボイラーの場合にはシェル側下部ノズルから入った水が蒸発しながらシェル上部ノズルから水蒸気となって流出する。リボイラーの場合にはシェル側に加熱流体流れる場合とチューブ側に加熱流体が流れる場合があるので、それぞれに応じて流体の入口位置を決めることになる。
また、コンデンサーは横置きがほとんどで、シェル上部ノズルから入ってきた蒸気が冷却凝縮されてシェル下部ノズルから液が流出し、凝縮しない蒸気あるいはガスが上部ノズルから排出される。

一方、温度交差熱交換器に適用されるTEMA型式はBEMもしくはBFMあるいはBFUで、各型式の構造上、その選定手順は以下のようである。

  1. チューブ側が1パスの場合にはBEMを選定
  2. チューブ側が2パスの場合にはBFMあるいはBFUを選定

価格的にはどれが安いかはプロセス条件によって異なってくるが、ある例ではBEM<BFU<BFMの順番となった。

TEMA型式の選定には漏れの程度や設計圧力と汚れ係数が関与してくるが、余程の特殊条件がなければまずBEMを選定し、シェル側およびチューブ側の圧損や流速を考慮しながら他の型式の可能性を考えて最終決定する。特にBEMでシェル側圧損が厳しい場合にはBJMを考えると良い。

二重管式熱交換器

チューブ式熱交換器の一つに二重管式熱交換器があります。このタイプの熱交換器は構造が簡単で安価であるという特徴を有していますので、伝熱面積が1m2以下の熱交換器に適しています。
例えば、水と空気の熱交換器で伝熱量が4,000kcal/h、流量がそれぞれ2,000kg/hと300kg/h、温度条件が水側で100℃→98℃、ガス側で30℃→80℃の場合を想定しますと、シェル&チューブ式の仕様は、

BEMタイプ、シェル径200mm、チューブ24本、チューブ外径と長さ25.4mm×3,000mm、総括伝熱係数18kcal/m2hC、伝面5.6m2

これに対して二重管式であれば、

外径60.3mm内径52.5mm、チューブ1本、チューブ長さ3,000mm、総括伝熱係数190kcal/m2hC、伝面0.3m2

このように伝面が1/20となりコストも40%程度下がる。このような小型熱交換器の領域では二重管式やプレート式などの採用を考慮すべきである。