この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

3. プロセス設計と機器設計(容器の設計続き)

3.3 分離器

3.3.1 分離器の種類

化学プラントでは数多くの分離器が使用されています。分離器は流体から気体から液体や固体を分離することを目的に使用されており、分離方法により以下のように分類することが出来ます。

  1. 分離ドラム:セパレータとも呼ばれ、デミスタが設置されているドラムとそうでないドラムに分かれます。
  2. ベーンセパレータ
  3. サイクロンセパレータ

ベーンセパレータやサイクロンセパレータのサイジングは専門メーカーのノウハウに依ることが多く、プロセス設計においてサイジングすることは稀であります。例えばベーンセパレータの専門メーカーでは”バージェスミウラ(提携先Burgess-Manning)”などがあります。

3.3.2 分離ドラム型式の選定

分離ドラムにはその形状から縦型と横型に分類されます。一般的には、液量が多い場合には横型の分離ドラムが採用されるようで、その選定フローを数に示しました。実際には液滴の種類や大きさなどの要因もあるので、図に示すように単純ではありませんが、参考にして下さい。

3.3.3 分離ドラムサイジングの基本式

気液を分離するドラムでは、気体中に分離浮遊している液滴を重力場で沈降させて分離する方法を採用しています。流体中の液滴は重力を受けると同時に流体による浮力も受けますので、その差(重力-浮力)により液滴は次第に加速されながら降下します。しかし、液滴の抵抗力も増大しますので、重力=抵抗力において加速度がゼロになります。するとそのので、その際等速度運動が始まります。この時の液滴の降下速度を終末速度(Terminal Settling Velocity)と呼びUmで表します。すると抵抗係数Cは次式で計算できます。

ただし、gは重力加速度[m/sec2]、ρpは液滴密度[kg/m3]、ρはガス密度[kg/m3]、Dpは:液滴径[m]、そしてCは抵抗係数を意味しています。
この抵抗係数Cは液滴のレイノルズ数により異なる式が提案されており、その結果として終末速度Umもレイノルズ数により使用する式が変わってきます。
分離ドラム内での流れが上昇流とすれば、デミスタなどの分離促進機能を持たない分離ドラムの径は終末速度から求めることが出来ます。通常、ケミカルプラントにおける分離ドラムでのレイノルズ数は5~500程度であるので、抵抗係数Cの計算式を先ほどの終末速度Umの式に代入しますと以下のようになります。ただし、エンジニアリング会社によっては、実績に基づいて計算式が提案されているので、通常はそちらを使用するのが通例である。

これより分離ドラム径Dmを次式で計算します。

3.3.4 デミスタ付き分離ドラムのサイジング

ドラム径のサイジング

デミスタが付いた分離ドラムではデミスタにおける液滴の補集効率を考慮した計算式がメーカーから提案されている。一般的には、速度定数をK、設計効率をηDとすると、デミスタにおける設計流速Vdesignは次式で計算できる。

この速度定数Kはデミスタメーカーが独自に設定しており、標準としては0.11を採用しているようである。しかし、運転圧力が大気圧以下の真空状態や3MPa以上の高圧では速度定数Kは0.11以下になる。また分離ドラムの形状の影響も受けるので注意しなければならない。また、設計効率もエンジニアリング各社で異なっていようで、標準としては0.75~0.85が多いようである。
このVdesignを先ほどのUmに等しいとしてデミスタ内径Dmを求める。ただし、ドラム内径はデミスタ取付のために半径方向に若干の隙間を有するために、ドラム内径Di=Dm+100mm とする。

ドラム高さのサイジング

分離ドラムの高さhはh1からh5までの合計で求められる。それぞれの高さの定義と計算式を以下に示す。

  1. h1:分離ドラム入口ノズルセンターからデミスタ下部までの距離で、h1>=0.5Diとして計算する。この距離が短いとデミスタを通過するガス流れが偏流し、デミスタでの補集効率が落ちる可能性がある。
  2. h2:分離ドラム入口ノズルセンターからH.H.L.L(high high liquid level)までの距離で、h2>=0.3Diとして計算する。この距離が短いと流入したガスが溜まっている液を再度巻き込み、デミスタでの補集効率を落とす可能性がある。
  3. h3:分離された液の滞留時間(R.T:retension time)に相当した高さ。図に示すようにh3=a+b+cで計算する。この滞留時間は液流量Q(m3/min)をドラム断面積A(m2)で除した値で、流出する液がドラム内に滞留する時間である。
  4. h4:デミスタ厚さで100mmとする。
  5. h5:デミスタ上部から上部ヘッドT.L.(tangential line)までの距離で、これが短いとデミスタを通過するガス流れが偏流し、デミスタでの補集効率が落ちる可能性がある。

滞留時間と液面高さ

ドラム下部には液面計が設置されており、その液面高さに応じて名称がつけられている。また推奨する滞留時間(min)を図示しておきました。

  1. H.H.L.L(high high liquid level):液面の異常高。この高さに液面が到達した場合には下流の機器にダメージを与える恐れがある。下流の機器が遠心圧縮機の場合には、この液面警報で圧縮機を停止させる。
  2. H.L.L(high liquid level):液面の高。この高さに液面が到達した場合、運転者に注意を促す。
  3. N.L.L(normal liquid level):通常の液面高さ。運転中はこの高さに制御される。
  4. L.L.L(low liquid level):液面の低。この高さに液面が到達した場合、運転者に注意を促す。
  5. L.L.L.L(low low liquid level):液面の異常低。この高さに液面が到達した場合には下流の機器にダメージを与える恐れがある。下流の機器がポンプの場合には、この液面警報でポンプを停止させる。

また、若干の補足をしますと、

  1. 下部ヘッド容積は滞留時間の計算には含めず、余裕としてみなす。
  2. ドラム下流に遠心圧縮機など異常高でダメージを受ける機器が無い場合には、H.H.L.L~H.L.Lの滞留時間を0minとしても良い。
  3. 液量が極端に少なく滞留時間から計算した高さh3が500mm以下の場合には500mmを最小高さとする。
  4. それぞれの液面間距離が100mm以下の場合には、どちらかの警報を削除するか、100mmを最小間隔として液面高さを見直す。

上記のドラム内径およびドラム高さの計算式をExcelにまとめましたのでご利用下さい。その中で例題として今まで述べてきた水素製造装置PSA設備上流に設置されている"Separator"を例題として取り上げており、Separator内径は1700mm、ドラム高さは3400mmと計算されました。

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横型分離ドラムの大きさ

横型の分離ドラムの大きさは滞留時間(液量)と液滴の終末速度を考慮して決定する。しかしながら、それだけでは不十分な場合がある。

横型分離ドラムの滞留時間

滞留液量からドラムサイズを計算する場合には、ドラム中央部に定常液面を設定する。一般には滞留時間を3~5分程度に設定する場合が多いので、ドラム全体の体積は2倍の6~10分程度になる。

ドラム上流機器の影響

蒸留塔循環ドラムには凝縮器からの気液二相流が流入し、ドラム内で液滴を分離して非凝縮ガスをドラム上部ノズルから排出する。何らかの原因で蒸留システムが停止した場合、上流機器(凝縮器)内部に滞留していた凝縮液がドラムに流下し、しだいに液面が上昇して上部ノズルから液が溢れる可能性がある。

空冷式熱交換器の場合

凝縮器がシェル&チューブであればそれほどの滞留液量はないが、空冷式熱交換器のヘッダーやチューブ内滞留液量が多いので、容量決定には注意されたい。