第7章 計装制御
7.2.5 Closed outlet
このclosed outletは出口が閉鎖されるという意味で、連続的に流出する流体が何らかの理由で空間内に閉じ込められ、その空間の圧力が上昇する現象を言う。
例えば風船に息を吹き込んでいくと、次第に風船内部の圧力が上昇して風船は徐々に膨らんでいく。さらに吹き込んでいくと急激に膨らみ、風船が伸びることで膜の厚みが薄くなって最後には破裂する。もし、破裂前に吹き込みを止めて吹き込み口を開放すると、中の空気が抜けていき風船は萎んでいく。しかし、萎んだ後の風船の大きさはもとの大きさには戻らず、膜の厚みも薄くなったままになる。
以後、機器や配管などから構成される限定された空間をバウンダリー(boundary)と呼ぶことにする。このバウンダリーは化学工学の基本である物質熱収支を考える上での限定された範囲を意味する。
例えば下図のバウンダリーには、左側から流量調節弁(FV)を通して常に流体が流入している。このバウンダリーから圧力調節弁(PV)B弁を通して流体が流出するケース①と、手動制御弁(HV)C弁を通して流体が流出するケース②、それと圧縮機Dを介して流体が流出するケース3の3通りを想定する。そうすると、それぞれのclosed outletの原因は、
- ケース①:closed outletの直接原因は圧力調節弁B弁の誤動作による閉(close)である。
- ケース②:closed outletの直接原因は手動制御弁C弁の誤動作による閉(close)である。
- ケース③:closed outletの直接原因は圧縮機Dの停止である。
いずれもバウンダリーの圧力は上昇していく。このようにclosed outletの原因は制御弁や調節弁の閉(close)だけではなく、流体を輸送する圧縮機やポンプなどの流体機械の停止も含まれる。勿論、制御弁や調節弁などの自動弁だけでなく、オペレーターが間違って手動で弁を閉鎖してもclosed outletは起こりえる。
Closed outletでの圧力上昇がバウンダリー出口を起因とすれば、”inadvertment valve opening” ではバウンダリー入口を起因とする圧力上昇となる。
- 第1章 物質収支の計算
- 1.1 設計基本
- 1.2 物質収支計算ツールの準備
- 1.3 原子バランスの組み込み
- 1.4 気液分離
- 1.5 ストリームの合流(Addstream)
- 1.6 平衡定数の計算
- 1.7 平衡定数近似式の確定
- 1.8 平衡定数Kと圧平衡定数Kp
- 1.9 水蒸気改質炉出口組成計算
- 1.10 凝縮水分離とPSA水素精製
- 1.11 改質条件とCO転化条件と水素回収率への影響
- 第2章 熱収支の計算
- 2.1 熱収支計算の基礎
- 2.2 熱収支計算表の作成
- 2.3 ガス系の加熱と冷却
- 2.4 水蒸気改質炉の物質熱収支
- 2.5 予熱空気と水蒸気改質炉
- 2.6 燃焼系熱回収とスチーム発生
- 2.7 改質炉対流部プロセス設計
- 第3章 容器の設計
- 3.1 容器の種類
- 3.2 貯蔵タンク
- 3.3 分離器
- 第4章 回転機の設計
- 4.1 回転機の基礎
- 4.2 ポンプの設計
- 4.2.1 ポンプの種類と選定
- 4.2.2 ポンプのデータシート
- 4.2.2 ポンプのデータシート(流量について)
- 4.2.2 ポンプのデータシート(揚程について)
- 4.3 遠心ポンプの設計
- 4.3.1 遠心ポンプ効率の推定
- 4.3.2 遠心ポンプのNPSH
- 4.3.3 遠心ポンプのプロセス計算
- 第5章 水蒸気改質炉設計
- 5.1 改質管の設計
- 5.1.1 改質管とは
- 5.1.2 改質管の材料
- 5.1.3 Larson-Miller Parameter(LMP)
- 5.1.4 改質管の肉厚計算
- 5.2 水蒸気改質炉対流部の設計
- 5.2.1 伝熱計算
- 5.2.2 スタートアップ時の挙動
- 5.3 運転停止と水蒸気改質炉の設計
- 5.3.1 運転停止の種類
- 5.3.2 緊急停止における水蒸気改質炉
- 5.3.3 対流部熱交換器のクリープ破断
- 5.4 安全停止と改質炉設計
- 第6章 熱交換器の設計
- 6.1 熱交換器とプロセス設計
- 6.1.1 熱交換器性能とその影響
- 6.1.2 熱交換器のプロセスデータ
- 6.2 熱交換器と物性
- 6.2.1 凝縮と物性
- 6.2.2 凝縮曲線の作り方
- 6.2.3 凝縮曲線と熱交換器設計
- 6.2.4 エンタルピーの計算
- 6.2.5 凝縮熱伝達と有機溶剤
- 6.2.6 凝縮熱伝達と不凝縮ガスの影響
- 6.2.7 熱伝達と粘度の影響
- 6.2.8 熱伝達と材料の影響
- 6.3 熱交換器の選定
- 6.3.1 熱交換器の分類と種類
- 6.3.2 シェルとチューブ
- 6.3.3 熱交換器の用途とTEMA型式
- 第7章 計装制御
- 4.1 FLPT
- 4.2 圧力制御
- 4.2.1 化学プラントにおける圧力制御
- 4.2.2 圧縮機吸込側の圧力制御システム
- 4.2.3 圧縮機吸込側の圧力調節弁の容量
- 4.2.4 圧力上昇の要因
- 4.2.5 Closed outlet