この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

4.2 ポンプの設計
4.2.4 遠心ポンプのNPSH

NPSHR(NPSH Required)は必要有効吸込ヘッドと訳され、キャビテーションによるポンプ効率の低下を避けるために必要な吸込圧力である。この効率の低下の度合いは比速度(ns)が小さいほどその傾向が強い。
このNPSHR(NPSH Required)に対して実際に有効なNPSHをNPSHA(NPSH Available)といい、次式の関係がある。

NPSHA > NPSHR
NPSHA = Ha-Hv-Hs-hws

ここで、Haは運転圧力(大気圧の場合には10.33m)、Hvは液体の飽和蒸気圧、Hsは吸込高さ(ポンプより吸込容器が上に位置する場合は正、逆の場合には負となる)、hwsは吸込側の損失ヘッドを示している。
一方、NPSHRは次式で定義されており、C1はポンプ吸込での流速(m/s)、W1は羽根入口での局部的流速(m/s)、A1、A2はそれぞれの圧力係数である。

NPSHR = A1*(C1^2)/2g + A2*(W1^2)/2g

ここで、C1やW1を得るのは困難なので、NPSHRをある係数(トーマのキャビテーション係数:sigma)を使って次式で再定義する。ただし、Hはポンプの揚程。

NPSHR = sigma*H

このsigmaに関してはnsの値に対する実験式が求められている。

sigma = 7.88E-5*ns^1.33                            片吸込
sigma = 5.00E-5*ns^1.33                            両吸込

また、吸込比速度Sを定義し、これよりNPSHRを求めることが出来る。

S = n*Q^0.5/NPSHR^0.75

このSと先ほどのsigmaには次式の関係がある。

ns = S*sigma^0.75

比速度Sは経験上、ポンプの用途などにより定められており、一般のポンプでは1300~2000(標準1400)、冷却水ポンプで2200と言われている。以上のトーマのキャビテーション係数と吸込比速度を使ってポンプに必要な有効吸込揚程を計算してみよう。
この結果、下記に示したポンプ仕様(片吸込+一般ポンプ)におけるNPSHは約3mであることがわかる。ポンプメーカーからの要求でもおよそ2mがNPSHのminimumと考えて良い。
なお、NPSHAとNPSHRとの余裕は10%もしくは0.6mのどちらか大きい方とする。

ポンプの基本仕様
項目 単位 数値
回転数 (n) rpm 3,000
流量(Q) m3/min 1.0
揚程(H) m 20

比速度とトーマのキャビテーション係数(sigma)および吸込比速度の計算
吸込形式 比速度(ns) sigma 吸込比速度(S)
片吸込 317 0.0170 1197
両吸込 224 0.068 1684

吸込形式とNPSH
吸込形式 sigma NPSH
片吸込 0.170 3.40m
片吸込 0.068 1.36m

ポンプ用途とNPSH
用途 S NPSH
一般ポンプ 1400 2.76m
冷却水ポンプ 2200 1.51m

0.008 0.015 0.03 0.045 0.06
0.09 0.18 0.37 0.75 1.5
2.2 3.7 5.5 7.5 11
15 22 30 37 55
75 90 110 132 160
200 250 280 315 355
400 450 500 560 710
800 900 1000 --- ---

ポンプとモーター

ポンプの駆動機としては電動機(モーター)やスチームタービンなどが使用されますが、ここでは最も多く利用されている電動機についてお話しします。
電動機には大きく分けて交流電動機と直流電動機があり、交流電動機には誘導電動機、同期電動機、整流子電動機およびサイリスタモーターがあります。その中でも誘導電動機が最も多く使用されております。
ポンプの回転数が早ければ早いほどコンパクトになり、その回転数は周波数と電動機の極数から求めることが出来ます。

N(回転数 rpm)= 120*周波数/極数

ご存じのように関東以北の周波数は50Hz、関西以南の周波数は60Hzで、極数は2、4、6、8と定められており、ポンプ側の要求もありますが、一般には2もしくは4が多く採用されているようです。そのため、関東以北では電動機の回転数は3000rpmもしくは1500rpmとなっています。また、電動機の電圧は低負荷では三相200V、高負荷では三相3000Vが多いようです。参考に電動機の定格出力の標準値(kW)を示しておきます。