この”プロセス設計の実務”では、プラントエンジニアリングの基幹となるプロセス設計の”イロハ”について説明しており、プラントエンジニアリングやプロセスエンジニアリングに興味がある社会人や学生を対象にしています。

この”プロセス設計の実務”では、基本に帰って「プロセス設計とは?」をもう少し掘り下げていきたいと考えています。その進め方については以下のように考えています。

  1. 「天然ガスを原料とする水素製造プラントのプロセス設計」を例題として設定いたします。
  2. プロセス設計というよりは基本設計+詳細設計の一部を含めた範囲としますので、機器設計や配管設計などに言及することが多くなります。
  3. 実際の設計に使用するエンジニアリング・ツールなどを使用しながら説明いたします。
  4. 更新のインターバルは原則として週1回(月曜日)と考えていますが、他のテーマを優先することもあります。

2. 熱収支の計算(続き)

2.4 水蒸気改質炉の物質熱収支

2.4.1 水蒸気改質炉の構造

水蒸気改質炉では水蒸気改質反応(吸熱反応)とCO転化反応が同時並行して行われます。総合的には吸熱反応となるので、外部から加熱する必要があります。ただし、温度条件が500~900℃と高温なのでそれに対応できる加熱媒体を使わざるを得ません。
そこで一般的には燃焼加熱炉が使用されます。この水蒸気改質炉も名前のように炉、すなわち燃焼加熱炉であり、改質触媒充填する改質管(reformer tubes)、燃料を燃やすバーナ(burners)などから構成されています。その構造を下図に示します。(図をクリックすると拡大します)

  1. 天井(ceiling):水蒸気改質炉の輻射部を囲む天井部分で、高温の燃焼排ガスを遮断しています。天井にはバーナや燃焼空気ダクトが設置されており、改質管の上部も天井から上部へ突き出ています。
  2. 床(floor):水蒸気改質炉の輻射部を囲む床の部分で、高温の燃焼排ガスを遮断しています。そこから改質管が下部に突き出ています。
  3. バーナ(burners):燃料を燃やす機器で、バーナチップ(先端部)、バーナ本体、燃料接続管、燃焼空気ダクトなどから構成されている。
  4. 改質管(reformer tubes):改質触媒を充填した耐熱合金製の遠心鋳造管。
  5. 出口マニホールド(outlet manifold):改質管を出た改質ガスが集まる集合ヘッダー。
  6. トランスファーライン:出口マニホールドからの改質ガスを下流の機器(主に廃熱ボイラ)と繋ぐ機器。
  7. トンネル(tunnnel):燃焼排ガスを下流の対流部に送るための整流設備。

この水蒸気改質炉に必要な燃料は、PSA方式の水素製造設備ではPSA off gas を使用し、不足する場合には原料であるNGを補助燃料として使用します。

2.4.2 燃焼排ガスの物質熱収支

水蒸気改質炉に必要な熱量はすでに計算されています。その熱量や温度条件を以下に示します。

  1. 必要熱量(heat duty):231,348*10^3kJ/h=231.348GJ/h
  2. 入口温度:560℃
  3. 出口温度:875℃

この温度条件から水蒸気改質炉出口の燃焼排ガス温度はおよそ900℃以上の高温となります。この燃焼排ガス温度が高ければ高いほど燃料の量は増加しますので、良好な原単位を保つためには低い温度が望ましいことになります。しかし、熱交換器の原理と同様に低い燃焼排ガス温度に設定しますと、プロセスガスとの温度差が小さくなり大きな伝熱面積を必要としますので、勝手に決めるわけにはいきません。また改質触媒の活性や改質管の強度も影響してきます。

ここでは一応出口排ガス温度を950℃に設定して、水蒸気改質炉の物質熱収支を計算しました。詳細については今までと同じくExcelファイル(version0.8)を用意しましたのでダウンロードしてご覧下さい。このversion0.8の主な内容を説明します。

version0.8をダウンロードするLinkIcon

  1. 燃焼排ガス系の物質熱収支の計算は、”hydrogenPlant&Version0.8.xls”のシート”FlueGasBal”に示しています。
  2. 水蒸気改質炉のプロセス側の物質熱収支の計算シート”GasBal&0.8”を新たに追加しました。内容は”GasBal&0.7”と同じですが、reformer duty と PSA off gas の組成をシート”FlueGasBal”にリンクするようにしています。
  3. 水蒸気改質炉は水素設備で最も大きい機器ですので、表面からの熱損失を無視することが出来ません。そこで、熱損失を3%程度考慮して熱収支を計算しています。
  4. 必要なNG燃料を計算し、燃焼排ガスからの廃熱回収量を計算しています。

追補:必要なNG燃料の計算は、ReformerFurnaceでの燃焼排ガス温度も含め繰り返し計算になりますので注意して下さい。(下図参照)

2.4.3 燃焼排ガス系の熱収支計算結果

燃焼排ガス系の物質熱収支計算表にて計算した結果の概略を説明します。

Reformerと廃熱回収熱交換器の温度と熱負荷(heat duty)を下表にまとめました。ただし、熱負荷の+は加熱、-は冷却を意味しています。

Reformer/Cooler 入口温度℃ 出口温度℃ 熱負荷 GJ/hr
Reformer 1667 950 -231.350
Cooler1 950 900 -14.642
Cooler2 900 800 -28.919
Cooler3 800 700 -28.402
Cooler4 700 600 -27.846
Cooler5 600 500 -27.248
Cooler6 500 400 -26.603
Cooler7 400 300 -25.912
Cooler8 300 200 -25.170
Cooler9 200 150 -12.291
Cooler10 150 100 -12.088

熱量の単位換算

SI単位系に移行してから熱量の単位としては、”Joule/time” と”W”が使用されている。慣習的に熱収支では ”kJ/hr” や ”GJ/h” が使用され、熱交換器では何故か”kW”が使われることが多い。
SI単位系導入以前は”kcal”や”Btu”が使用されていたので、旧い設計図書にはしばしば見られる。そこで単位換算係数を参考に示しておきます。ただし、a = 1000

kJ kWh kcal Btu
1 1/3600 0.23885 0.94782
3600 1 859.85 3412.1
4.1868 1.1630/a 1 3.9683
1.0551 0.29307/a 0.25200 1