ここではガス化とガス化に隣接して設置されるガス精製について説明していきます。
ガス精製は多くの化学プロセスで採用されている重要な技術ですが、ガスの流量や組成、あるいは不純物の種類や濃度により多くのガス精製技術が開発されています。そのため内容が多岐にわたっていますので、どこまで説明できるか分かりませんが、まずスタートしてみます。
参考書として「GAS PURIFICATION fifth edition written by Arthur Kohl & Richard Nielsen」を使用しています。

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1. ガス化技術

1.1 ガス化と改質

GTL(Gas To Liquid)やアンモニア/メタノールは水素とCOを主成分とする混合ガス(合成ガス)を原料とします。この合成ガスを作るのが“ガス化”と“改質”という二つの技術です。

ガス化は“石炭のガス化”や“重質油のガス化”などのように、固体原料や液体原料から合成ガスを製造します。一方、改質では“水蒸気改質あるいは燃料改質”、“接触改質あるいはガソリン改質”などがあり、前者は水蒸気により水素とCOを主成分とした合成ガスを製造しますが、後者ではガソリンのオクタン価を改善する操作を意味しています。

しかし、外国のエンジニアリング会社の例では、天然ガスを原料として合成ガスを製造する改質もガス化(Gasification)の範疇に含めているようです。また、国内では実際にはガス化(Gasification)に分類されるのですが、ガス化と改質を組み合わせた“ガス化改質”という言葉が使われています。この例では、原料から新しい別の物質を製造するという意味合いを深めるために、“改質”という言葉が使用されているようです。

そこでもう一度“ガス化”と“改質”の定義をお復習いしますが、この連載では便宜上、ガス化と改質を一括りにして”ガス化技術”とします。

ガス化(Gasification)では原料である石炭や木材などの固体原料、あるいは石炭乾留で出来たタールや石油製品などの液体原料に空気や酸素を加え、一部の原料を燃焼させることで高温の還元雰囲気(1300~1500℃)を作ります。そこで生成した水蒸気や二酸化炭素により原料の炭化水素から合成ガスやオキソガス*1、あるいは水素や都市ガスなどを製造する反応操作です。これを部分酸化法(Partial Oxidation or POX)とも言っています。

改質(Reforming)では原料である天然ガスやLPG、またナフサに水蒸気または二酸化炭素を加え、改質触媒を充填した反応器に通すことで合成ガスやオキソガス、あるいは水素や都市ガスなどを製造する反応操作を言います。原料に水蒸気を加えて水素リッチガス*2に改質する操作を水蒸気改質反応(Steam reforming)と言い、水蒸気の代わりに二酸化炭素を加えてCOを多く含むオキソガスに改質する操作を二酸化炭素改質(CO2 Reforming)と言っています。

ただし、石油精製や石油化学で使用されている“接触改質あるいはガソリン改質”は、原油から直接分留された直留ナフサのオクタン価を改善するために、圧力1~6MPa温度430~520℃の条件下で貴金属触媒を使用して改質ガソリンを製造する反応です。(カーク・オスマー化学大事典から抜粋)

*1 オキソガスとは水素とCOが主成分である混合ガスのことで、原料の組成(C/H)や運転条件にも依りますが、ガス化あるいは改質直後ではこのモル比の多くは1~3。
*2 水素リッチガスとは水素濃度が例えば60~70%以上の混合ガスのこと。

1.2 ガス化技術の選定

「原料とガス化技術の選定」では、原料の沸点に応じて選定できるガス化技術(メタン水蒸気改質、ナフサ水蒸気改質、低温水蒸気改質、併用改質および部分酸化)を示しました。各技術の概要を以下に説明します。

  1. 部分酸化は沸点の高低に関係なく、天然ガスから重質油や残渣油までの原料のガス化に適用できます。酸化剤として空気や酸素を使用します。
  2. メタン水蒸気改質は天然ガスや随伴ガスを対象としたガス化技術で、いずれもメタンを主成分とした原料に水蒸気を加えて水蒸気改質触媒上で水素+COを主成分とした混合ガスを製造します。少量であればC2以上の炭化水素の改質も可能です。また、C3 & C4を含む炭化水素(例えばLPG)についても種々の水蒸気改質触媒の組み合わせで可能となります。
  3. ナフサ水蒸気改質はメタンなどのアルカン類炭化水素のみならず、芳香族炭化水素(aromatic hydrocarbon)、アルケン類炭化水素(オレフィン系、エチレンなど)や脂環式炭化水素を対象とした水蒸気改質で、原料の組成により種々の水蒸気改質触媒との組み合わせで使用します。
  4. 低温水蒸気改質は天然ガスやナフサを約500℃で改質して、メタンリッチ(CH4 30-50%)なガスを製造する技術です。かってはナフサを原料に都市ガスを製造する設備に採用されていました。現在では水蒸気改質炉の上流側にプレリフォーマー(pre-reformer)として設置する例が増えています。
  5. 併用改質はアンモニアプラントの二次改質炉にも採用されている技術で、最近では燃料電池用水素製造装置の水蒸気改質炉の代わりに採用されています。ここでは水蒸気改質触媒とともに空気または酸素を酸化剤として使用しますので、水蒸気改質+部分酸化という意味で併用改質と言われています。

この「原料とガス化技術の選定」に従えば、沸点が150℃のナフサをガス化する場合には、ナフサ水蒸気改質低温水蒸気改質、あるいは部分酸化の適用が可能です。ただし、ナフサ水蒸気改質を使用する場合には注意が必要で、原料中に占めるアルカン類、アルケン類、脂環式炭化水素の比率には制限がないようですが、芳香族炭化水素の占める比率に制限があります。
また、低温水蒸気改質では改質温度が低いので生成ガス中のメタン濃度が高く、水素濃度が低くなります。そのために製品中の水素濃度を考慮して、低温水蒸気改質と水蒸気改質(高温水蒸気改質)の組み合わせか、ナフサ水蒸気改質か、または部分酸化を選定することになります。

次回以降に続く・・・。

標準発熱量

石炭や原油あるいは天然ガスから再生可能エネルギーまでの発熱量について、経済産業省が2005年に標準値を設定しています。主な可燃性物質の標準発熱量を示しますと、

  1. 石炭:輸入原料炭 29.0MJ/kg
  2. 石炭製品:コークス 29.4MJ/kg, コークス炉ガス 21.1MJ/Nm3
  3. 石油:原油 38.2MJ/lit
  4. 石油製品:LPG 50.8MJ/kg, ナフサ 33.6MJ/lit, 灯油 36.7MJ/lit, 軽油 37.7MJ/lit, A重油 39.1MJ/lit, C重油 41.9MJ/lit
  5. 天然ガス:輸入天然ガス(LNG) 54.6MJ/kg, 国産天然ガス 43.5MJ/Nm3, 都市ガス 44.8MJ/Nm3


詳細は”2005年度以降適用する標準発熱量の検討結果と改訂値について”を参照下さい。