2. ユーティリティー停止と安全設計
2.3 スチームソースと加熱源
2.3.1 スチームドラム
プロセススチームをスチームとして蓄える方法は、大容量のドラムなどを必要とするためにプロットの問題や経済的にも引き合わないことがわかりました。それではどうすれば良いのでしょうか。
考えられる方法は、スチームを水として貯え、その水を蒸発させるために必要な加熱源を何らかの方法で確保しし、スチームを供給することです。
その場合、スチームシステムにおいて比較的多くの水を蓄えている容器としては脱気器とスチームドラムの二つがあります。そこで、それらの特徴とスチームソースとしての是非を考えてみましょう。
(1) 脱気器
脱気器は水処理設備から供給される純水を処理してボイラ給水にする装置で、運転温度は100℃~150℃、運転圧力はその温度の飽和圧力のために比較的低圧です。
この脱気器にはボイラ給水流量の10分程度の貯槽能力(脱気器貯槽部液面レベル50%)がありますので、ボイラ給水流量=発生スチーム流量の関係からプロセススチームのソースとしては十分な量の水を蓄えていることになります。
ただし、運転温度および運転圧力が低いので、緊急時のスチームソースとして採用するためには加熱源と昇圧装置が必要となります。もともと運転温度が100℃~150℃と低いので、スチーム発生のために中温程度(240℃~270℃)の加熱源を必要とします。また、昇圧に使用されているボイラ給水ポンプも停止するので、脱気器をスチームソースとして利用する案は現実的でなく、採用することはまず出来ないでしょう。
ボイラ給水ポンプの駆動源にはモータとスチームタービンの二通りがあります。停電の場合にはモータが停止するのでポンプを運転することは難しく、また、同時にスチームシステムも不安定になるのでスチームタービン駆動の場合でもポンプを運転することは困難です。
(2) スチームドラム
スチームドラムは廃熱ボイラなどで加熱蒸発したボイラ水やスチームを一時的に貯えるだけではなく、スチーム中に同伴される水滴やミストを除去し、下流機器を保護する機能を有しています。
このスチームドラムの運転条件は、スチームバランスでわかるように運転温度314℃、運転圧力10.4MPaとなっており、そこでのボイラ水の貯槽能力(スチームドラム液面レベル50%)はおおよそスチーム発生量の3~5分程度です。この量はスチーム停止時に必要なプロセススチーム量(38,000kg/h÷77,060kg/h=49.3%)から考えると、約2倍の6~10分となり、プロセススチームのソースとしては十分な量の水を蓄えていることになります。
また、運転圧力が高いので緊急時のスチームソースとして採用するための昇圧装置は不要となります。ただし、ボイラ水をスチームにするための加熱源は必要となりますので、何らかの形で用意しなければなりません。
スチームドラムと廃熱ボイラ
2.3.2 スチームドラムの保有熱量
加熱源の一つとしてスチームドラム内部のボイラ水があります。
つまり、ボイラ水はその温度(ここでは314℃)の飽和水ですから、その保有している熱量(エンタルピー)は比較的多いと考えられます。そこでそのエンタルピーを求め、そこから得られるプロセススチーム量を計算してみましょう。
(1) エンタルピー計算
スチームドラムに貯槽されている量をスチーム発生量(77,060kg/h)の5分間分とします。つまり、滞留時間が5分と言うことになります。
貯槽水量 = 77,060kg/h*5min/60min = 6,422kg
このスチームの温度圧力は314℃、10.4MPaですから、保有するエンタルピーは、
保有熱量 = 6,422kg*1426.1kJ/kg = 9,158,400kJ = 9.1584GJ
(2) フラッシュ計算
もし、外部からの加熱源が無く、あるのはスチームドラムの保有熱量だけとすれば、プロセススチームとしてどの程度の量が期待できるのか、計算してみましょう。つまり、スチームドラム内のボイラ給水をフラッシュさせて先ほど求めた体積をアキュムレータや配管(ヘッダー)の容積とします。ただし、プロセススチームとしての必要圧力を1MPaとします。すると、
フラッシュスチーム = 2,116kg
コンデンセイト = 4,306kg
合計 = 6,422kg
つまり、スチームドラム中に貯槽されているボイラ水の約1/3を、スチームとして回収することが出来ることがわかりました。
しかし、それでも約4tonのスチームが不足するので、この分の熱量(約9GJ)を外部から補う必要があります。
次回は、この不足分の熱量をどう確保するかについてお話ししましょう。



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