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安全設計とリスク解析

この”安全設計とリスク解析”では、プラントの安全設計を行う上で注意すべき事柄やリスクをどのようにして見つけ出して対応するかについて述べていきたいと思っております。

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「安全設計」の進め方

安全設計とプロセス設計は非常に密な関係にあります。

プロセス設計品質が悪ければ、スタートアップやシャットダウンはおろか、定常時においても安全な運転を継続することが出来ません。

トラブル続きでおちおち製品の品質確保も疎かになり、稼働率も下がり利益も半減(?)あるいは無くなってしまうかもしれません。また、設計条件を決める際に抜けがあれば、運転条件が設計条件を超えてしまい、これも運転の継続が不可能となってしまいます。

2.1.2 スチーム停止による影響

前回お約束しましたように、今後の議論を深めるためにスチームバランスを計算します。

(1) スチーム条件の決定

スチームバランスを計算するためには前回説明いたしました”スチームシステムの三条件”を決める必要があります。おおよそのスチーム条件については前回お見せしましたスチームシステムに記載しておきましたので、それを見ながら説明します。

このスチームシステムにはスチーム条件を同じにするユーザーが三種類あります。

  1. 一つ目は廃熱ボイラからスチーム過熱器を通って大型スチームタービンに至るラインで、高圧スチームヘッダー(HP steam header/high pressure steam header)と呼ばれる部分です。
  2. 二つ目は大型スチームタービンの抽気段(Extraction stage)を出たスチームラインで、プロセススチームや小型スチームタービンなどのユーザーにスチームを供給しています。これを中圧スチームヘッダー(MP steam header/middle pressure steam header)と呼んでいます。
  3. 三つ目は小型スチームタービンの背気スチームや、中圧ヘッダーからのレットダウン(letdown)*1スチームやフラッシュドラムからの回収スチームが集まるラインで、低圧スチームヘッダー(LP steam header/low pressure steam header )と呼んでいます。

*1レットダウンとは高圧から低圧へ弁を介してスチームを供給するシステムで、その状態変化は断熱変化に等しい。

これらのスチームヘッダー条件の決め方にはルールがあり、それにそってスチームシステムに記載した温度圧力を決定しました。その一部を下表に紹介します。

表2.1-1 スチームヘッダー温度圧力決定のルール(制約条件)

スチームヘッダー 温度 圧力 備考
高圧スチーム スチームタービン材料
(耐熱強度)
スチームタービン材料
(耐熱強度)
加熱器下流配管の設計およびタービン効率にも注意
中圧スチーム 抽気段断熱効率 プロセススチーム
ユーザー圧力
抽気段ノズル位置にからの制限もある
低圧スチーム 飽和温度以上であれば可 加熱器の被加熱温度と
脱気器圧力
脱気器圧力以上 


次に重要なスチーム条件は大型スチームタービンの復水段の温度条件です。この温度条件はすでに説明しているように(下記参照)、

タービン出口条件:復水器の運転条件(温度)のことで、この温度がより低ければ低いほどスチームタービンの熱効率が上昇します。ただし、この温度は冷媒温度に支配されており、水や海水を使用する冷却器(復水器)では45~50℃、空気冷却器では60~70℃が一般的です。

復水段出口(復水器)温度は冷媒温度条件より高く、冷媒温度+20~30℃ですから、50℃を選定いたしました。

(2)スチームバランスの計算方法

スチームバランスを計算するためには計算手順を間違えてはいけません。スチームの流れに沿って、いきなり高圧スチームヘッダーから計算をするのではなく、低圧スチームヘッダーから計算します。まず、

  1. 低圧スチームヘッダーでのスチーム必要量を計算します。そのためには加熱器熱負荷(既知)からスチームの必要量を計算します。その際には低圧スチームの温度は飽和温度に仮定し、その潜熱を用いて計算します。次に脱気器で使用するスチーム量を仮定します。両者を合計すれば低圧スチームの必要量G-LP(out)になります。
  2. 次に低圧スチームヘッダーに入るスチーム量G-LP(in)を計算します。まず、小型タービンの動力から必要スチーム量を計算します。次にフラッシュドラムの計算を行い、回収できるフラッシュスチーム量G-FlashSを求めておきます。このフラッシュドラムの計算は高圧スチームヘッダーの計算後に再計算する必要があります。これらの合計がG-LP(out)以上であれば問題ありませんが、少ない場合には中圧から低圧へのレットダウンを使用して必要量をカバーします。多い場合には小型タービンの動力を変更してスチーム量を少なくするか、加熱器の熱負荷を変更します。
  3. 脱気器周辺のバランスを計算します。脱気器に入る補給水量(G-MU)と温度を仮定します。また加熱器出口条件を低圧スチームの飽和水としエンタルピを決定します。次に熱収支の計算を行い、脱気器の温度(エンタルピ)が所定の数値になるように補給水温度、あるいは脱気器温度を変更します。
  4. 脱気器から廃熱ボイラ(スチームドラム)へ送られるボイラ給水量を計算します。この量はG-LP(out)と補給水量(G-MU)の合計で、この量をG-BFWとします。このG-BFWをスチームにするために必要な熱量を計算します。この熱量は廃熱ボイラ(スチームドラム)の飽和水まで加熱するための熱量と飽和スチームにするために必要な熱量に分かれ、前者を高圧エコノマイザの熱負荷、後者を廃熱ボイラの熱負荷に相当します。ただし、G-BFWの1~2%はドレンとして飽和水の条件でフラッシュドラムに送られますので、発生できるスチーム量(G-HP)はG-BFWの98~99%に減少しますので、その分、廃熱ボイラの熱負荷も小さくなります。
  5. 廃熱ボイラ(スチームドラム)を出た飽和スチームを過熱するために必要な熱量(スチーム過熱器熱負荷)を計算します。
  6. 次に中圧スチームヘッダーのバランス計算を行います。まず、低圧スチーム量G-LP(in)からフラッシュスチーム量G-FlashSを差し引いたスチーム量とプロセススチームとして外部に送出する量G-Proを加算します。これが中圧スチームヘッダーの必要量GP-MPになります。
  7. 最後に大型スチームタービンの計算を行います。抽気量G-ExはGP-MPと同じ量ですから、大型スチームタービンの動力をもとに復水段のスチーム量を計算します。この計算はスチームタービンのメーカー情報(断熱落差や熱効率)をもとに行います。ここでは以前紹介した”Dresser-Rand”のスチームタービン性能推定ツールを使用して決めています。ただし、動力は10,000kWにしております。
  8. この復水量G-Conと抽気量G-Exの合計が高圧スチーム量G-HPになりますので、最初に仮定したG-HPとの差を調整する必要があります。その調整は補給水量で行います。つまり、

補給水量G-MU=復水量G-Con +プロセススチーム量G-Pro+フラッシュドラムドレンG-FlashD


この計算は繰り返し計算になり、その場合には (iii) からスタートします。以上の手順による計算結果をスチームバランスと表2.1-2に掲載しましたのでご覧下さい。

表2.1-2 スチームバランス

項目 温度 圧力 流量
単位 deg.C MPa kg/hr
ボイラ給水 130 13.0 77,830
ドレン 314 10.4 770
高圧スチーム 314 10.4 77,060
過熱スチーム 520 10.0 77,060
抽気スチーム 330 3.0 58,000
排気スチーム(復水) 50 0.012 19,060
プロセススチーム 330 3.0 38,000
小型スチームタービン 330 3.0 18,260
中圧~低圧レットダウン 330 3.0 1,740
フラッシュスチーム 147 0.45 290
フラッシュドレン 147 0.45 480
加熱器スチーム 148 0.45 19,150
脱気器スチーム 147 0.45 1,140
補給水 115 0.51 57,540

スチームバランス

(3)スチーム停止の影響

ここで説明しますスチーム停止とは、廃熱ボイラやエコノマイザの加熱源が何らかの原因により絶たれるか、あるいは急激に落ち込んだために、スチーム発生がゼロになるか定常時に比べ極端に少なくなる現象です。
スチームバランスを見るとわかるように、高圧スチームが停止して影響を受けるのは、

  1. 大型スチームタービン:動力源であるスチームが停止すると、動力供給が不可能となり大型圧縮機も停止する。そのためにプロセスの運転続行が難しくなる。
  2. 抽気スチームのエクスポート:大型スチームタービン停止のために抽気スチームもまたカットされるので、プロセススチームの供給が絶たれる。また、小型スチームタービンへのスチーム供給もなくなるので、小型回転機(例えばファンやポンプなど)も運転停止となる。特に被駆動機がボイラ給水ポンプの場合にはボイラ給水も停止する。
  3. 低圧スチーム:加熱器や脱気器へのスチーム供給が停止し、脱気器の温度を保つのが困難となる。


以上のようにプラントの運転続行は不可能となりますので、スチーム停止即プラント停止となります。このようなケースではインターロックなどの安全装置により、停止作業やその後の処理作業も比較的容易に行うことが出来ます。
しかし、もし、プロセススチームの停止がプラントにダメージを与える場合はどう対処すれば良いでしょうか?次回はこのケースについて説明したいと考えています。

第1章 プロセス設計と安全設計
1.1 設計条件と安全設計
1.1.1 安全設計とは
1.1.2 設計条件の決め方
1.2 設計条件と運転モード
1.2.1 運転条件と運転状態
1.2.2 運転モードと運転時間
1.2.3 設計条件と運転時間
1.3 蒸留系運転と設計条件
1.3.1 蒸留系説明
1.3.2 運転条件の設定
1.3.3 設計条件の選定
1.3.4 設計条件と水運転
1.3.5 物性の違いと設計条件
1.3.6 安全弁の吹き出し温度
1.3.7 還流ポンプの設計圧力
1.3.8 蒸留塔凝縮器と最高運転条件
1.4 圧縮機周りの設計条件
1.4.1 圧縮機と運転条件
1.4.2 圧縮機停止における運転状況
1.4.3 プロセス制御システム
1.4.4 放出弁と圧力推移
1.4.5 圧力推移シミュレーション①
1.4.6 圧力推移シミュレーション②
第2章 ユーティリティー停止と安全設計
2.1 スチーム停止とスチームシステムの安全性
2.1.1 スチームシステム
2.1.2 スチーム停止による影響
2.2 スチーム停止とプロセススチーム
2.2.1 プロセススチーム
2.2.2 プロセススチームの確保
2.3 スチームソースと加熱源
2.3.1 スチームドラム
2.3.2 スチームドラムの保有熱量
2.4 加熱源としての水蒸気改質炉
2.4.1 水蒸気改質炉とプロセススチーム
2.4.2 改質管と改質触媒
2.4.3 プロセススチーム・ループ
2.4.4 計算結果と考察
第3章 停電と安全設計
3.1 停電とプラント
3.1.1 停電と電力供給
3.1.2 化学プラントにおける電力供給安定化
3.1.3 ディーゼルエンジン発電機の起動
3.2 緊急用発電装置停止
3.2.1 緊急用発電装置と連結機器
3.2.2 緊急用発電装置停止による影響

スチームタービン形式

スチームタービンの形式には大きく分けて三種類あります。

  1. 一つ目が復水タービン(Condensing type turbine)またはコンデンシングタービンと言われるタイプで、タービンに流入したスチームのほとんど全量が排気スチームとなり、復水器で凝縮回収されます。中型から大型のタービンに採用されることが多く、被駆動機としては中型から大型のプロセスガス圧縮機や発電機が採用されることが多い。
  2. 二つ目が抽気復水タービン(Extraction & condensing type turbine)で、中段からスチームの一部を抽出し、プロセス用スチームあるいは小型スチームタービン用に使用します。残ったスチームは排気スチームとして復水器で凝縮回収されます。大型のタービンに採用されることが多く、被駆動機としては大型のプロセスガス圧縮機が採用されることが多い。
  3. 背気タービン(Back pressure type turbine)は流入したスチームのほとんどが低圧スチームとして回収される形式で、復水タービンに比べ出力が低くなるのが一般的です。中型から小型のタービンに採用されることが多く、被駆動機としては中型のプロセスガス圧縮機や小型回転機(ファンや圧縮機およびポンプ)に採用されることが多い。

実際にスチームシステムでどのように使われているかを”スチームシステムとスチームタービン”で説明していますので参考にしてください。