2. ユーティリティー停止と安全設計
2.1 スチーム停止とスチームシステムの安全性
2.1.2 スチーム停止による影響
前回お約束しましたように、今後の議論を深めるためにスチームバランスを計算します。
(1) スチーム条件の決定
スチームバランスを計算するためには前回説明いたしました”スチームシステムの三条件”を決める必要があります。おおよそのスチーム条件については前回お見せしましたスチームシステムに記載しておきましたので、それを見ながら説明します。
このスチームシステムにはスチーム条件を同じにするユーザーが三種類あります。
- 一つ目は廃熱ボイラからスチーム過熱器を通って大型スチームタービンに至るラインで、高圧スチームヘッダー(HP steam header/high pressure steam header)と呼ばれる部分です。
- 二つ目は大型スチームタービンの抽気段(Extraction stage)を出たスチームラインで、プロセススチームや小型スチームタービンなどのユーザーにスチームを供給しています。これを中圧スチームヘッダー(MP steam header/middle pressure steam header)と呼んでいます。
- 三つ目は小型スチームタービンの背気スチームや、中圧ヘッダーからのレットダウン(letdown)*1スチームやフラッシュドラムからの回収スチームが集まるラインで、低圧スチームヘッダー(LP steam header/low pressure steam header )と呼んでいます。
*1レットダウンとは高圧から低圧へ弁を介してスチームを供給するシステムで、その状態変化は断熱変化に等しい。
これらのスチームヘッダー条件の決め方にはルールがあり、それにそってスチームシステムに記載した温度圧力を決定しました。その一部を下表に紹介します。
表12-1 スチームヘッダー温度圧力決定のルール(制約条件)
| スチームヘッダー | 温度 | 圧力 | 備考 |
| 高圧スチーム | スチームタービン材料(耐熱強度) | スチームタービン材料(耐熱強度) | 過熱器下流配管の設計およびタービン熱効率にも注意 |
| 中圧スチーム | 抽気段断熱効率 | プロセススチームユーザー圧力 | 抽気段ノズルの位置による制約もある |
| 低圧スチーム | 飽和温度以上であれば可 | 加熱器の被加熱温度と脱気器圧力 | 脱気器圧力以上 |
次に重要なスチーム条件は大型スチームタービンの復水段の温度条件です。この温度条件はすでに説明しているように(下記参照)、
タービン出口条件:復水器の運転条件(温度)のことで、この温度がより低ければ低いほどスチームタービンの熱効率が上昇します。ただし、この温度は冷媒温度に支配されており、水や海水を使用する冷却器(復水器)では45~50℃、空気冷却器では60~70℃が一般的です。
復水段出口(復水器)温度は冷媒温度条件より高く、冷媒温度+20~30℃ですから、50℃を選定いたしました。
(2)スチームバランスの計算方法
スチームバランスを計算するためには計算手順を間違えてはいけません。スチームの流れに沿って、いきなり高圧スチームヘッダーから計算をするのではなく、低圧スチームヘッダーから計算します。まず、
- 低圧スチームヘッダーでのスチーム必要量を計算します。そのためには加熱器熱負荷(既知)からスチームの必要量を計算します。その際には低圧スチームの温度は飽和温度に仮定し、その潜熱を用いて計算します。次に脱気器で使用するスチーム量を仮定します。両者を合計すれば低圧スチームの必要量G-LP(out)になります。
- 次に低圧スチームヘッダーに入るスチーム量G-LP(in)を計算します。まず、小型タービンの動力から必要スチーム量を計算します。次にフラッシュドラムの計算を行い、回収できるフラッシュスチーム量G-FlashSを求めておきます。このフラッシュドラムの計算は高圧スチームヘッダーの計算後に再計算する必要があります。これらの合計がG-LP(out)以上であれば問題ありませんが、少ない場合には中圧から低圧へのレットダウンを使用して必要量をカバーします。多い場合には小型タービンの動力を変更してスチーム量を少なくするか、加熱器の熱負荷を変更します。
- 脱気器周辺のバランスを計算します。脱気器に入る補給水量(G-MU)と温度を仮定します。また加熱器出口条件を低圧スチームの飽和水としエンタルピを決定します。次に熱収支の計算を行い、脱気器の温度(エンタルピ)が所定の数値になるように補給水温度、あるいは脱気器温度を変更します。
- 脱気器から廃熱ボイラ(スチームドラム)へ送られるボイラ給水量を計算します。この量はG-LP(out)と補給水量(G-MU)の合計で、この量をG-BFWとします。このG-BFWをスチームにするために必要な熱量を計算します。この熱量は廃熱ボイラ(スチームドラム)の飽和水まで加熱するための熱量と飽和スチームにするために必要な熱量に分かれ、前者を高圧エコノマイザの熱負荷、後者を廃熱ボイラの熱負荷に相当します。ただし、G-BFWの1~2%はドレンとして飽和水の条件でフラッシュドラムに送られますので、発生できるスチーム量(G-HP)はG-BFWの98~99%に減少しますので、その分、廃熱ボイラの熱負荷も小さくなります。
- 廃熱ボイラ(スチームドラム)を出た飽和スチームを過熱するために必要な熱量(スチーム過熱器熱負荷)を計算します。
- 次に中圧スチームヘッダーのバランス計算を行います。まず、低圧スチーム量G-LP(in)からフラッシュスチーム量G-FlashSを差し引いたスチーム量とプロセススチームとして外部に送出する量G-Proを加算します。これが中圧スチームヘッダーの必要量GP-MPになります。
- 最後に大型スチームタービンの計算を行います。抽気量G-ExはGP-MPと同じ量ですから、大型スチームタービンの動力をもとに復水段のスチーム量を計算します。この計算はスチームタービンのメーカー情報(断熱落差や熱効率)をもとに行います。ここでは以前紹介した”Dresser-Rand”のスチームタービン性能推定ツールを使用して決めています。ただし、動力は10,000kWにしております。
- この復水量G-Conと抽気量G-Exの合計が高圧スチーム量G-HPになりますので、最初に仮定したG-HPとの差を調整する必要があります。その調整は補給水量で行います。つまり、
補給水量G-MU=復水量G-Con +プロセススチーム量G-Pro+フラッシュドラムドレンG-FlashD
この計算は繰り返し計算になり、その場合には (iii) からスタートします。以上の手順による計算結果をスチームバランスと右表(表12-2)に掲載しましたのでご覧下さい。
(3)スチーム停止の影響
ここで説明しますスチーム停止とは、廃熱ボイラやエコノマイザの加熱源が何らかの原因により絶たれるか、あるいは急激に落ち込んだために、スチーム発生がゼロになるか定常時に比べ極端に少なくなる現象です。
スチームバランスを見るとわかるように、高圧スチームが停止して影響を受けるのは、
- 大型スチームタービン:動力源であるスチームが停止すると、動力供給が不可能となり大型圧縮機も停止する。そのためにプロセスの運転続行が難しくなる。
- 抽気スチームのエクスポート:大型スチームタービン停止のために抽気スチームもまたカットされるので、プロセススチームの供給が絶たれる。また、小型スチームタービンへのスチーム供給もなくなるので、小型回転機(例えばファンやポンプなど)も運転停止となる。特に被駆動機がボイラ給水ポンプの場合にはボイラ給水も停止する。
- 低圧スチーム:加熱器や脱気器へのスチーム供給が停止し、脱気器の温度を保つのが困難となる。
以上のようにプラントの運転続行は不可能となりますので、スチーム停止即プラント停止となります。このようなケースではインターロックなどの安全装置により、停止作業やその後の処理作業も比較的容易に行うことが出来ます。
しかし、もし、プロセススチームの停止がプラントにダメージを与える場合はどう対処すれば良いでしょうか?次回はこのケースについて説明したいと考えています。
表12-2 スチームバランス
| 項目 | 温度℃/圧力MPa | 流量 kg/h |
| ボイラ給水 | 130/13.0 | 77,830 |
| ドレン | 314/10.4 | 770 |
| 高圧スチーム | 314/10.4 | 77,060 |
| 過熱スチーム | 520/10.0 | 77,060 |
| 抽気スチーム | 330/3.0 | 58,000 |
| 排気スチーム(復水) | 50/0.012 | 19,060 |
| プロセススチーム | 330/3.0 | 38,000 |
| 小型スチームタービン | 330/3.0 | 18,260 |
| 中圧低圧レットダウン | 330/3.0 | 1,740 |
| フラッシュスチーム | 147/0.45 | 290 |
| フラッシュドレン | 147/0.45 | 480 |
| 加熱器スチーム | 148/0.45 | 19,150 |
| 脱気器チーム | 147/0.45 | 1,140 |
| 補給水 | 115/0.51 | 57,540 |



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