この”安全設計とリスク解析”では、プラントの安全設計を行う上で注意すべき事柄やリスクをどのようにして見つけ出して対応するかについて述べていきたいと思っております。

「安全設計」の進め方

安全設計とプロセス設計は非常に密な関係にあります。

プロセス設計品質が悪ければ、スタートアップやシャットダウンはおろか、定常時においても安全な運転を継続することが出来ません。

トラブル続きでおちおち製品の品質確保も疎かになり、稼働率も下がり利益も半減(?)あるいは無くなってしまうかもしれません。また、設計条件を決める際に抜けがあれば、運転条件が設計条件を超えてしまい、これも運転の継続が不可能となってしまいます。

1.3 蒸留系運転と設計条件

1.3.2 運転条件の設定

議論を続ける前に、蒸留塔まわりの運転条件と設計条件を決めておく必要があります。ただし、問題をもう少し複雑にするために、蒸留塔凝縮器の型式を空気冷却器に変更しました。この理由は後ほど説明いたします。

下表に蒸留塔周りの運転条件を示しました。つまり、蒸留塔トップの運転条件は圧力0.16MPa、温度76.6℃。蒸留塔ボトムの運転条件は圧力0.22MPa、温度123.3℃としました。

表1 運転条件の設定


場所 運転圧力 運転温度 備考
蒸留塔トップ 0.16MPa 76.6℃ 凝縮器入口
蒸留塔ボトム 0.22MPa 123.3℃ リボイラ入口出口
粗メタノール 0.46MPa 56.0℃ ----
還流ドラム 0.14MPa 73.0℃ 凝縮器出口
精製メタノール 0.45MPa 73.0℃ ----
還流メタノール 0.25MPa 73.0℃ 蒸留塔戻り
排水 0.22MPa 123.3℃ ----
スチーム 0.440MPa 147.2℃ ----
凝縮水 0.426MPa 146.0℃ ----
空気冷却器入口 ---- 28.0℃ 大気空気
空気冷却器出口 ---- 45.0℃ ----

1.3.3 設計条件の選定

仮の設計条件を以下のようにします。つまり、

  1. 蒸留塔トップの設計温度は、運転温度+10℃、または運転圧力+0.1MPaにおける飽和温度のどちらか高い温度とする。
  2. 蒸留塔トップの設計圧力は、運転温度+10℃における飽和圧力、または運転圧力+0.1MPaのどちらか高い圧力とする。
  3. 蒸留塔ボトムの設計温度は、運転温度+10℃、または運転圧力+0.1MPaにおける飽和温度のどちらか高い温度とする。
  4. 蒸留塔ボトムの設計圧力は、運転温度+10℃における飽和圧力、または運転圧力+0.1MPaのどちらか高い圧力とする。

表2 設計条件の選定

場所 条件 設計圧力 設計温度
蒸留塔トップ 運転圧力 0.16+0.10=0.26MPa 90.6℃
蒸留塔トップ 運転温度 0.227MPa 76.6+10.0=86.6℃
蒸留塔ボトム 運転圧力 0.22+0.10=0.32MPa 135.8℃
蒸留塔ボトム 運転温度 0.297MPa 123.3+10.0=133.3℃

これにより、蒸留塔ならびに周辺の機器の設計条件を以下のように設定します。

表3 設計条件の設定

場所 設計圧力 設計温度 備考
蒸留塔トップ 0.26MPa 90.6℃ 表2より
蒸留塔ボトム 0.32MPa 135.8℃ 表2より
粗メタノール 0.56MPa 66.0℃ 0.1MPa&10℃プラス
還流ドラム 0.24MPa 88.2℃ 差圧0.02MPa設定
精製メタノール 0.55MPa 88.2℃ 還流ポンプ締切圧
還流メタノール 0.55MPa 88.2℃ 精製メタノールに同じ
排水 0.32MPa 135.8℃ 蒸留塔ボトムに同じ
スチーム 0.60MPa 158.9℃ スチームシステム準拠
凝縮水 0.58MPa 157.6℃ スチームシステム準拠

1.3.4 設計条件と水運転

プラントの試運転準備の一つとして、N2やスチームによるフラッシング(flashing)やクリーニング(cleaning)を行います。一般に、プラントに納入される機器には、さび止めのために油や特殊な薬品が塗布されていることが多く、そのために試運転前にそれらを除去するためにクリーニング作業が行われます。
クリーニングには薬液を使用したケミカルクリーニングや水を使用した水洗浄(略して水洗)があり、特殊な例では金属表面に不動態皮膜を作る酸洗と言われるボイラ周りのケミカルクリーニング(chemical cleaning)があります。

この蒸留システムでも温水を循環させて塔内部品(トレイなど)に塗布された油や錆び落としのための洗浄をしなければなりません。
この温水は蒸留塔ボトムに水を張り、リボイラにスチームを通して作りますので、蒸留塔内部はスチームと水の共存状態になり、その運転温度は蒸留塔の運転圧力下での水の飽和温度に等しくなります。一般には、大気圧下で行いますので、試運転準備中の蒸留塔本体の温度は100℃程度を考えればいいことになります。

この温水洗浄の運転時間は実績では1週間程度を要しており、§1.3.2 ”運転モードと運転時間”で説明したT_10やT_50などより長くなりますので、設計条件の設定に考慮しなければなりません。
それでは、この水運転下での運転条件をどのようにして設計条件に反映させるのでしょうか?

<続く>


メタノール蒸留システム

空気冷却器

空気冷却器(Air Cooler/Air Fin Cooler)は、大気を利用してチューブ側流体を冷却したり凝縮させる空冷式冷却器で、空気の流し方により吸込式と押込式に分類される。
空気を使用するために管外の伝熱係数が小さく、伝熱面積は同条件の水冷却器より数倍大きくなる。そのためにチューブにフィンを付けて伝熱面積を稼いでいる。また、冬場と夏場における空気温度が大きく違っている場合には、ファンの回転数や空気取り出し口についているルーバー角度で空気流量を制御したり、ファンを起動停止して冷却能力を制御している。