この”安全設計とリスク解析”では、プラントの安全設計を行う上で注意すべき事柄やリスクをどのようにして見つけ出して対応するかについて述べていきたいと思っております。

「安全設計」の進め方

安全設計とプロセス設計は非常に密な関係にあります。

プロセス設計品質が悪ければ、スタートアップやシャットダウンはおろか、定常時においても安全な運転を継続することが出来ません。

トラブル続きでおちおち製品の品質確保も疎かになり、稼働率も下がり利益も半減(?)あるいは無くなってしまうかもしれません。また、設計条件を決める際に抜けがあれば、運転条件が設計条件を超えてしまい、これも運転の継続が不可能となってしまいます。

3. 停電と安全設計
3.2 緊急用発電装置停止

3.2.1 緊急用発電装置と連結機器

プラントの安全設計上、ディーゼルエンジン発電機などの緊急用発電装置(無停電装置は除く)につなぐ機器として、計装機器以外にどのようものがあるでしょうか。ディーゼルエンジン発電機(以後、DEGと略す)はプラントの安全停止、あるいは再起動までの電力供給を目的としていますので、長期に渡って運転するようには設計されていません。安全停止だけを考えるのであれば停電後30分から1時間程度、再起動を考慮するのであればせいぜい数時間の短期運転を想定します。(長期運転を考慮すると、燃料油や冷却水などのタンク容量が大きくなり経済性が損なわれます)
もし、安全停止をメインとした場合、DEGにつなぐ機器として以下が考えられます。

  1. 大型回転機の潤滑油ポンプおよびシール油ポンプ
  2. 加熱炉やボイラー付属の回転機、例えば回転式空気予熱器
  3. 計装用空気圧縮機、計装空気貯槽に十分な容量があれば不要
  4. 冷却水ポンプ、上記圧縮機などの中間冷却器に使用される冷却水を供給する。一般にポンプ容量は小さい。
  5. その他、計装用電源など。

この中でモーター容量が大きな機器は、大型回転機の潤滑油ポンプあるいは計装用空気圧縮機、もしくは冷却水ポンプになります。

3.2.2 緊急用発電装置停止による影響

もし、停電後に起動すべきDEGなどの緊急用発電装置が、燃料油不足あるいは機器メンテナンス不良のために突然停止した場合、連結されている機器にどのような影響が生じるでしょうか?

b.の回転式空気予熱器が停止すると、燃焼排ガスと空気の温度差により空気予熱器エレメントに熱変形が生じ破損しますので、対応としては加熱炉やボイラーの運転を止めることで対応可能です。

c.の計装用空気圧縮機が停止しますと計装用空気が不足しますので、一般計装の動作不良、あるいは制御弁が全閉になったり全開になったりします。そのために安全停止処置が出来なくなりますので、計装空気貯槽容量を大きくするか、緊急用の計装空気貯槽(高圧)を新たに設置することで対応可能です。

d.の冷却水ポンプについては、もし計装空気貯槽で対応出来るようにすれば、計装空気圧縮機を起動させる必要がないのでDEGにつなぐ必要はなくなります。

e.のその他および計装用電源は無停電装置からも電力を供給できるようにすることで、DEGなどの緊急用発電装置停止の影響を最小にすることが出来ます。

残ったa.の”大型回転機の潤滑油ポンプおよびシール油ポンプ”が、DEG停止により予想より早期に停止した場合、大型回転機の潤滑油不足で主軸が焼き付く恐れがあります。また、シール油の確保が出来なくなりますと、圧縮機内部のガスがシール部から周辺にリークし、最悪のケースではガスに引火して爆発を起こしたり、毒性を持つガスの場合には運転員が死亡する可能性もあります。
そのために、圧縮機メーカーの設計標準では潤滑油専用の貯槽(ヘッドタンク)を設け、回転機が完全に停止するまでの数分間から10分間にわたり潤滑油をgravityで供給し、油切れがないようにします。
一方、シール油の確保は潤滑油の確保とは異なり、難しい面があります。その理由は、潤滑油の場合に必要な圧力は0.1~0.15MPa(G)*1で十分ですが、シール油の場合には圧縮機内部のガス圧より少々高くするために、緊急時に供給するシール油をあらかじめ加圧しておく必要があります。この加圧源が無いために別の方式にてシール油を確保するようにします。この詳細は次回に・・・。

*1 0.1~0.15MPa(G)にするために、潤滑油専用の貯槽(ヘッドタンク)を回転機より約10m以上高い場所に設置します。そのためにヘッドタンク(head tank)という名称が付けられています。

次回に続く。