この”安全設計とリスク解析”では、プラントの安全設計を行う上で注意すべき事柄やリスクをどのようにして見つけ出して対応するかについて述べていきたいと思っております。

「安全設計」の進め方

安全設計とプロセス設計は非常に密な関係にあります。

プロセス設計品質が悪ければ、スタートアップやシャットダウンはおろか、定常時においても安全な運転を継続することが出来ません。

トラブル続きでおちおち製品の品質確保も疎かになり、稼働率も下がり利益も半減(?)あるいは無くなってしまうかもしれません。また、設計条件を決める際に抜けがあれば、運転条件が設計条件を超えてしまい、これも運転の継続が不可能となってしまいます。

1.4 圧縮機周りの設計条件

1.4.5 圧力推移シミュレーション①

全開の”放出弁と圧力推移”では、圧縮機上流から流入するプロセスガスのみを考慮した場合の圧縮機吸込側圧力上昇について議論いたしました。
今回の”圧力推移シミュレーション”では、”圧縮機停止における運転状況”の中で言及しました二つの現象、つまり、下記の2.と3.を考慮した場合の圧力上昇について考えてみましょう。

  1. 圧縮機が停止すると、上流システムから圧縮機に流入していたプロセスガスの行くところがなくなるので、圧縮機吸込側の圧力が上昇し始めます。
  2. それと同時に圧縮機吐出側締切弁が自動的に全閉となり、圧縮機本体および吐出側配管内のプロセスガスの行き場が無くなります。
  3. また、上記二つの現象とほぼ同時に、流量確保のために設置されている spill back line (戻りライン)の流量制御弁(FCV)が開き始め、圧縮機吐出側(高圧側)から吸込側(低圧側)へプロセスガスが戻り始めます。
  4. 以上、三つの現象により圧縮機吸込側圧力が急激に上昇します。
  5. 圧力上昇を緩和するために、圧縮機吸込側(吸込ドラム出口)に設置されている放出弁(PCV)が開き始め、上流側からのプロセスガスならびに圧縮機からの戻りガスが放出され、次第にシステム圧力が下がり始めます。

ガス体の圧力上昇を検討する場合には、物質収支を念頭に置いて考える必要があります。例えば、圧縮機周りのケースでは、圧縮機吸込側(Sec.A)と圧縮機本体(Sec.B)に分けて物質収支の計算式を作成します。
ただし、それぞれのシステム容量を”X”および”Y”とし、各ストリームに番号①~⑤を付加します。また、ある単位時間(例えば1秒間)における増減を表すために”δ”を頭に付けることにします。

(1) Sec.Aの物質収支

圧縮機上流から流入するプロセスガスをストリーム①、放出弁からフレアーに流れ、そこで処理された後に大気に放出されるプロセスガスをストリーム②、圧縮機に吸い込まれるプロセスガスをストリーム③、圧縮機spill back弁(FCV)から逆流するプロセスガスをストリーム④としますと、物質収支の計算式は次のようになります。

δ①+δ④=δ②+δ③+δX

つまり、”δ①+δ④=δ②+δ③”にはならずに、右辺と左辺の質量差がシステム容量の変動(δX)となり、圧縮機吸込側の圧力増減に繋がります。

(2) Sec.Bの物質収支

圧縮機から次工程へ流出するプロセスガスをストリーム⑤としますと、物質収支の計算式は次のようになります。

δ③=δ④+δ⑤+δY

つまり、”δ③=δ④+δ⑤”にはならずに、右辺と左辺の質量差がシステム容量の変動(δY)となり、圧縮機本体の圧力増減に繋がります。

(3) 圧力推移に及ぼす影響因子

これら二つの物質収支の計算式に影響する要因としては、

  1. 圧縮機吸込側(吸込ドラム出口)に設置されている放出弁(PCV)が、いつ、どのようなスピードで開き始めるか?
  2. 圧縮機吐出側に設置されている締切弁(HCV)が、いつ、どのようなスピードで閉じ始めるか?
  3. 圧縮機spill back lineに設置されている流量制御弁(FCV)が、いつ、どのようなスピードで開き始めるか?
  4. 圧縮機が停止し始めてからの運転点(流量ならびに圧力)が、圧縮機の性能曲線をどのように移動するのか?

これらすべてを考慮して動的シミュレーションを行う必要がありますので、それなりのシミュレーターが必要となります。しかし、単純化されたモデルを使えばExcelでも計算可能ですので、次回はこの動的シミュレーションにチャレンジしてみる予定です。