1.2 設計条件と運転
1.2.1 運転条件と運転状態
設計条件(設計温度と設計圧力)を決定する上で必要な項目は、運転モードと運転条件です。この運転モードは定常運転だけでなくスタートアップやシャットダウンなどの非定常運転も含み、それらの運転モードで出現する運転温度や運転圧力を全てを考慮して設計条件を決定する必要があります。
しかし、ここで是非とも考えていただきたいことは、「定常時と非定常時では運転状態が異なる」ということです。つまり、
運転状態 = f(運転温度、運転圧力、運転時間)
となり、非定常運転状態おける運転時間は定常運転状態より短いのが通例です。そこで運転モードを時間を考慮して分類してみましょう。
1.2.2 運転モードと運転時間
時間を考慮して運転モードを図のように分類します。
- 定常運転:主条件運転(Normaol Operation→NO1)と別条件運転(Alternative Operation→NO2)に分類します。別条件運転とは原料の組成が変更になった場合とか生産量を落として運転するようなケースが相当します。
- 非定常運転:通常スタートアップ、通常シャットダウン、緊急シャットダウン、再スタートアップおよび安全弁吹き出しの五つに分類します。
通常の運転モードでには含まない「安全弁吹き出し」を非定常運転に追加しました。この運転モード、つまり安全弁が吹き出す際には運転圧力が設計圧力に接近し最も高くなります。運転条件として最も厳しい条件の一つです。
そこで、これらの運転モードで出現する運転条件を下表にように分類しました。
表1 運転条件と運転モード
| 運転モード | 運転温度 | 運転圧力 | 運転時間 |
| 主条件運転 | T_NO1 | P_NO1 | H_NO1 |
| 別条件運転 | T_NO2 | P_NO2 | H_NO2 |
| 通常スタートアップ | T_10 or T_50 | P_10 or P_50 | H_10 or H_50 |
| 通常シャットダウン | |||
| 緊急シャットダウン | |||
| 再スタートアップ | |||
| 安全弁吹き出し | T_RV | P_RV | H_RV |
ただし、T_10やP_50の10と50は以下のように定義しています。
- 10は1回の運転条件が連続でmax.10時間で、年に十回起こる可能性を示している。
- 50は1回の運転条件が連続でmax.50時間で、年に二回起こる可能性を示している。
- RVはRelief Valveの意味、つまり安全弁吹き出し時を意味しています。
この運転モードと運転時間の関係を図に示しました。
1.2.3 設計条件と運転時間
運転時間を考慮して設計を行う例は数多くあります。例えば、リフォーマーチューブのような高温雰囲気にさらされるような機器の設計では、高温下での金属材料の許容応力の低下によるクリープ破断を考慮するために、運転時間という概念が必要です。もし、この時間を考慮しなければ設計条件はより厳しくなり、チューブ肉厚は増加して経済的設計にはほど遠くなるでしょう。
一般にリフォーマーチューブや配管などは交換しながら運転を継続できるので運転時間を考慮して設計するようですが、一般の機器の設計にはそのような概念は採用されないのが通例です。
1.3 蒸留系運転と設計条件
1.3.1 蒸留系説明
そこでメタノール蒸留塔周りのPFDを用意しましたので、この図を使って運転モードと設計条件について考えてみましょう。まず、メタノール蒸留システムの説明から始めます。
- システム名称:メタノール蒸留システム
- システム構成
- 蒸留塔(Distillation Column)
- リボイラ(Reboiler)
- 凝縮器(Condenser)
- 環流ドラム(Reflux Drum)
- 環流ポンプ(Reflux Pump)
- プロセス概要
- 原料は粗メタノール(Crude MeOH:水とメタノールの混合液)で、蒸留塔中段に供給される。
- 塔頂からは純度の高い精製メタノール(Product MeOH)が凝縮器に流れ、そこで冷却水により冷却凝縮する。
- 凝縮したメタノールは環流ドラムに流入し環流ポンプで昇圧された後に、一部は製品としてシステム外に送出され、残りのメタノールは環流として蒸留塔に戻る。
- 塔底にはリボイラが設置されており、塔底液はリボイラでスチームにより加熱蒸発し、塔内を上昇しながら上部からの粗メタノールと熱交換を行う。
- 塔底からはメタノールが飛ばされた後に残った粗メタノール中の水(Water)が排出される。
この蒸留システムで想定される運転モード、そして運転条件はどのようなものになるでしょうか?
<続く>



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