第2章 化学プラント
2.3 建設プロジェクト
2.3.1 建設プロジェクトの発足
化学プラント建設のゴーサインが出ると、いよいよ建設プロジェクトを立ち上げることになる。
この建設プロジェクトは化学プラントのオーナーである客先側と、プラントエンジニアリングを担当するエンジニアリングコントラクター側にプロジェクトマネージャーをリーダーとしたプロジェクト組織が構築される。次いで建設開始から完成までの全体スケジュールがエンジニアリングコントラクター側およびオーナー側の協議を経て作られる。以後のプロジェクトの進捗は、余程のことが無い限り(天変地異など人間の手に負えない事変)、この全体スケジュールに則って進められなければならない。
このプラント建設をスケジュールに沿って円滑に進行させるためには、定期的な進捗状況の把握とスケジュールへの反映、それに伴う迅速な人員や物量の投入が必要となる。予算が限られた建設プロジェクトでは、経費増大を伴う物量の投入を躊躇するためにスケジュールの遅延を招き、結果的に赤字幅が増えて失敗することがある。
2.3.2 プロジェクトチーム
オーナー側プロジェクトは客先本社に所属しているエンジニアおよび工場側エンジニアから構成される。具体的には技術サイドと運転サイドおよび保守サイドの三つに分かれており、
- 技術サイド:主にプロセスエンジニアリングなどの技術的内容を担当し、本社あるいは工場の技術部出身のエンジニア
- 運転サイド:運転の見地からエンジニアリング全般をチェックする。建設完成後は運転する立場であるから、エンジニアリングへの改善や変更の要望は事細かくなる。
- 保守サイド:プラントの保守点検を行う見地から、エンジニアリング全般をチェックする。
一方、エンジニアリングコントラクター側のプロジェクトチームには、その目的に応じて数多くのエンジニアが任命される。例えば、
- ジェネラルマネージャー(general manager):建設対象が複数のプラントから構成されるコンプレックスの場合、各プラントごとにプロジェクトチームが設けられ、ぞれら全体を管理するために任命されるマネージャー。各プロジェクトマネージャーの上位に立つ。
- エンジニアリングマネージャー(engineering manager):プロジェクト内のエンジニアリング上の品質を管理する。新規プロセスでは技術的な課題が多いので任命されることが多い。
- スケジュールコントローラー(schedule controller):プロジェクトスケジュールを管理するエンジニアで、エンジニアリングコントラクター内部の複数の業務の進捗を管理する。
- マテリアルコントローラー(material controller):建設に必要な物量の仕入調達運搬などの物流を管理する。
これ以外にプロセスエンジニアやメカニカルエンジニア(容器・回転機・配管・電気・計装)がプロジェクトに所属する。これらのエンジニアはタスクフォースで業務を行い、業務完了あるいは中断した場合には所属部署に戻ることになる。そのためにアサインエンジニア(assigned engineer)とも呼ばれる。
- 序章 化学工学とは何か
- 化学工学の特徴
- 化学工学と化学工業(その発展と今後)
- 化学工学と化学プロセス
- 化学工学と化学プロセス(原料と製品)
- 化学工学とプラント設計(化学プラントと機械プラント)
- 化学工学とプラント設計(化学工学の内容)
- 第1章 化学工学入門
- 1.1 化学工学の基本コンセプト
- 1.2 物質収支(液体)
- 1.2.1 物質収支(液体)続き
- 1.2.2 物質収支(気体)
- 1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支
- 1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支(続き)
- 1.2.4 制御システムと化学反応を伴う物質収支
- 1.3 熱収支とエネルギー収支
- 1.3.1 単位操作と運転条件
- 1.3.2 熱収支とエネルギー収支の計算
- 1.4 流動
- 1.4.1 流動と拡散