Process Simulator & Artificial Intelligence

プロセス性能をプロセスシミュレータとAIで予測します。

Google
WWW を検索 サイト内を検索

2. プロセス性能予測例題

2.1 プロセス性能としてのメタン濃度

代表的なプロセス性能として原料原単位(製品生産量当たりの原料消費量)やエネルギ原単位(製品生産量当たりのエネルギー消費量)があげられます。しかし原単位を求めるには物質収支や熱収支だけでなく、スチームシステムや冷却水システムなどのユーティリティーバランスも含め検討しなければなりません。これらの作業は非常に煩雑になるために、このコーナーでは天然ガスを原料とする水素プロセスを対象に水蒸気改質炉出口の合成ガス中のメタン濃度に着目しました。
このメタン濃度が高ければ合成ガスに含まれるメタン量が増加し、水蒸気改質炉下流の水素精製工程(PSA設備)において排出されるオフガス量が増加しそこに含まれる水素も増加します。そのために製品水素を製造する上で必要な天然ガス量が増加します。つまりメタン濃度の高い低いが水素プロセス性能に大きく影響するとことになります。
メタンは原料の天然ガスに含まれており、下記に示す水蒸気改質反応により水素と一酸化炭素に変換します。この反応から判るようにメタン濃度は天然ガス中のメタン濃度やメタンに対する水蒸気の割合および出口圧力に影響されます。またこの反応は吸熱反応であるために温度にも影響されます。そこでこのコーナーでは天然ガス組成と水蒸気の割合(S/C:Steam by Carbon、モル比)を固定し、温度と圧力を変化させた場合、合成ガス中のメタン濃度がどのように変化するかを予測することにしました。

CH4+H2O=CO+3H2+206.1kJ/mol

2.2 プロセスシミュレーターによるメタン濃度の計算

プロセスシミュレーターとしてはAspen PulsやHYSYSあるいはPRO/IIなどがありますが、いずれも相当な初期導入費と保守管理費が必要となるので、フリーソフトを使ってメタン濃度の計算を行うことにします。フリーのプロセスシミュレーターとしては化学工学会で紹介しているCOCO/ChemSepを使用しました。これ以外にもDWSIMがありますが、詳細な検討をしていませんので使用には至っておりません。
計算に使用した水蒸気改質炉の入口条件は天然ガス中のメタン濃度 100mol%、S/C 3.0に固定し、出口温度と出口圧力をそれぞれ850〜900deg.C、1.2〜2.8MPaの間で任意に設定して計算しました。その結果の一部を下記の図に示します。


この図から判ることはメタン濃度は改質圧力上昇に従ってほぼ直線的に増加しますが、低圧力下では圧力上昇により急激に濃度が増加しています。

また圧力一定下におけるメタン濃度の傾向について下図に示しました。この図から分かるように温度の上昇に伴いメタン濃度は低下しますが、その傾向は単順な直線でなく高温側では傾きが緩くなっています。

以上のことからメタン濃度は温度および圧力共に単順な近似式で表現できるようにはなりません。そのためにエクセルで常備している重回帰分析などのツールを使っても精度ある推算式を求めることは出来ません。そこでAIを使って推測出来るかどうかを検討して行きます。