ゼロカーボンを目指す”グリーンプロセス”

1. 水素の種類

水素の種類を原料の種類と生産方式で分類する。その定義については国際的なコンセンサスが得られていないので、探し出すとまだまだありそうだが、ここでは幾つかの色の付いた水素について説明する。

グリーン水素:風力、太陽光、水力などの再生可能エネルギーを使用して、水の電気分解によって生産される。この方法では生産中にCO2を排出しない。

イエロー水素:太陽光発電を使用して電気分解により製造する水素を指す。太陽光発電が主要なエネルギー源であることから、この名前が付けられている。グリーン水素の一種でもある。

ブルー水素:天然ガスから生産され、その際に発生するCO2を回収し、貯蔵したり再利用する。CO2の回収率は80~90%なので、完全なカーボンゼロではない。

グレー水素:ブルー水素と生産形態は全く同じで、天然ガスから水蒸気改質によって生産される。発生した炭素を回収しないため、温室効果ガスの排出を促進させる。

ブラウン水素:リグナイト(褐炭)などの低品質の石炭から製造する水素で、リグナイトは比較的汚れが多い燃料であり、その燃焼からも大量のCO2が排出される。ブルー水素などに比べ、数倍のCO2を排出する。

ブラック水素:良質の燃料や原料として使われてきた瀝青炭を、燃やすことによって生産される水素を指す。この製造プロセスは大量のCO2を排出し、環境に負担をかけることから「ブラック」という名称が付けられている。

ピンク水素:原子力を利用して電気分解によって水素を生成する。このプロセスには、水を水素と酸素に分離するために必要な熱を生成するために原子力エネルギーを使用する。核エネルギーを象徴する色であるピンクから名付けられている。

ホワイト水素:地下内部の探索の結果、膨大な埋蔵量が確認されつつある水素で、ホワイト水素と呼ぶこともある。この水素は地球のマントルや地殻の反応によって生成され、地下の特定の地層(石灰層)に閉じ込められている。この水素ガスは「地球内部由来の水素」とも呼ばれ、特に無尽蔵のエネルギー源として注目されている。

ターコイズ水素:メタン(天然ガスの主成分)の熱分解(パイロリシス)によって製造される水素。このプロセスでは固体炭素が副産物として生成され、CO2の排出が非常に少なくなる。

バイオマス水素:バイオマスを原料とした水素である。バイオマス自体はゼロカーボンと見なすことも可能であるが、バイオマスをガス化などの処理時に、なお、化石燃料に由来するエネルギーを消費することが多く、完全なゼロカーボンと見なすことは出来ない。

Grey, blue, green – why are there so many colours of hydrogen?

WORLD ECONOMIC FORUMにリンクしている。

石炭の種類

石炭は炭素の濃集度合いや用途により分類され、濃集度の低い方から、褐炭、瀝青炭、無煙炭と名称が付けられている。「石炭とは何か」一般財団法人カーボンフロンティア機構にリンクしています。

ターコイズ水素
別名ブルーガスは、メタンピロリシスというプロセスを使用して生成される水素の一種である。このプロセスでは、メタンが高温下で分解され、水素ガスと固体炭素に分離される。この方法はCO2を排出しないため、比較的環境に優しい水素生産方法とされているが、メタンの取得やプロセスに使用するエネルギーが化石燃料から来ている場合は、その環境への利益が減少する可能性がある。
このプロセスの特徴は、固体炭素が副産物として生成される点であり、この固体炭素はさまざまな工業用途に利用することが可能である。ターコイズ水素は、他の色の水素と比べて新しいカテゴリーに属しており、まだ広く実用化されているわけではないが、将来的には低炭素または無炭素の水素供給源としての可能性が期待されている。

水素の物性 (出典はNIST

  1. 分子式 H2、分子量 2.01588
  2. CAS Registry No. 1333-74-0
  3. 融点Tf 13.95K、沸点Tb 20.39K
  4. 臨界温度Tc 33.18K、臨界圧力 Pc 13.00bar
  5. 燃焼熱 241.8kJ/mol

CO2の回収や貯蔵は、地球温暖化の進行を抑制するために注目されている技術である。CCSは主に以下のプロセスから構成されている。CCS:Carbon Capture and Storage

CO2の捕捉:ここでは、発電所などから排出されるCO2を分離・捕捉する。一般には、アミン溶液などを使う「ガス吸収法」、CO2を膜を用いて分離する「膜分離法」、圧力を変化させて分離する「PSA法」などがあります。

CO2の輸送:捕捉されたCO2は、パイプラインやタンク車などを用いて貯蔵地点まで輸送する。この過程では、CO2を加圧冷却して液体CO2として取り扱う。

CO2の貯蔵:最終的に、CO2は、使われなくなったガス田や油田、塩水層などの地下深くに注入され、長期間にわたって隔離される。これにより、大気中に放出される二酸化炭素の量が減少し、温室効果ガスの削減に寄与します。

CCS技術は、化石燃料の使用が避けられない現在のエネルギー体系において、温室効果ガスの排出削減を目指す重要な手段の一つです。ただし、この技術の経済性、安全性、地質的適合性など、多くの課題があります。また、貯蔵された二酸化炭素が将来的に漏れ出すリスクも検討が必要です。

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