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基本設計を開始する際の出発点がプロセス設計です。化学工学についてある程度知っており、プロセス設計を学びたい方を対象としています。「プロセス設計の実務」はプロセス設計への実務編としてもご利用下さい。

プロセスエンジニアリングの計算ルール

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ガス放出の必要時間液体ドレンの必要時間圧縮機の軸馬力計算ポンプの軸馬力計算 次のページへ

1.11 改質条件とCO転化条件と水素回収率への影響

すでに説明したように実際の水素プラントでは、水蒸気改質炉を出た改質ガスは熱回収後、CO転化工程に導入される。ここでは改質ガス中のCOからさらに水素を作り、水素プラントの原単位を改善している。

改質条件には改質温度、改質圧力、そしてS/C(Steam by Carbon ratio)がある。原料である炭化水素から多くの水素を得るためには、高い改質温度と低い改質圧力、そしてS/Cが大きいほうが良い。そこで改質温度とS/Cを変えた場合における水素生産量のケーススタディを行った。その結果を下図に示す。ただし、ベースケースとしては、改質温度875℃、S/C 3.0とし、またケーススタディの前提条件として、

  1. 改質圧力は改質炉出口で2.0MPa
  2. CO転化なし。

改質温度の上昇に従い水素原単位は向上している。ただし、温度をどの程度まで上げるかは、改質管(改質触媒を充填)材料の耐熱に依存するので、プロセス条件としては900℃以下が望ましい。(点線は増減率を示す)

S/Cの増加により水素原単位は向上している。ただし、必要以上のS/Cの増加はプロセス側廃熱の増加と水素原単位の悪化に結びつくので、S/Cとしては2.5~5程度が望ましい。(点線は増減率を示す)

CO転化は運転温度により以下のように分類できる。(ズードケミー触媒手帳より抜粋)

  1. 高温転化:比較的高い温度範囲(320~500℃)でCO転化を行う。CO転化触媒として酸化鉄-酸化クロム系を使用。CO濃度は入口で10~12%、出口で2~4%。
  2. 低温転化:比較的低い温度範囲(180~290℃)でCO転化を行う。CO転化触媒として酸化銅-酸化亜鉛-アルミナ系を使用。CO濃度は入口で2~4%、出口で0.1~0.3%。
  3. 中温転化:高温転化と低温転化の中間でCO転化を行う。CO転化触媒として酸化銅-酸化亜鉛-アルミナ系、または酸化銅-アルミナ系を使用。


水素プラントでは高温転化単独、あるいは高温転化+低温転化の組み合わせが最も多く採用されている。それらの特徴は、

  1. 高温転化単独:転化反応器基数は一基であり、触媒還元も必要なく簡単なシステム。ただし、出口CO濃度が高く、その分、水素原単位が高温転化+低温転化の組み合わせに比べ低い。
  2. 高温転化+低温転化の組み合わせ:転化反応器基数は二基であり、触媒が酸化銅のため硫黄や塩化水素に被毒されやい。また、触媒還元が必要となるのでN2循環システムや還元用水素供給などが必要でより複雑なシステムになる。ただし、出口CO濃度が低いので、水素原単位が高温転化単独に比べ改善できる。


ここではCO転化の水素原単位への影響を調べるために、物質収支計算表に”CO Shift”を追加し、その出口温度を変えて水素生産量を計算してみた。その結果を下図のグラフに示す。

この結果を見るとわかるようにCO転化の追加により、水素原単位は16~19%に増加する。(点線は増減率を示す)

今回作成した物質収支計算表(version0.5)における前回(version0.4)からの変更点は、

  1. Refomer下流にCO Shift(斜字部分)を追加
  2. Streamの圧力温度(表1)にCO Shiftを追加
  3. Sheet"CaseStudy1"を追加し、改質条件やCO転化条件の変更と水素生産量の推移をグラフを含め追加した。


また、前回と同様に物質収支計算表(Excel版)をダウンロードできるようにしましたのでご利用下さい。ダウンロードする LinkIcon


S/C と カーボン析出

水蒸気改質炉では高活性で耐熱度が高い触媒を使用する。この活性を阻害する要因の一つがカーボン析出((carbon formation)である。カーボンは炭化水素の熱分解の結果生成し、触媒表面の細孔を塞ぐために触媒の活性を低下させる。その反応を抑制するためにはS/Cを2.0以上にする必要がある。
また、カーボン析出を抑制するもう一つの方法はH2の添加である。そこで実際のプラントでは脱硫も考慮して原料天然ガスに2~5%程度の水素を加えている。