1.3 原子バランスの組み込み
物質収支計算表にC (炭素) H (水素) および O (酸素)の原子バランスと相変化の情報を組み込みます。
原子バランスの組み込みは、次回に説明する水蒸気改質反応を考慮した物質収支計算に必要となります。また、原子バランスをチェックすることで物質収支計算全体のチェックにも繋がります。「原子バランスを考慮した物質収支計算」を参考にしてください。
原子バランスを計算するために各組成における原子の数を入力します。ここで考慮すべき原子として、C(炭素)、H(水素)、O(酸素)、N(窒素)が最低限必要で、それ以外にS(イオウ)やCl(塩素)などを必要に応じて加えます。この組成ごとの原子数は物質収支で必ず使用しますので、別のExceファイルに登録しておき、必要に応じてリンクさせると便利です。
ただし、原子バランスを計算する場合、以下の内容を取り決めておきます。
- 原子バランスは各組成の分子量欄の右側に挿入します。
- 便宜上、H(水素)は2Hを単位とします。
- 各ストリームについての計算結果を表中の50行目~55行目に挿入します。
その計算結果の一部を下表に示しました。例えば、ストリーム"0100"の天然ガス(NG feed)とストリーム"0400"のスチーム(Reforming Steam)の原子バランスは以下のようになっており、流量として"kmol/h"とそれに分子量を乗じた"kg/h"を表示しています。
原子 | 質量 | NG feed | Steam | ||
kmol/hr | kg/hr | kmol/hr | kg/hr | ||
C | 12.011 | 1000.0 | 12011 | 0.0 | 0 |
H2 | 2.016 | 2000.0 | 4032 | 3000.0 | 6048 |
O | 16.000 | 0.0 | 0 | 3000.0 | 47999 |
1.4 気液分離
物質収支計算では気液混相のストリームから液体を分離する操作が必要となります。そこで気液(Vapor & Liquid)両方の流量を表示する欄を準備します。
Excel版のシート"GasBal&0.2"の27行目~44行目が相当します。
天然ガス(NG feed)もスチーム(Reforming Steam)も気相なので、液相部分の流量は全て"0"を入力しています。
1.5 ストリームの合流(Addstream)
天然ガス(NG feed)とスチーム(Reforming Steam)は合流して水蒸気改質炉に流入しますので、物質収支表の最右側に合流(Addstream)の列を追加しました。ここではそれぞれの組成の加算結果を示しています。
Excel版のシート"GasBal&0.2"の14列目と15列目が相当します。
これらの取り決めをもとに物質収支表を追加変更しました。そのExcel版をダウンロードできるようにしましたので、興味ある人はクリックしてみて下さい。
- 第1章 物質収支の計算
- 1.1 設計基本
- 1.2 物質収支計算ツールの準備
- 1.3 原子バランスの組み込み
- 1.4 気液分離
- 1.5 ストリームの合流(Addstream)
- 1.6 平衡定数の計算
- 1.7 平衡定数近似式の確定
- 1.8 平衡定数Kと圧平衡定数Kp
- 1.9 水蒸気改質炉出口組成計算
- 1.10 凝縮水分離とPSA水素精製
- 1.11 改質条件とCO転化条件と水素回収率への影響
- 第2章 熱収支の計算
- 2.1 熱収支計算の基礎
- 2.2 熱収支計算表の作成
- 2.3 ガス系の加熱と冷却
- 2.4 水蒸気改質炉の物質熱収支
- 2.5 予熱空気と水蒸気改質炉
- 2.6 燃焼系熱回収とスチーム発生
- 2.7 改質炉対流部プロセス設計
- 第3章 容器の設計
- 3.1 容器の種類
- 3.2 貯蔵タンク
- 3.3 分離器
- 第4章 回転機の設計
- 4.1 回転機の基礎
- 4.2 ポンプの設計
- 4.2.1 ポンプの種類と選定
- 4.2.2 ポンプのデータシート
- 4.2.2 ポンプのデータシート(流量について)
- 4.2.2 ポンプのデータシート(揚程について)
- 4.3 遠心ポンプの設計
- 4.3.1 遠心ポンプ効率の推定
- 4.3.2 遠心ポンプのNPSH
- 4.3.3 遠心ポンプのプロセス計算
- 第5章 水蒸気改質炉設計
- 5.1 改質管の設計
- 5.1.1 改質管とは
- 5.1.2 改質管の材料
- 5.1.3 Larson-Miller Parameter(LMP)
- 5.1.4 改質管の肉厚計算
- 5.2 水蒸気改質炉対流部の設計
- 5.2.1 伝熱計算
- 5.2.2 スタートアップ時の挙動
- 5.3 運転停止と水蒸気改質炉の設計
- 5.3.1 運転停止の種類
- 5.3.2 緊急停止における水蒸気改質炉
- 5.3.3 対流部熱交換器のクリープ破断
- 5.4 安全停止と改質炉設計
- 第6章 熱交換器の設計
- 6.1 熱交換器とプロセス設計
- 6.1.1 熱交換器性能とその影響
- 6.1.2 熱交換器のプロセスデータ
- 6.2 熱交換器と物性
- 6.2.1 凝縮と物性
- 6.2.2 凝縮曲線の作り方
- 6.2.3 凝縮曲線と熱交換器設計
- 6.2.4 エンタルピーの計算
- 6.2.5 凝縮熱伝達と有機溶剤
- 6.2.6 凝縮熱伝達と不凝縮ガスの影響
- 6.2.7 熱伝達と粘度の影響
- 6.2.8 熱伝達と材料の影響
- 6.3 熱交換器の選定
- 6.3.1 熱交換器の分類と種類
- 6.3.2 シェルとチューブ
- 6.3.3 熱交換器の用途とTEMA型式
- 第7章 計装制御
- 4.1 FLPT
- 4.2 圧力制御
- 4.2.1 化学プラントにおける圧力制御
- 4.2.2 圧縮機吸込側の圧力制御システム
- 4.2.3 圧縮機吸込側の圧力調節弁の容量
- 4.2.4 圧力上昇の要因
- 4.2.5 Closed outlet