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基本設計を開始する際の出発点がプロセス設計です。化学工学についてある程度知っており、プロセス設計を学びたい方を対象としています。「プロセス設計の実務」はプロセス設計への実務編としてもご利用下さい。

プロセスエンジニアリングの計算ルール

ガスの圧力損失計算液体の圧力損失計算水スチームのフラッシュ計算縦型円筒容器の容量計算 前のページへ
ガス放出の必要時間液体ドレンの必要時間圧縮機の軸馬力計算ポンプの軸馬力計算 次のページへ

1.10 凝縮水分離とPSA水素精製

実際の水素プラントでは、水蒸気改質炉を出た改質ガスはCO転化工程に導入されてさらに水素量を増し、廃熱回収工程で高温高圧のスチームや高温のボイラ給水を作り、その後冷却器で常温まで冷却されます。しかしCO転化および廃熱回収を議論するためには熱収支計算が必要となりますので、ここでは省略します。

改質ガスを冷却すると水分の一部が凝縮するので、機械的に分離することが出来ます。この役割を果たしているのが気液分離槽あるいは気液セパレータ(separator)です。ここでどの程度の水分が凝縮し分離出来るかは、ドルトンの分圧の法則から計算することが出来ます。
水分以外のドライガス量をDG(kmol/h)とし、水分の全体量をH2Ototal(kmol/h)とします。分離槽の圧力と温度をPtotalおよびT、分離槽温度における水の蒸気圧をVpとします。すると、ドライガスに同伴する水分量(H2Ovap)と凝縮水(H2Oliq)は次のように計算出来ます。

H2Ovap=DG×Vp/(Ptotal-Vp)
H2Oliq =H2Ototal-H2Ovap

使用する水の蒸気圧は一般的に温度の関数で表現され、ここでは ”Chemical Properties Handbook” の推算式を使用します。ただし、logは常用対数を意味していますので注意して下さい。

logVp =29.8605-3.1522E+03/T-7.3037E+00×logT+2.4247E-09×T+1.8090E-06×T^2

その後、改質ガスをPSA(pressure swing adsorption)に導入し、純度の高い水素ガスを製造します。
PSAは吸着剤を充填した複数の容器内で、加圧減圧を繰り返すことによりガスの吸着脱着を行うことで高純度のガスを得る技術で、例えばUOPのPolybed PSA Systemが良く知られています。

水素PSAの性能として把握すべき項目には以下の3つがあります。

  1. 水素純度:製品ガス中の水素ガス濃度(mol%)
  2. 不純物濃度:CO+CO2濃度(ppm)
  3. 水素回収率:原料ガス中の水素量と製品中の水素量の比率


これ以外にも製品水素ガスの圧力や、残ガスの圧力とその流量(濃度)変動などをPSAの性能として挙げることが出来ます。ここでは以下のように設定しました。

  1. 水素純度:99.999mol%
  2. 不純物濃度:CO+CO2濃度<10ppm
  3. 水素回収率:85%
  4. 残ガス圧力:0.03MPa


今回作成した物質収支計算表(version0.4)は、前回(version0.3)に比べさらに使いやすいように工夫をしております。その内容も含め変更点を以下に示します。

  1. Refomer下流に気液分離槽(Separator)とPSAを追加
  2. 気液分離槽にて凝縮水を分離する機能を付加
  3. PSAにて製品水素(Product H2)と残ガス(Off gas)を分離する機能を追加(表2に示す)
  4. Streamの圧力温度を表にまとめて見やすくし、計算表中の圧力と温度の自動入力機能を付加(表1に示す)
  5. 気液分離に使用する水の蒸気圧計算を計算表に追加


また、前回と同様に物質収支計算表(Excel版)をダウンロードできるようにしましたのでご利用下さい。ダウンロードする LinkIcon


PSAと膜分離

PSAも膜分離も水素を含むガスから水素を分離する方法です。ただし、この両者における性能はその原理の違いから大きく違っています。例えば、原料ガス圧力を20~35barとし水素濃度を75%に設定し、性能を比較しますと、

PSA方式:水素純度は99.9%以上で99.999%も可能、回収された水素の圧力は原料ガス圧力にほぼ等しいが、一般には残ガス圧力は0.3bar水素回収率は80~90%

膜分離方式:水素純度は90~99%程度で、この純度では回収された水素圧力は原料ガス圧力の15~20%水素回収率は80%

特に分離膜の性能は原料ガスの圧力や水素濃度により大きく変わってきますので、計算するなりメーカーと相談して決めるのが間違いないところ。