ここではガス化とガス化に隣接して設置されるガス精製について説明していきます。
ガス精製は多くの化学プロセスで採用されている重要な技術ですが、ガスの流量や組成、あるいは不純物の種類や濃度により多くのガス精製技術が開発されています。そのため内容が多岐にわたっていますので、どこまで説明できるか分かりませんが、まずスタートしてみます。
参考書として「GAS PURIFICATION fifth edition written by Arthur Kohl & Richard Nielsen」を使用しています。

1.2 物質収支
1.2.4 制御システムと化学反応を伴う物質収支

化学反応を伴う系における制御システムについて考えてみましょう。
制御システムの目的は、対象となる系の運転を安定でかつ適切に保つことにより、設定された原料から設定された製品を生産することを目的としています。
この制御システムを構築するためには化学反応に関与する項目を全て洗い出し、その中から影響が大と思われる項目をピックアップします。具体的には化学反応式に関与するパラメータ、つまり、反応式を構成する反応物(原料)と生成物(製品)が対象になります。これ以外に基本的なパラメータ、つまり、圧力と温度を加えます。また、化学反応中に熱を加えたり逆に熱を奪って反応温度を一定にする必要がありますので、エネルギーも対象項目になります。
具体的に今まで例題として扱ってきた”人工光合成(光合成の森にアクセスします)”を対象に考えます。下記に示す化学反応式から項目を洗い出してみましょう。なお、化学反応式では反応物である二酸化炭素と水からグルコース(ブドウ糖)と水、それに酸素が生成され、その反応を継続させるために光エネルギーを付加しています。

6CO2+12H2O+光エネルギー→C6H12O6+6H2O+6O2

項目を洗い出すために下表の”制御システム構成表”を作成します。この表では項目を”反応物&生成物”と”温度および圧力”と”エネルギー”に分けます。表の右欄に”制御変数”を設け、そこに制御されるパラメータを記入します。また”操作変数”を設けますが、そこには制御目的を達成するために操作されるパラメータあるいは方法手段を記載します。ただし、反応経路や二次反応など、詳細がわかっていませんので簡略化しています。

大項目 項目 制御変数 操作変数
反応物&生成物 二酸化炭素 流量 流量
流量 流量
酸素 流量 ---
グルコース+水 流量 反応器液面高さ
温度 温度 反応器温度 スチーム流量
圧力 圧力 反応器圧力 酸素流量
エネルギー 光度 光度

注意すべき点としては、

  • 生成物である酸素の流量は制御変数の一つですが、システムの自由度を考慮して制御対象の一つとはしませんので操作変数はブランクとしました。
  • 光の強さ(光度)を変えることで化学反応の進行が変化し、そのために温度変化(エネルギーは最終的には熱に変わる)を伴いますが、表にはそこまで考慮していません。

最終的に下図のような制御システムを構築致しました。このシステムの特徴を以下に示します。

  • 原料である二酸化炭素と水はそれぞれの流量を検知して制御します。
  • 常時、反応器圧力を700kPa(約7気圧)に保つように、生成した酸素流量を制御弁で操作しながら制御します。
  • 反応器内温をグルコースの”溶解温度+余裕”(約160℃に設定)になるように、反応器ジャケットに供給するスチームの流量で制御します。
  • 反応器の液面高さを検知して一定にすることで、生成物であるグルコース+水の流量がコンスタントになるように制御します。

最後の反応器の液面制御は、「入ってくる水と出て行くグルコース+水の流量差が一定であれば反応器内の液面は一定の高さになる」ことを利用しています。また、反応器圧力を検知して酸素流量を制御していますが、これも入ってくる二酸化炭素と生成する酸素の量比が一定になるようにしています。
両者とも原料である水と二酸化炭素の供給量の変動を見越して、最終的に流量差や量比を一定にするように制御しています。

さらに精度良く制御したいのであれば、二酸化炭素と水のモル比率を検知して、それが一定になるように制御することも可能です。

このように制御システムは、反応の物質収支および熱収支がずれないようにするのが目的です。

化学工学の基礎(中断)
序章 化学工学とは何か
化学工学の特徴
化学工学と化学工業(その発展と今後)
化学工学と化学プロセス
化学工学と化学プロセス(原料と製品)
化学工学とプラント設計(化学プラントと機械プラント)
化学工学とプラント設計(化学工学の内容)
第1章 化学工学入門
1.1 化学工学の基本コンセプト
1.2 物質収支(液体)
1.2.1 物質収支(液体)続き
1.2.2 物質収支(気体)
1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支
1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支(続き)
1.2.4 制御システムと化学反応を伴う物質収支
1.3 熱収支とエネルギー収支
1.3.1 単位操作と運転条件
1.3.2 熱収支とエネルギー収支の計算
1.4 流動
1.4.1 流動と拡散
第2章 化学プラント
2.1 化学プラント建設計画
2.1.1 経営計画
2.1.2 企業化調査
2.1.3 市場調査
2.1.4 工場立地調査
2.1.5 技術検討
2.1.6 建設費推算
2.2 経済性検討
2.2.1 経済性の指標
2.2.2 回収期間
2.3 建設プロジェクト
2.3.1 建設プロジェクトの発足
2.3.2 プロジェクトチーム
第3章 化学プラント材料
3.1 化学プラントと材料
3.1.1 材料分類と材料選定
3.1.2 炭素鋼
第4章 計装制御
4.1 FLPT
4.2 圧力制御
4.2.1 化学プラントにおける圧力制御
4.2.2 圧縮機吸込側の圧力制御システム
4.2.3 圧縮機吸込側の圧力調節弁の容量
4.2.4 圧力上昇の要因
4.2.5 Closed outlet

制御システムとプロセス制御

プロセスシステムを対象とした制御をプロセス制御と言いますが、その中にはフィードバック制御とフィードフォワード制御があります。中でもフィードバック制御は化学プラントでしばしば使われるもので、そこで使用されている用語について説明致しましょう。

  1. 制御対象:例えば人工光合成反応器とそのシステムなど。
  2. 検出端あるいは検出部:一般にはセンサーとも呼ばれ、測定した値を電気信号などに変換する機器。例えば流量を制御しようとするとオリフィスが検出端として用いられる。
  3. 伝送器:一般にはトランスミッターと呼ばれ、例えば液面制御では液面計センサーからのレベル変動を計装空気圧力変動に変換。
  4. 操作部:アクチュエータとも呼ばれる。代表的なのが調節弁、コントロールバルブである。圧縮機ではガバナーがこれに対応する。
  5. 調節器:一般にはコントローラーと呼ばれており、現在ではコンピューターがコントローラーを管理しており、運転者はコンピューターを通してシステムを制御している。運転員が直接コントローラーを操作する場合にはマニュアルコントロールあるいは手動制御と呼ばれ、その逆はオートコントロールあるいは自動制御と呼ばれる。
  6. 外乱:配管圧損の突然の変動がもたらす流量変動や、加熱器を原因とする温度変動など。