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化学工学はプロセス設計の基本となる工学で、原料から製品を作るためのものの流れ(狭義のプロセス)を具象化するために考えられた工学です。

化学工学を確立することで、以下の作業が可能となりました。

  1. 原料から製品を作るための手順(工程)を策定する。
  2. 工程に必要な機能を明らかにする。
  3. 機能を有する装置や機器を開発あるいは選択する。

工業的に生産されている化学物質は約10万種類あり、それぞれの生産プロセスに必要な装置や機器を1から設計することは限られた時間と経済的な面からあり得ないことです。

そこで化学プラントに共通する機能を抽出し、機能に係わる基礎理論と対応する装置の設計手法を決めました。それが化学工学の基本科目と応用科目です。

基本科目では化学や物理化学などの基本理論や現象を学習し、応用科目では化学機械の設計方法やプラント建設に係わる経済性評価を学習します。

化学工学の基礎と応用化学工学の基礎と応用
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1.2 物質収支
1.2.4 制御システムと化学反応を伴う物質収支

化学反応を伴う系における制御システムについて考えてみましょう。
制御システムの目的は、対象となる系の運転を安定でかつ適切に保つことにより、設定された原料から設定された製品を生産することを目的としています。
この制御システムを構築するためには化学反応に関与する項目を全て洗い出し、その中から影響が大と思われる項目をピックアップします。具体的には化学反応式に関与するパラメータ、つまり、反応式を構成する反応物(原料)と生成物(製品)が対象になります。これ以外に基本的なパラメータ、つまり、圧力と温度を加えます。また、化学反応中に熱を加えたり逆に熱を奪って反応温度を一定にする必要がありますので、エネルギーも対象項目になります。
具体的に今まで例題として扱ってきた”人工光合成(光合成の森にアクセスします)”を対象に考えます。下記に示す化学反応式から項目を洗い出してみましょう。なお、化学反応式では反応物である二酸化炭素と水からグルコース(ブドウ糖)と水、それに酸素が生成され、その反応を継続させるために光エネルギーを付加しています。

6CO2+12H2O+光エネルギー→C6H12O6+6H2O+6O2

項目を洗い出すために下表の”制御システム構成表”を作成します。この表では項目を”反応物&生成物”と”温度および圧力”と”エネルギー”に分けます。表の右欄に”制御変数”を設け、そこに制御されるパラメータを記入します。また”操作変数”を設けますが、そこには制御目的を達成するために操作されるパラメータあるいは方法手段を記載します。ただし、反応経路や二次反応など、詳細がわかっていませんので簡略化しています。

大項目 項目 制御変数 操作変数
反応物と生成物    二酸化炭素 CO2 流量 流量
水 H2O 流量 流量
酸素 O2 流量  
グルコース+水 流量 反応器液面高さ
温度 温度

反応器温度

スチーム流量
圧力 圧力

反応器圧力

酸素流量

エネルギー

光度

光度



注意すべき点としては、
  • 生成物である酸素の流量は制御変数の一つですが、システムの自由度を考慮して制御対象の一つとはしませんので操作変数はブランクとしました。
  • 光の強さ(光度)を変えることで化学反応の進行が変化し、そのために温度変化(エネルギーは最終的には熱に変わる)を伴いますが、表にはそこまで考慮していません。

最終的に下図のような制御システムを構築致しました。このシステムの特徴を以下に示します。

  • 原料である二酸化炭素と水はそれぞれの流量を検知して制御します。
  • 常時、反応器圧力を700kPa(約7気圧)に保つように、生成した酸素流量を制御弁で操作しながら制御します。
  • 反応器内温をグルコースの”溶解温度+余裕”(約160℃に設定)になるように、反応器ジャケットに供給するスチームの流量で制御します。
  • 反応器の液面高さを検知して一定にすることで、生成物であるグルコース+水の流量がコンスタントになるように制御します。

最後の反応器の液面制御は、「入ってくる水と出て行くグルコース+水の流量差が一定であれば反応器内の液面は一定の高さになる」ことを利用しています。また、反応器圧力を検知して酸素流量を制御していますが、これも入ってくる二酸化炭素と生成する酸素の量比が一定になるようにしています。
両者とも原料である水と二酸化炭素の供給量の変動を見越して、最終的に流量差や量比を一定にするように制御しています。
さらに精度良く制御したいのであれば、二酸化炭素と水のモル比率を検知して、それが一定になるように制御することも可能です。
このように制御システムは、反応の物質収支および熱収支がずれないようにするのが目的です。

制御システムとプロセス制御

プロセスシステムを対象とした制御をプロセス制御と言いますが、その中にはフィードバック制御とフィードフォワード制御があります。中でもフィードバック制御は化学プラントでしばしば使われるもので、そこで使用されている用語について説明致しましょう。

  1. 制御対象:例えば人工光合成反応器とそのシステムなど。
  2. 検出端あるいは検出部:一般にはセンサーとも呼ばれ、測定した値を電気信号などに変換する機器。例えば流量を制御しようとするとオリフィスが検出端として用いられる。
  3. 伝送器:一般にはトランスミッターと呼ばれ、例えば液面制御では液面計センサーからのレベル変動を計装空気圧力変動に変換。
  4. 操作部:アクチュエータとも呼ばれる。代表的なのが調節弁、コントロールバルブである。圧縮機ではガバナーがこれに対応する。
  5. 調節器:一般にはコントローラーと呼ばれており、現在ではコンピューターがコントローラーを管理しており、運転者はコンピューターを通してシステムを制御している。運転員が直接コントローラーを操作する場合にはマニュアルコントロールあるいは手動制御と呼ばれ、その逆はオートコントロールあるいは自動制御と呼ばれる。
  6. 外乱:配管圧損の突然の変動がもたらす流量変動や、加熱器を原因とする温度変動など。