1.2 物質収支
1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支(続き)
前回作成した表をもとに原子バランスを計算してみましょう。まず、基本の化学反応式を再確認してみます。つまり、二酸化炭素と水を原料に光エネルギーを付加してグルコースと水、そして酸素を作る反応を下記に示します。
6CO2+12H2O+光エネルギー→C6H12O6+6H2O+6O2
原料と製品を炭素原子(C)と酸素原子(O)および水素分子(H2)に分けてみます。
CO2→1*C+2*O
H2O→1*H2+1*O
C6H12O6→6*C+6*H2+6*O
O2→2*O
組成 | 6CO2 + 12H2O | ||
原子 | C | H2 | O |
6*CO2 | 6 * 1 | 0 | 6 * 2 |
12*H2O | 0 | 12 * 1 | 12 * 1 |
合計 | 6 | 12 | 24 |
組成 | C6H12O6 + 6H2 + 6O2 | ||
原子 | C | H2 | O |
C6H12O6 | 1 * 6 | 1 * 6 | 1 * 6 |
6*H2O | 0 | 6 * 1 | 6 * 1 |
6*O2 | 0 | 0 | 6 * 2 |
合計 | 6 | 12 | 24 |
これにより原子数あるいは分子数でもバランスしていることがわかるでしょう。
この原子バランスの考え方を参考にして、グルコース(C6H12O6)が発酵してエタノール(C2H5OH)と二酸化炭素(CO2)を生成しますが、その時のエタノールと二酸化炭素の比率を求めてみましょう。グルコース(C6H12O6)中の炭素原子、水素分子および酸素原子数はいずれも6となっています。
このグルコース(C6H12O6)1モル中の炭素原子数は6ですから、エタノール(C2H5OH)と二酸化炭素(CO2)の炭素原子合計のモル数も6になります。そうすると考えられるエタノールと二酸化炭素の比率は以下の組み合わせとなります。
- エタノール:二酸化炭素=1*(C2H5OH):4*(CO2)→炭素原子数2+4=6
- エタノール:二酸化炭素=2*(C2H5OH):2*(CO2)→炭素原子数4+2=6
- エタノール:二酸化炭素=3*(C2H5OH):0*(CO2)→炭素原子数6+0=6
組成 | 分子量 | ケース1 | ケース2 | ||||
原子 | - | C | H2 | O | C | H2 | O |
C2H5OH | 46.07 | 2 * 1 | 3 * 1 | 1 * 1 | 2 * 2 | 3 * 2 | 1 * 2 |
CO2 | 44.01 | 1 * 4 | 0 | 2 * 4 | 1 * 2 | 0 | 2 * 2 |
合計 | 6 | 3 | 9 | 6 | 6 | 6 |
この結果、発酵して得られるエタノールと二酸化炭素中の炭素原子、水素分子および酸素原子数がいずれも6になるのはケース2であり、エタノールと二酸化炭素の比率は 2:2になることがわかりました。つまり、
C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2
- 序章 化学工学とは何か
- 化学工学の特徴
- 化学工学と化学工業(その発展と今後)
- 化学工学と化学プロセス
- 化学工学と化学プロセス(原料と製品)
- 化学工学とプラント設計(化学プラントと機械プラント)
- 化学工学とプラント設計(化学工学の内容)
- 第1章 化学工学入門
- 1.1 化学工学の基本コンセプト
- 1.2 物質収支(液体)
- 1.2.1 物質収支(液体)続き
- 1.2.2 物質収支(気体)
- 1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支
- 1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支(続き)
- 1.2.4 制御システムと化学反応を伴う物質収支
- 1.3 熱収支とエネルギー収支
- 1.3.1 単位操作と運転条件
- 1.3.2 熱収支とエネルギー収支の計算
- 1.4 流動
- 1.4.1 流動と拡散