化学工学とは何か
化学工学と化学プロセス
原料と製品
化学プロセスの一番目の因子は原料と製品です。化学反応においては反応物と生成物が対応し、化学プロセスを構築するためには仕様を決める必要があります。
仕様とは、原料や製品の種類や組成、純度や不純物などの品質、消費量あるいは生産量、供給時あるいは払出時の温度圧力など。
光合成でも説明しましたように、光合成では原料は”水と二酸化炭素”、製品は”酸素とグルコース”ですから、次図で示す反応式が成立します。
ここで、a,b,c,d はそれぞれの係数で、ここでは未知数としています。この係数は炭素(carbon)、水素(hydrogen)および酸素(oxygen)の反応前後の合計モル数を計算することで求めることが出来ます。なお、式の係数の数値と、( )内は分子量を示しています。
この結果、次図に示しますように、a = 6、b = 6、c = 1、d = 6 となります。
また、分子量から反応前後の質量を計算しますと同じ値となりますので、質量保存則が成立していることがお分かりになることでしょう。
この関係から原料あるいは製品のどちらかの量が設定されれば、もう片方の量を求めることが出来ます。例えば、グルコースの生産量を日産10tonとしますと、グルコースの分子量180から 10,000kg/day/(180kg/kmol) = 55.56kmol/dayとなります。そこで反応式のそれぞれの係数から酸素の生産量と原料の消費量を求めることが出来ます。
二酸化炭素消費量 = 6*55.56kmol/day = 6*55.56*44kg/day = 14,667kg/day
水消費量 = 6*55.56kmol/day = 6*55.56*18kg/day = 6,000kg/day
酸素生産量 = 6*55.56kmol/day = 6*55.56*32kg/day = 10,667kg/day
また、二酸化炭素と酸素は気体ですから、[Nm3]で量を計算しますと、
二酸化炭素消費量 = 6*55.56kmol/day = 6*55.56*22.414Nm3/day = 7,471Nm3/day
酸素生産量 = 6*55.56kmol/day = 6*55.56*22.414Nm3/day = 7,471Nm3/day
となり、消費した二酸化炭素と同量の酸素が大気中に放出されることがお分かりになるでしょう。
次回に続く・・・。
- 序章 化学工学とは何か
- 化学工学の特徴
- 化学工学と化学工業(その発展と今後)
- 化学工学と化学プロセス
- 化学工学と化学プロセス(原料と製品)
- 化学工学とプラント設計(化学プラントと機械プラント)
- 化学工学とプラント設計(化学工学の内容)
- 第1章 化学工学入門
- 1.1 化学工学の基本コンセプト
- 1.2 物質収支(液体)
- 1.2.1 物質収支(液体)続き
- 1.2.2 物質収支(気体)
- 1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支
- 1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支(続き)
- 1.2.4 制御システムと化学反応を伴う物質収支
- 1.3 熱収支とエネルギー収支
- 1.3.1 単位操作と運転条件
- 1.3.2 熱収支とエネルギー収支の計算
- 1.4 流動
- 1.4.1 流動と拡散