ケミカルエンジニアリング、基本コンセプト、物質収支、熱収支、エネルギー収支、平衡、熱流動、経済性評価

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この”良くわかるケミカルエンジニアリング”は、ケミカルエンジニアではない他部門のエンジニアを対象にした入門編です。既掲載の”プロセス設計の実務”より平易に基本的な事項を含めて書いています。プラント関係の業務に携わっているエンジニアを対象にしています。

ケミカルエンジニアリングを勉強したい人のための技術専門書

化学工学概論 新版

昭和19年に初版発行され昭和50年代まで出版された息の長い教科書。現在は絶版ですが、古本として幾つか市場に出回っている。

化学機械の理論と計算 第2版

昭和24年に初版出版され平成14年に第20刷となった化学工学の名著。新本も入手できる。

Excelで気軽に化学工学

化学工学会機関誌「化学工学」で連載された化工計算の実際を集大成したもの。Excelで作成された計算例があり即戦力になる。

化学工学―解説と演習

最近の化学工学の理論と実践を整理したもので、例題も多く掲載されている。多少、化学工学の知識がある人向け。

1. ケミカルエンジニアリング入門

1.1 ケミカルエンジニアリングの基本コンセプト

ケミカルエンジニアリングは化学プラントを対象とした工学手法であり、そのために他のエンジニアリングに比べ内容がより具体的で実務に適しています。ですから、他のエンジニアリングを専攻したエンジニアでも、物理や化学などの一般的な知識があれば、ケミカルエンジニアリングを一通り理解することはそれほど難しいことではありません。
ただし、ケミカルエンジニアリング特有の基本項目、つまり、

  1. 物質収支
  2. 熱収支あるいはエネルギー収支
  3. 平衡
  4. 熱流動
  5. 経済評価

については改めて学習する必要があります。

この5つの項目は1944年から1947年に掛けてTexas A&M Universityにて化学工学を教えていたChalmer G. Kirkbrideが提唱したもので、その際にまとめた教科書「Chemical Engineering Fundamentals」は世界各国の学校で使用されていました。後の1954年にAIChE(米国化学工学会)会長に選任されています。

確かに熱収支や熱流動に関しては、機械工学分野でも熱力学や流体工学として学んでいますが、細部に渡って見ますと内容は異なっています。どのように違っているかも含め、「物質収支」から順次説明していきましょう。

1.2 物質収支
1.2.1 物質収支(液体)

物質収支の基本原理は「質量保存則」です。つまり、ある限定された範囲と適切な時間内において入ってくる質量と出て行く質量は変わらないということです。ケミカルエンジニアリングの場合にはこの限定された範囲がケミカルプラントや工場であったり、装置や機械であったりしますが、範囲の大小は問いません。また、適切な時間内も1時間であったり1日であったりします。
具体的に説明しますと、図に示すように流量Faで液体が中央部のドラムに入り、ドラム底部から液体が流量Fbで配管内に入り、流量Fcで外部に流出するシステムを想定します。ここで、流量Faは一定としますが、Fbは一定とはなりません。それはドラム液面がドラムから流出する流量Fbと流入するFaとの関係で上下に動き、その液面変動がドラムから流出する液体流速を支配しますので流量Fbが時間的に変化するからです。
しかし、配管から流出する流量Fcは配管の長さが適当であれば、多少時間遅れが生じますが流量Fbにほぼ等しくなります。

すなわち図に示すように、

  1. 流量Fa>Fbであれば、ドラム液面は当初は上昇しますが、適当な時間後に液面は一定となります。液面が一定になれば流量Fbは流量Faに等しくなります。また、その間、ドラム内液量は増加します。
  2. 流量Fa<Fbであれば、ドラム液面は当初は下降しますが、適当な時間後に液面は一定となります。液面が一定になれば流量Fbは流量Faに等しくなります。ただし、その間、ドラム内液量は減少します。

つまり、ドラムが流入する液体と流出する液体とのバッファ(緩衝)となっており、流量Faが変動したとしても、”或る時間”が経過すれば流量Fb(Fc)は流量Faに等しくなるように自律的に変化しています。しかし、ケミカルプラントで”或る時間”まで待っていますと、その間に変動が大きくなったりして元に戻すまで苦労するだけでなく、連鎖的に影響が他の装置に波及してプラントにダメージを与えることがあります。そのために色々な制御システムが導入されています。これらも含めて基本設計を行うのがケミカルエンジニアリングです。

つまり、換言すれば、「ケミカルエンジニアリングの役目は物質収支が適正になるように(入りと出の質量が同じになるように)する」ことなのです。
さて、或る限られた時間内では本当に流入する質量と流出する質量は同じにするにはどうしたらよいのでしょうか?(この答えは次回に・・・。)

下線部の文章を変更いたしました。(2010/02/06)

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物質とMass

物質収支の英訳はmaterial balanceあるいはmass balanceですが、この”mass”にはどのような意味があるでしょうか。英和辞典を調べてみますと、

  1. 塊、集団、多数、大量
  2. 大部分
  3. 質量
  4. 一般大衆:mass mediaなど

しかし、”Mass”と頭文字を大文字にすると「ミサ」という意味になります。つまり、キリスト教における儀式で、場合によっては”mass”とも書かれることがあります。
なぜ、”mass”が「ミサ」なのか、逆に何故「質量」なのかは調査不十分でわかりませんが・・・。