ここではガス化とガス化に隣接して設置されるガス精製について説明していきます。
ガス精製は多くの化学プロセスで採用されている重要な技術ですが、ガスの流量や組成、あるいは不純物の種類や濃度により多くのガス精製技術が開発されています。そのため内容が多岐にわたっていますので、どこまで説明できるか分かりませんが、まずスタートしてみます。
参考書として「GAS PURIFICATION fifth edition written by Arthur Kohl & Richard Nielsen」を使用しています。

1.2 物質収支
1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支

今回は化学反応を伴う物質収支について説明します。例題として取り上げるのは”光合成”です。

光合成というと、皆さんは中学校や高校の「生物」で勉強したと思いますが、植物が光エネルギーを利用して水と二酸化炭素を材料にグルコース(ブドウ糖)を作り出すことで、人工的に光合成を使ってグルコースやデンプンなどを合成したという話は聞いたことがありません。しかし、最近では植物の光合成という一連の反応の中で、太陽光を使って水を分解し水素を取り出そうという試みがなされていますので、もしかしたら形を変えて光合成が成功するかも知れません。
そこで「反応を伴う物質収支」の例題として光合成を取り上げることにします。なお、人口光合成に興味を持たれる方は”光合成の森”にアクセスすると良いでしょう。

光合成の化学反応式を以下に示します。

6CO2+12H2O+光エネルギー→C6H12O6+6H2O+6O2

原料である二酸化炭素や生成する水と酸素は気体であり、原料として使用される水は植物の根から吸収されますので液体、そして生成するグルコースは常温で固体となっており、気体・液体・固体が介在する複雑な反応となっています。
そこで話を簡単にするために、反応温度をグルコースが溶解する温度(約140℃)以上の160℃とし、圧力は160℃の水の蒸気圧(約620kPa)より高い700kPa(約7気圧)と設定します。また、光合成を行うために必要な光エネルギーは特殊な電球を使用し、閉じられた容器内で反応が進行するとします。また、この反応は連続的に行われるものとしますので、原料である二酸化炭素や水ならびに触媒が連続的に容器内に供給され、生成した酸素は反応器上部から回収され、製品であるグルコースと水は液状にて容器から抜き出されるものとします。
その光合成システムを図に示します。なお、反応の進行上、容器は撹拌槽型式としました。


このシステムにおける物質収支を考えてみましょう。このような化学反応を伴う物質収支ではモル数をベースに考えると理解しやすいの、先ほどの化学反応式をもとに表を作ってみましょう。
表の作り方は最左欄に組成を表示し、その右側に分子量、さらにその右側に原料と製品(副産物の酸素も含む)のモル流量(kmol/hr)、そして最右欄二つに原料と製品の重量流量(kg/hr)を表示します。
例えば原料の一つであるH2Oは製品のグルコースモル流量を1kmol/hrとしますと、反応式から12倍を必要とします。そこで原料モル流量欄に12.0と記入します。また、製品中にはグルコースの6倍の水が生成されますので、これは製品モル量流欄に6.0と記入します。このようにして反応式に関わる全ての組成についてモル流量を記入します。
最後にモル流量と分子量を掛けて重量流量を計算し記入しますと表が出来上がります。
これを見るとわかるように、化学反応を伴う物質収支においても原料と製品のそれぞれの合計重量流量がバランス(互いに等しい)していることがわかります。

組成 分子量 原料 製品 原料 製品
単位 - kmol/hr kmol/hr kg/hr kg/hr
CO2 44.01 6.0 0.0 246.06 0.0
H2O 18.02 12.0 6.0 216.18 108.09
O2 32.00 0.0 6.0 0.0 191.99
C6H12O6 180.16 0.0 1.0 0.0 180.16
合計 - 18.0 13.0 480.24 480.24

最後に、もしグルコースを1日10トン作りたい場合に必要なCO2とH2O量は幾らになるでしょうか。その計算式と結果は、

C6H12O6 = 10,000[kg/day] = 10,000[kg]/24[hr/day] = 416.67[kg/hr]
CO2 = 246.06[kg/h]/180.16[kg/hr]*416.67[kg/hr] = 569.08[kg/hr]
H2O = 216.18[kg/h]/180.16[kg/hr]*416.67[kg/hr] = 499.98[kg/hr]



化学工学の基礎(中断)
序章 化学工学とは何か
化学工学の特徴
化学工学と化学工業(その発展と今後)
化学工学と化学プロセス
化学工学と化学プロセス(原料と製品)
化学工学とプラント設計(化学プラントと機械プラント)
化学工学とプラント設計(化学工学の内容)
第1章 化学工学入門
1.1 化学工学の基本コンセプト
1.2 物質収支(液体)
1.2.1 物質収支(液体)続き
1.2.2 物質収支(気体)
1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支
1.2.3 原子バランスと化学反応を伴う物質収支(続き)
1.2.4 制御システムと化学反応を伴う物質収支
1.3 熱収支とエネルギー収支
1.3.1 単位操作と運転条件
1.3.2 熱収支とエネルギー収支の計算
1.4 流動
1.4.1 流動と拡散
第2章 化学プラント
2.1 化学プラント建設計画
2.1.1 経営計画
2.1.2 企業化調査
2.1.3 市場調査
2.1.4 工場立地調査
2.1.5 技術検討
2.1.6 建設費推算
2.2 経済性検討
2.2.1 経済性の指標
2.2.2 回収期間
2.3 建設プロジェクト
2.3.1 建設プロジェクトの発足
2.3.2 プロジェクトチーム
第3章 化学プラント材料
3.1 化学プラントと材料
3.1.1 材料分類と材料選定
3.1.2 炭素鋼
第4章 計装制御
4.1 FLPT
4.2 圧力制御
4.2.1 化学プラントにおける圧力制御
4.2.2 圧縮機吸込側の圧力制御システム
4.2.3 圧縮機吸込側の圧力調節弁の容量
4.2.4 圧力上昇の要因
4.2.5 Closed outlet

モルとモル質量

1モル(mol)とは原子や分子などの粒子を約6×10^23(アボガドロ数)個、集めたまとまりを言う。1モル当たりの質量をモル質量(g/mol)といい、その値は原子量や分子量に等しくなる。
例えばH2Oを1モルの質量は18.02gであり、1キログラムモル(kmol)の質量は18.02kgとなる。化学プラントではこのkmolが規準の単位になることが多い。