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  手計算で物質収支を計算するためには・・・

原子バランスを考慮した物質収支の計算方法を説明します。 プロセスエンジニアにとって化学プラントの保証運転での重要業務は製品の仕様と生産量、および原単位を確認することです。
特に実際の原単位が保証値より上回っている場合には、顧客からのクレームの対象となるために。プラント全体の物質収支を計算して原単位をチェックする必要があります。



現在は高性能ノートパソコンとプロセスシミュレータにより、現場において容易にチェックすることが可能ですが、何らかのアクシデントの際には自分で計算することもないとは言えません。

このような時に「原子バランスを使用した物質収支の計算」を考慮してみてはどうでしょうか。

原子バランスを考慮した物質収支計算

水蒸気改質プロセスと化学反応式


例題として天然ガスを原料とした水蒸気改質法による水素プラントを考えます。
水蒸気改質法は、天然ガスなどの化石燃料をスチームにより水素を主成分とした合成ガスに改質する方法で、水素、メタノールあるいはアンモニア、そして現在では燃料電池などの製造設備に採用されています。
この水蒸気改質法における反応式は以下の二つで、前者がメタンの水蒸気改質反応、後者が一酸化炭素の転化反応と呼ばれています。

  1. CH4 + H2O = CO + 3H2
  2. CO + H2O = CO2 + H2

運転データの解析

このプラントの保証運転において、以下に示すような水蒸気改質炉周りの運転データが得られたとします。ここで、改質後のガスの組成が本当に正しいのかをチェックしてみたいと思います。

 Stream 物質 組成 流量
    mol% kmol/hr
Natural gas 天然ガス   CH4 100.0 1,000
Steam スチーム  H2O 100.0 3,400
Synthesis gas
合成ガス
    
 CH4           5  
 H2         73  
 CO         15  
 CO2           7  
 Total        100  


まず、水蒸気改質炉に供給される天然ガスとスチーム中の炭素(C)、水素(H2)および酸素(O)の量(モル数)を計算します。ただし、流量の単位は全て kmol/h です。

 Stream 物質 流量 C H2 O
    kmol/hr kmol/hr kmol/hr kmol/hr
Natural gas 天然ガス   CH4 1,000 1,000 2,000 0
Steam スチーム  H2O 3,400 0 3,400 3,400
合計    CH4+ H2O  4,400 1,000 5,400 3,400

H2およびOの一部は合成ガス中のH2Oに変換されますが、ガスクロ測定ではH2Oは冷却凝縮されて、他のガスと分離されますので濃度が分かりません。そのためにこのままでが合成ガス量が計算できないことになります。
そこで原子バランスの考え方が有効になってくるわけです。つまり、質量保存の法則から水蒸気改質炉に供給される炭素(C)、水素(H2)および酸素(O)の量は水蒸気改質後も変わらないので、炭素(C)に関して次式が成立します。

CO+CO2+CH4 = 1,000kmol/hr
CO =15/27×1,000 = 555.6kmol/hr
CO2 =7/27×1,000 = 259.3kmol/hr
CH4 =5/27×1,000 = 185.1kmol/hr

また合成ガス中の水素(H2)量は、合成ガス組成と供給される炭素(C)量を用いて以下のように計算することが出来ます。

H2 = 73/27×1,000 = 2703.7kmol/hr

これより、合成ガス中の合計水素(H2)量(モル数)と合計酸素(O)を求めますと以下のようになります。

 Stream 物質 流量 組成 C H2 O
    kmol/hr mol% kmol/hr kmol/hr kmol/hr
Synthesis gas
合成ガス


 CH4 185.1 5.00  185.1 370.3 0
 H2 2703.7  73.00 0 2703.7 0
 CO 555.6  15.00 555.6 0 555.6
 CO2 259.3 7.00  259.3 0 518.5
 Total 3703.7 100.00  1,000 3074.1 1074.1

よって、この合計水素(H2)と水蒸気改質炉に供給される水素(H2)合計量を比較し差を求めると、

⊿H2 = 5,400-3074.1=2325.9kmol/hr


また、合計酸素(O)と水蒸気改質炉に供給される酸素(O)合計量を比較し、差を求めると、

⊿O = 3,400-1074.1=2325.9kmol/hr


この⊿H2と⊿Oが合成ガス中に含まれているH2O、つまりスチーム量に相当します。つまり、合成ガスの組成と流量は以下のようになると考えられます。

 Stream 物質 流量 組成 C H2 O
    kmol/hr mol% kmol/hr kmol/hr kmol/hr
Synthesis gas
合成ガス


 CH4 185.1 5.00  185.1 370.3 0
 H2 2703.7  73.00 0 2703.7 0
 CO 555.6  15.00 555.6 0 555.6
 CO2 259.3 7.00  259.3 0 518.5
 Dry (G) 3703.7 100.0 1000.0 3074.1 1074.1
 H2O (S) 2325.9 S/G
0.628
0 2325.9 2325.9
 Total 6029.6   1000.0 5400.0 3400.0

この例では計算された合成ガス組成がガス分析結果と同じですが、このように合致することは現実的にはまれです。このような場合には分析結果だけでなく、計算結果を参考にして物質収支を求めていくことをお薦めします。ただし、バックチェックのために関連する反応平衡などを考慮することで、さらにより正確となりますが、これについてはまた別の機会にお話します。