1.4 圧縮機周りの設計条件
1.4.1 圧縮機と運転条件
圧縮機(遠心)システムを構成するために最低限必要な機器は吸込(ガス)冷却器、吸込(ガス)ドラムおよび圧縮機本体、それ以外に配管および計装機器です。
左からプロセスガス(process gas)が吸込(ガス)冷却器で冷却され、プロセスガスに含まれる水蒸気を冷却凝縮し、吸込(ガス)ドラムで水分を分離します。分離された水分はドレン(drain or condensate)として系外に排出されます。また水分を分離したプロセスガスはプロセスガス圧縮機に供給され所定の圧力まで昇圧されます。圧縮されたプロセスガスは下流のシステムに送られますが、一部のガスはプロセスガス圧縮機の運転を安定に保つために圧縮機の吸込側に戻されます。これを循環あるいはspill backと言っています。
この圧縮機システムの設計条件を決定する上で注意すべきことは、圧縮機の運転モードとその時の運転圧力の変化です。表1.4-1に圧縮機周りにおける運転条件を示しました。これによれば、圧縮機吸込側の圧力は1.80~1.85MPa(abs)、温度は38~85℃ですが、圧縮機吐出側の圧力は3.5MPa(abs)と高い圧力になっており、温度も、温度110℃と決して低い数値ではありません。
この運転圧力をもとに設計圧力を決定するわけですが、一般的なやり方(運転圧力×1.1 or 運転圧力+0.1MPa)で設定しますと以下のようになります。
- 吸込冷却器設計圧力:運転圧力(1.75MPaG)×1.1=1.925→1.95MPaG
- 吸込ドラム設計圧力:運転圧力(1.70MPaG)×1.1=1.87→1.90MPaG
- 圧縮機設計圧力:運転圧力(3.40MPaG)×1.1=3.74→3.75MPaG
ただし、設計圧力は小数点下二桁目を "0.00 or 0.05" として切り上げとします。
これで果たして正しいでしょうか?ヒントは、
圧縮機が停止した場合の圧力バランスはどのようになるのか?
次回は圧縮機停止における圧力変動について説明する予定です。
場所 | 圧力 | 温度 | 備考 |
単位 | MPa | deg.C | ---- |
吸込冷却器入口 | 1.85 | 85.0 | ---- |
吸込ドラム出口 | 1.80 | 35.0 | 圧縮機吸込 |
圧縮機出口 | 3.80 | 110.0 |
---- |
- 第1章 プロセス設計と安全設計
- 1.1 設計条件と安全設計
- 1.1.1 安全設計とは
- 1.1.2 設計条件の決め方
- 1.2 設計条件と運転モード
- 1.2.1 運転条件と運転状態
- 1.2.2 運転モードと運転時間
- 1.2.3 設計条件と運転時間
- 1.3 蒸留系運転と設計条件
- 1.3.1 蒸留系説明
- 1.3.2 運転条件の設定
- 1.3.3 設計条件の選定
- 1.3.4 設計条件と水運転
- 1.3.5 物性の違いと設計条件
- 1.3.6 安全弁の吹き出し温度
- 1.3.7 還流ポンプの設計圧力
- 1.3.8 蒸留塔凝縮器と最高運転条件
- 1.4 圧縮機周りの設計条件
- 1.4.1 圧縮機と運転条件
- 1.4.2 圧縮機停止における運転状況
- 1.4.3 プロセス制御システム
- 1.4.4 放出弁と圧力推移
- 1.4.5 圧力推移シミュレーション①
- 1.4.6 圧力推移シミュレーション②
- 第2章 ユーティリティー停止と安全設計
- 2.1 スチーム停止とスチームシステムの安全性
- 2.1.1 スチームシステム
- 2.1.2 スチーム停止による影響
- 2.2 スチーム停止とプロセススチーム
- 2.2.1 プロセススチーム
- 2.2.2 プロセススチームの確保
- 2.3 スチームソースと加熱源
- 2.3.1 スチームドラム
- 2.3.2 スチームドラムの保有熱量
- 2.4 加熱源としての水蒸気改質炉
- 2.4.1 水蒸気改質炉とプロセススチーム
- 2.4.2 改質管と改質触媒
- 2.4.3 プロセススチーム・ループ
- 2.4.4 計算結果と考察
- 第3章 停電と安全設計
- 3.1 停電とプラント
- 3.1.1 停電と電力供給
- 3.1.2 化学プラントにおける電力供給安定化
- 3.1.3 ディーゼルエンジン発電機の起動
- 3.2 緊急用発電装置停止
- 3.2.1 緊急用発電装置と連結機器
- 3.2.2 緊急用発電装置停止による影響