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用役設備の設計

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用役の種類と設備

用役(ユーティリティー)にはスチームや純水や冷却水、あるいは計装空気や窒素、そして電力があり、そのユーティリティーを供給したり回収するための専用の設備が必要です。これらをユーティリティー設備あるいは用役設備と言います。社会生活におけるインフラに相当します。

3. 冷却水設備(続き)

3.2 海水冷却循環システム

工業用水の供給が十分でない場合に、冷却水として海水を使用することがある。そのためには以下のような条件が必要となる。

  1. 海水の取得供給が容易である。
  2. 海水供給量が必要量を満足している。
  3. 海水温度が冷却水として適温度である。


この「海水の取得が容易である」ということは、例えば、”海岸近傍にプラント設備が建設予定されており、海水取水設備からの距離が適切である”とか、”海岸が遠浅でなく取水設備が海岸近くに設置できる”、あるいは”海水の供給配管がプラント設備近くまで敷設されている”などを含んでいる。

海水温度は水深によって異なるが、日本近海では表面温度が25~30℃(夏季)、水深100mで15~23℃、水深500mで5~15℃と下降する。


下図に海水を使用した冷却システムの一例を示す。この図には海水取水設備(Sea Water Intake)、海水放水路(Sea Water Discharge)、海水直接冷却システム(Sea Water Direct Cooling System)および海水間接冷却システム(Sea Water Indirect Cooling System)が含まれています。
それぞれの設備の構成と内容、および注意事項について表にまとめましたのでご覧下さい。

海水取水設備
海水を取水する設備で、カーテンウォール(深層取水設備)、取水口および海水循環ポンプなどから構成されている
付帯設備として鉄イオン注入装置や塩素注入装置が設置されることが多い。また、熱交換器チューブ内部の清掃のためにボールクリーニング(タプロゲ:Taprogge)装置を設置することもある。
海水放水路
使用済み海水の放出路。この図では海水直接冷却システムと海水間接冷却システムからの戻り海水が放出されている
海水温度は周辺より約数℃高くなって戻るので、周辺環境への悪化については十分検討する必要がある
海水直接冷却システム
海水ポンプ(Sea Water Pump)からの海水を直接熱交換器などに供給して使用するシステム
システム自体は簡単であるが、熱交換器に耐海水用材料を選定する必要がある
海水間接冷却システム
海水ポンプからの海水は間接冷却器(Indirect Cooler)に供給され、工業用水などの冷却水を冷却した後に放水路へ戻る。一方、間接冷却器で冷却された冷却水は熱交換器などに供給された後、冷却水循環ポンプで再度間接冷却器(Indirect Cooler)に供給される
間接冷却器が追加になること、供給される冷却水温度が海水に比べ約2~3℃高くなるので、熱交換器の伝熱面積が増大するが、耐海水用材料を使用しなくても良い

鉄イオン注入装置 : 海水による冷却管の腐食を防止するため復水器入口海水に微量の硫酸鉄(II)を注入して管内面に保護皮膜を形成する。

塩素注入装置 : 冷却管内にムラサキイガイなどの海生生物が付着・繁殖することにより、冷却効率の低下・圧損の増加・管の腐食などが発生するため、復水器入口海水に微量の塩素を注入して海生生物の繁殖を防止している。通常は海水を電気分解して次亜塩素酸を発生させる。

タプロゲ・ジャパンLinkIcon

海水腐食と材料選定

耐海水材料を選定する場合、海水の利用方法*1や海水環境により使用材料と防食法の要点が異なってくる。

*1 発電所、船舶、プロセスプラントなどの冷却水として無処理のまま常温で利用する場合と海水淡水化や製塩の原料として処理海水を高温で利用する場合


以下におおよその材料選定指針を示すが、詳細は材料メーカーなどに相談して、使用条件など個別に決めていくことをお奨めする。また、国内では原子力発電所で海水を冷却水として利用しており、多くの実績やトラブルを経験を保有しているので、割と簡単にネットでも調べられる。

炭素鋼、鋳鉄、樹脂被覆鋼、亜鉛めっき鋼、銅合金
海水取水配管やタンク
オーステナイト系ステンレス鋼SUS316。鋳鉄、青銅、キュプロニッケル、ニレジスト、モネルなど
ポンプなどの高流速なため異物の付着がない部位、SUS304系は使用しない
二相系ステンレス鋼(SUS329J1)、スーパステンレス鋼(SUS329J4) あるいはキュプロニッケル、チタン
熱交換器の伝熱管