水素の製造には・・・

水素は将来のエネルギーとして有望視されていますが、水素をどのように製造するかは色々議論が分かれているところです。水素の工業的製造法には、炭化水素を原料とした水蒸気改質や部分酸化、石炭のガス化、水の電気分解などがあります。


また、水素を原料としてアンモニア、塩酸、メタノール、高級アルコールなどが工業的に製造されています。

同じく、原油や食用油などの水素化にも使用されています。実験室では亜鉛に希硫酸を加えて作る方法が良く知られています。

水素

水の熱分解

水素は地球上では非常に不安定であり、そのほとんどが水として存在します。ですから、水素を製造する方法で、だれもが思いつく方法は水の熱分解でしょう。
ただし、この水を熱分解するためには3500℃まで加熱しなければならないので、もし水を原料として直接、水素を製造するためには以下の条件をクリアーしなければなりません。

  1. 3500℃という高温状態に移行するための加熱方法と加熱媒体
  2. その高温状態を外界から閉ざされた空間に長時間封じ込める方法と手段あるいは設備
  3. その高温雰囲気中に連続的に水を供給する方法と手段
  4. その高温雰囲気中から連続的に水素と酸素を別々に取り出す方法と手段
  5. 得られた高温(3500℃)の水素ガスを連続的に利用するための方法と手段(工業的に利用可能な温度まで冷却する必要がある)
  6. 同時に得られた高温酸素を連続的に利用するための方法と手段
  7. 得られた水素や酸素を貯蔵する方法や手段


特に、3500℃という高温に耐えられる材料は、現在まで開発されておらず、工業的には実用化は不可能であろう。

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水素の種製造方法

水素の製造について全般的に書かれている資料として、以下の二つを紹介します。

  1. 「水素製造技術の実用化可能性に関する調査研究」(平成13年度分野別技術戦略調査)報告書-NEDOの技術情報データーベース
  2. 「水素製造技術」(平成17年度特許流通支援チャート)-独立行政法人 工業所有権情報・研修館

ともに資料のダウンロードが可能です。この報告書の中には、多くの水素の製造方法が紹介されておりますので、参考のためにそれらを紹介します。

製造技術

特徴

関連技術

原料範囲

工業化の度合い

水蒸気改質法 水蒸気で炭化水素を改質し水素やCOを製造 脱硫触媒と水蒸気改質触媒を使用
PSAや膜分離法で水素を分離
天然ガスやナフサなどの軽質留分 数多くの実績あり
部分酸化法  酸素や空気などの酸化剤で水素やCOを製造 原料中に種々の不純物を含むためにガス精製工程が複雑 天然ガスから石油残渣まで広範囲の炭化水素 数多くの実績あり
石炭ガス化法 酸素や空気などの酸化剤で水素やCOを製造 石炭ガス化炉には移動床方式や流動床方式がある。カーボンが多いために脱CO2工程が重要ポイント。 石炭 数多くの実績あり
アルカリ水電解  KOH水溶液を電気分解し水素と酸素を得る。  20世紀初頭から商業化 KOH水溶液を純水に置き換える技術開発 数多くの実績あり
固体高分子膜法 固体高分子膜を利用した電解セルで水を電気分解し水素などを製造    水 開発中で工業化の可能性が大
高温水蒸気改質法 セラミックスなどの高温電解質を利用し水蒸気を電気分解し水素などを製造 高温雰囲気の確保が課題  水 開発中で工業化の可能性が大
光化学(光触媒) 半導体光触媒を利用し紫外線などを水に照射して水素などを製造 生産効率が課題か  水 開発中で工業化までには相当の時間がかかる
熱化学法 HIやHBrを介して総括的に見れば水の直接熱分解により水素などを製造 高温耐食材料の開発が必須だが、現状の材料科学の水準では経済性が出ない  水 開発中で工業化までには相当の時間がかかる

表中の工業化度は工業化の度合いと技術の信頼性を示すもので、筆者が開発に携わってきた経験などから決めております。その後、開発が進んで工業化への可能性が高まった場合には修正変更いたします。