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 プロセス設計の実務

プロセス設計の基本的な業務を、エタノール合成設備のプロセス設計を題材に説明しています。
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エタノール合成設備

プロセス設計に関する説明をより分かり易くするために、仮想的なプラントを設定しました。ここでは代替燃料として注目を浴びているエタノール合成設備のプロセス設計を通じて、プロセス設計の基本を学んでいきます。

原料を二酸化炭素(炭酸ガス)と水とします。ただし、誤解が無いように言っておきますが、二酸化炭素(炭酸ガス)と水から直接エタノールを作るプロセストは実用化されていません。あくまでも仮想プラントとしてご理解下さい。

8. 冷却負荷とスチーム発生

8.1 冷却負荷

熱収支計算をもとに必要なユーティリティーについて検討する。

このエタノール合成循環システムでの冷却負荷は、物質熱収支計算結果に示したように合成反応器での冷却負荷が49,504kW、合成反応器出口ガス冷却器での冷却負荷が43,688kWである。
この二つの冷却負荷は熱量的には同等であるが、プロセス側の温度が大きく異なる。つまり、合成反応器出口ガス冷却器での被冷却側(ガス)の温度は170℃~35℃であるが、合成管での被冷却側(ガス)の温度は175℃~200℃と高くなっている。ここでは以下の方針で冷却システムを設計する。

  1. 温度レベルが低い合成反応器出口ガス冷却器での冷却媒体を冷却水とする。
  2. 温度レベルが高い合成反応器での冷却媒体を加圧温水とする。


合成反応器出口ガス冷却器での冷却水量は次式で計算される。
ただし、冷却水温度は入口25℃、出口35℃に設定するので、必要な冷却水量は、

  • 冷却水量=冷却負荷÷(冷却水比熱×冷却水温度差)
  •       =43,688kW÷(4.184kJ/kg℃×10℃)
  •       =(43,688kW×3600kJ/h/kW)÷(4.184kJ/kg℃×10℃)
  •       =3,759ton/h

注:熱量の単位換算では熱化学で使用する1kcalth = 4.184kJを使用しています。ただし、"th"は"thermal"を意味しています。

8.2 発生スチームと合成管熱回収

発熱反応を伴う合成循環システムでは、反応を持続させるためには反応熱を適切な手段で除去する必要がある。そのために以下のような方式が採用される。

  1. クエンチ方式:加熱前の合成管供給ガスの一部を取り出し、合成反応器内部に直接供給して温度を制御する
  2. 熱交換器方式:合成反応器構造を熱交換器形式にして、適当な冷却媒体にて間接的にガス温度を制御する


クエンチ方式では反応熱を希釈するために熱回収は出来ないが、熱交換方式では冷却媒体を使用するので熱回収が可能となる。また、必要な触媒量もクエンチ方式に比べ少なくなる。そのために、このどちらを選択するかは、(合成管+触媒)のハードコストと熱回収されたエネルギーコストの両者を比較して決めることになる。
例えば、冷却媒体として加圧温水を選定し、蒸発させることで反応熱を回収するケースでは、発生スチーム量は簡単に計算できる。つまり、

  • 発生スチーム量=冷却負荷÷スチーム潜熱
  •           =(49,504kW×3600kJ/h/kW)÷2,113kJ/kg
  •           =83,342kg/h


つまり、毎時約83ton強のスチームが回収できる。ただし、スチームの条件を150℃飽和(圧力0.476MPa)にしているので、スチーム条件を変えた場合にはスチーム発生量は増減する。

8.3 スチームの利用形態

エタノール合成管で回収発生したスチームをどのように活用するかは、スチームシステム全体を考えて決める必要がある。一般的にスチームの利用形態は、

  1. プロセススチームとして利用する。例えば、水蒸気改質用スチーム
  2. 熱媒として利用する。例えば、加熱器や蒸留塔のリボイラなど
  3. スチームタービンの駆動用スチームとして利用


この中のどれを選ぶかは、発生スチームの圧力温度条件とそれぞれのニーズに依存する。

このエタノール合成プロセスでは、スチームをスチームタービンの駆動用として利用し、余剰となればプロセススチームあるいは蒸留塔のリボイラの熱源として利用し、徹底的な熱効率改善を目指す。

8.4 スチーム条件の設定

スチーム条件を設定する際に考慮すべき項目の一つはスチームタービンの駆動用スチームとしてのポテンシャル、つまり熱力学的なエンタルピー落差が十分にあるかどうかという点である。
これについてはメーカーのスチームタービンの仕様などを参考にして、駆動スチームとして利用価値があるかどうかを調べる必要がある。

それ以外に考慮すべきことは合成反応器の伝熱設計である。つまり、合成反応器の温度条件をもとにスチーム条件(温度圧力)を最適化する必要がある。
なぜならば、合成反応器の温度条件が175~200℃であれば、熱伝達を考えると発生できるスチームの温度条件はガス側温度より低い温度でなければならない。例えば、10~15℃程度低くすれば、スチーム温度は 200-10 = 190℃以下となる。これは次式を見れば理解できる。

  • Q(伝熱量) = A(伝熱面積)×U(総括伝熱係数)×ΔT(温度差 = ガス側-スチーム温度)


エタノール合成反応器における温度分布は入口出口温度、ガス組成、そして反応熱除去の仕組みにより変わってくる。入口出口温度やガス組成は物質熱収支計算により一義的に決まってくるが、反応熱除去あるいは回収の仕組みは合成管の構造に左右される。さきほどの合成反応器熱回収で構造形式を熱交換器方式としているので、この構造を前提に温度分布を想定すると下図のようになる。図の左には反応器の構造を、右側に温度分布を示した。構造としてはチューブ(冷却管)とシェル(胴体)に分かれている。チューブ側には触媒が充填されており、ガスは上から下へ流れ、シェル側下方からは水が流入し、上方へ移動する間に反応熱を除去することで蒸発する。

また、温度分布図を見るとわかるように、流入したガスは最初は断熱的に温度上昇しピークを迎え、その後、冷却媒体である水・スチームと熱交換しながら、しだいに一定温度に落ち着いていく。その際、水・スチーム温度は一定に保たれており、ガス側の入口温度と出口温度の間を示している。
この時の入口出口ガス組成を示す。

Component Inlet mol% Outlet mol%
H2 73.80  44.02 
CO 0.59  0.87 
CO2 24.22  14.09 
N2 1.25  1.74 
C2H5OH 0.05  9.84 
H2O 0.06  29.44 
Total 100.00  100.00 
Total 13,626  9,798 

この出口におけるガス組成から水の凝縮温度(飽和温度)を算出すると約175℃になる。つまり、反応ガス温度が何らかの原因で175℃以下になることがあれば、ガス中に含まれているH2Oの一部が凝縮することになり、それは触媒へのダメージやガス流れに影響を及ぼすことが十分に考えられるので、是非とも避けなければならない。

このような可能性は果たしてあるのか。一つ考えられるのは、冷却管(チューブ)の内面である。つまり、チューブ外表面温度は水・スチーム温度に極めて近く、内面温度は主にチューブ壁の伝熱抵抗により決定される。チューブ材質(一般には合金鋼)の熱伝導度は良好なので伝熱抵抗も小さく、チューブ内面温度も水・スチーム温度に極めて近いと考えられる。
そこで、このエタノール合成管で回収するスチーム条件を以下のように設定する。

  • スチーム飽和温度=ガス出口側におけるH2O凝縮温度+10℃(余裕)=175℃+10℃=185℃


この温度条件であれば、ガスが反応の途中で凝縮することもなく、反応熱を適切に回収できるとした。(余裕10℃が十分かどうかは今後の検討課題)
Tubular reactor and temperature profile

8.5 発生スチーム量の計算

先ほど、発生するスチームの飽和温度を185℃(飽和圧力1.123MPa)に変更しましたので、発生スチーム量を再度計算することにします。

ただし、前回計算した際には反応熱をスチーム潜熱で割り算しており、エタノール合成反応器に供給される水の温度を飽和温度に等しくしておりました。
しかし、水の供給温度は供給システムの環境に依存しますので、必ずしも飽和温度にはなりません。そこで、水の供給条件を1.2MPa & 100℃し、発生スチームを求めます。

  • 発生スチーム量=冷却負荷÷スチーム発生所要熱
  •           =(49,504kW×3600kJ/h/kW)÷(2,780.4-419.9)kJ/kg
  •           =75,499kg/h


つまり、エタノール生産量(1058ton/day)当たり、約1.7tonのスチームが発生します。

  • スチーム原単位=75.5ton/h×24h÷1058ton/day=1.713ton/ton
「エタノール合成設備」(連載終了)
第1章 設計基本(Design Basis)
1.1 エタノールの仕様
1.2 水の仕様
1.3 二酸化炭素の仕様
第2章 プロセスの構築と設定
2.1 プロセス名称の決定
2.2 合成反応とプロセスの設定
第3章 合成反応条件の設定準備
3.1 反応条件設定項目
3.2 反応温度の設定
3.3 反応圧力の設定
3.4 原料の流量・組成の設定
3.5 平衡反応率の計算
第4章 合成条件のケーススタディ
4.1 ケーススタディの手順
4.2 圧力と温度のケーススタディ
4.3 ケーススタディ結果の考察
第5章 プロセスの改良
5.1 循環比とエタノール生産量
5.2 循環システムの構成
第6章 物質収支計算
6.1 物質収支計算ソフトの作成
6.2 物質収支計算結果
第7章 熱収支計算
7.1 運転条件の設定
7.2 熱収支計算結果
7.3 熱回収システム
7.4 全体物質熱収支
第8章 冷却負荷とスチーム発生
8.1 冷却負荷
8.2 発生スチームと合成管熱回収
8.3 スチームの利用形態
8.4 スチーム条件の設定
8.5 発生スチーム量の計算
第9章 エネルギー収支
9.1 エネルギー収支表の作成
9.2 合成ガス循環機の軸馬力計算
第10章 スチームの有効利用
10.1 スチームの利用方法
10.2 合成ガス循環機動力の再計算
第11章 スチームシステムの構築
11.1 スチームシステム
11.2 スチームタービン
11.3 スチームタービン形式の選択
第12章 スチームタービンの熱収支
12.1 スチームタービン可能動力
12.2 抽気復水タービン