10. スチームの有効利用
10.1 スチームの利用方法
第8章で明らかにしたように、供給条件を1.2MPa & 100℃、スチーム条件を185℃飽和スチーム(飽和圧力1.123MPa)とした場合の発生スチーム量を75,499kg/hと設定しました。
次に、このスチームを有効利用することで、エタノールのエネルギー原単位の改善を図ることにします。
スチームの有効利用として考えられる手段は、
- 熱源として利用
- 加熱器用熱源として利用する。例えば、プロセス熱交換器や蒸留塔リボイラーの熱源。
- 温水用熱源として利用する。
- 吸収式冷凍機用熱源として利用する。
- 乾燥用としてして利用する。例えば、バイオマスの乾燥など。
- 動力源として利用
- スチームタービンの駆動用として利用する。
- スチームエジェクターの作動用スチームとして利用する。
エタノール合成設備内で必要とするエネルギーは合成ガス循環機動力のみで、そのエネルギー量は528kWとスチーム発生熱量(49,504kW)のわずか1%強にしかなりません。そこで、スチームのユーザーを合成設備外にも捜す必要があります。
そこで、スチームの利用方法として以下のように設定します。
- 合成ガス循環機の駆動機としてスチームタービンを採用し、その駆動用に発生スチームの一部を利用します。
- 粗エタノールから水を分離するためにエタノール蒸留塔を追加し、発生したスチームを蒸留塔のリボイラー熱源として利用します。
つまり、これ以降、エタノール合成設備にエタノール蒸留設備を追加し、合わせてエタノール製造設備とします。
10.2 合成ガス循環機動力の再計算
ここでは"Dresser-Rand"にアクセスして、合成ガス循環機動力の再計算を行います。
Deresser-RandのTurbo Productの左欄に"DATUM Estimation Tool"がありますので、そこをクリックすると中央に、
Begin Selection Process - Step 1 - Gas Mixture Entry>>
がありますので、そこをクリックしますと分子量を入力するか、比重(空気を1とする)か、またはガス組成を入力するかを聞いてきますので、まず分子量に適当な数値を入れてContinueを押しますと、Step 2に移行してガス組成の入力欄が出てきますので入力します。入力が終わりましたら、次のStep 3に移動し、吸込条件や吐出条件を入力して計算を行います。
ただし、使用するインターネットプラウザがFirefoxでは操作できないことがありますので、その場合にはInternet Explorerに切り替えて操作してみて下さい。
Component | mol% | |
H2 | 72.30 | |
CO | 1.43 | |
CO2 | 23.14 | |
N2 | 2.86 | |
C2 as C2H5OH | 0.12 | |
H2O | 0.15 | |
Total | 100.00 |
その結果を下図に示しました。この結果によれば、BHP(軸馬力)は492kWと当初想定した数値より少なくなっています。この主な原因は効率の違いで、今後はこの492kwを使用することにします。
項目 | 計算 | DATUM |
吸込圧力 Bara | 28 | 28 |
吸込温度 deg.C | 35 | 35 |
吸込流量 kg/hr | 72,599 | 72,441 |
吐出圧力 Bara | 31 | 31 |
吐出温度 deg.C | 45 | 45 |
揚程 m | 2,094 | 2,096 |
効率 % | 80 | 84 |
軸馬力 kW | 528 | 492 |
- 「エタノール合成設備」(連載終了)
- 第1章 設計基本(Design Basis)
- 1.1 エタノールの仕様
- 1.2 水の仕様
- 1.3 二酸化炭素の仕様
- 第2章 プロセスの構築と設定
- 2.1 プロセス名称の決定
- 2.2 合成反応とプロセスの設定
- 第3章 合成反応条件の設定準備
- 3.1 反応条件設定項目
- 3.2 反応温度の設定
- 3.3 反応圧力の設定
- 3.4 原料の流量・組成の設定
- 3.5 平衡反応率の計算
- 第4章 合成条件のケーススタディ
- 4.1 ケーススタディの手順
- 4.2 圧力と温度のケーススタディ
- 4.3 ケーススタディ結果の考察
- 第5章 プロセスの改良
- 5.1 循環比とエタノール生産量
- 5.2 循環システムの構成
- 第6章 物質収支計算
- 6.1 物質収支計算ソフトの作成
- 6.2 物質収支計算結果
- 第7章 熱収支計算
- 7.1 運転条件の設定
- 7.2 熱収支計算結果
- 7.3 熱回収システム
- 7.4 全体物質熱収支
- 第8章 冷却負荷とスチーム発生
- 8.1 冷却負荷
- 8.2 発生スチームと合成管熱回収
- 8.3 スチームの利用形態
- 8.4 スチーム条件の設定
- 8.5 発生スチーム量の計算
- 第9章 エネルギー収支
- 9.1 エネルギー収支表の作成
- 9.2 合成ガス循環機の軸馬力計算
- 第10章 スチームの有効利用
- 10.1 スチームの利用方法
- 10.2 合成ガス循環機動力の再計算
- 第11章 スチームシステムの構築
- 11.1 スチームシステム
- 11.2 スチームタービン
- 11.3 スチームタービン形式の選択
- 第12章 スチームタービンの熱収支
- 12.1 スチームタービン可能動力
- 12.2 抽気復水タービン