水素プロセス

水素の工業的製造法には、炭化水素を原料とした水蒸気改質や部分酸化、石炭のガス化、水の電気分解などがある。

その他のプロセス


水素を原料としてアンモニア、塩酸、メタノール、高級アルコールなどが工業的に製造される。また、原油や食用油などの水素化にも使用される。実験室では亜鉛に希硫酸を加えて作る。

水素の物性 (出典はNIST

  • 分子式 H2、分子量 2.01588
  • CAS Registry No. 1333-74-0
  • 融点Tf 13.95K、沸点Tb 20.39K
  • 臨界温度Tc 33.18K、臨界圧力 Pc 13.00bar
  • 燃焼熱 241.8kJ/mol

水素製造プロセス


水素は地球温暖化を左右する今後の世界のエネルギー源の一つです。この水素を製造する方法は、原料の種類や製品の性状により大きく変わってきます。大型の水素プラントでは天然ガスを原料とした水蒸気改質法が採用されることが多いので、ここでは天然ガスを原料とした水素の製造プロセスについて説明いたします。

水素製造プロセスの特徴

天然ガスを原料とした水蒸気改質法による水素製造プロセスの特徴は、

  1. 水素製造プロセスは、脱硫工程、水蒸気改質工程、CO転化工程およびガス精製工程から構成されている。
  2. 運転圧力は原料の供給圧力や製品水素圧力に関係するが、おおむね2MPa以下である。
  3. プロセス側の最高運転温度は水蒸気改質工程における改質温度であり、750~900℃である。

水蒸気改質法の特徴

かっては水素の工業的製法として電気分解法(水電解)、水性ガス製造法などが採用されていました。その後、天然ガスなどの炭化水素原料を主体とした水蒸気改質法が水素製造法の主流となり、現在に至っています。

水蒸気改質法は、メタンを主成分とする天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)あるいはナフサなどの炭化水素系原料にスチームを加え、高温下で改質して水素などを生成します。この水蒸気改質反応は、水素を中間製品や製品とする水素プラント、メタノールプラントおよびアンモニアプラントに採用されており、最近では燃料電池の水素製造システムにも使用されています。

メタンを原料とした水蒸気改質反応(Methane Steam Reforming Reaction) では、メタン1molとスチーム1molと反応し、1molの一酸化炭素と3molの水素を生成します。この水蒸気改質反応は吸熱反応で、反応熱は水素の燃焼熱(57.792kcal/mol)の約85%に相当します。
また、同時に一酸化炭素の転化反応が進行し、1molの一酸化炭素とスチーム1molが反応し、1molの二酸化炭素と1molの水素を生成します。この反応は水蒸気改質反応とは異なって発熱反応です。

  • CH4 + H2O = CO + 3H2 + 49.271kcal/mol
  • CO + H2O = CO2 + H2 – 9.755kcal/mol

これら二つの反応の組み合わせにてメタンなどの炭化水素は水素や一酸化炭素に改質されます。総合的には吸熱反応となるので、外部から熱を与えなければ反応は継続することは出来ません。

水素製造プロセスの説明

脱硫工程

原料である天然ガスは90%程度がメタン(CH4/C1)であり、それ以外にC2以上の炭化水素、N2やCO2などを含んでいます。また、一般的に天然ガスは硫黄分(S)を数~数十ppm程度含んでおり、それ以外に塩素分(Cl)あるいは水銀(Hg)を含む場合があります。

硫黄分や塩素分は下流の水蒸気改質触媒や転化触媒の触媒毒のため、上流側であらかじめ除去しておく必要があるので、この脱硫工程(Desulfurization)で原料を加熱し脱硫器などに供給して硫黄分などを除去します。この運転温度は除去すべき物質や触媒の種類によっても異なりますが、おおよそ150~400℃で、触媒の交換時期も含め触媒メーカーの情報を参考にして決めるのが通例です。

水蒸気改質工程

水蒸気改質工程(Steam reforming)では、メタンを主成分とする天然ガスに改質スチームを加え、高温下(750~900℃)で改質して水素やCOなどを生成します。この改質反応(吸熱)に加えCO転化反応(発熱)も起こりますが、総合的には吸熱反応となるので、外部から熱を与える必要があります。そのために改質触媒を通過する天然ガス+スチームに外部から熱を与えるために、多数の燃焼バーナーと改質触媒を充填した改質管から構成される水蒸気改質炉が採用されます。

水蒸気改質炉を出たプロセスガスは、廃熱ボイラなどで200~350℃まで冷却され、次のCO転化工程に送られます。この廃熱ボイラではスチームを発生させるようになっており、一部は改質用に残りは外部にエクスポートされます。

CO転化工程

CO転化工程(Shift conversion)はガス精製工程の仕様に合わせて機器や触媒を選定します。ここで説明している水素製造設備ではガス精製技術としてPSA方式を採用しているので、CO転化工程出口のCO濃度は比較的高くすることが出来ますので、高温転化技術を採用しています。

高温転化器を出たプロセスガスは徐々に冷却され、次のガス精製工程へ送られます。

ガス精製工程

ガス精製工程ではPSA方式を採用しています。
冷却されたプロセスガスは凝縮水を分離した後にPSAユニットに供給され、水素と他のガス(CO/CO2/CH4/N2/H2O)を分離します。分離された水素は需要先へと送られます。残ったガス(Waste gas)には水素やCO/CH4などが含まれており、水蒸気改質炉の燃料として再利用されます。PSAでの水素の回収率(製品水素/PSAに供給された水素)はPSAの規模(吸着塔数)により異なりますが、おおよそ80~90%以上となっており、製品中の水素濃度は99.999%、つまり不純物10ppmを可能とします。

水素の精製方法

代表的な精製方法としては以下の三方式があります。

  • 脱炭酸+メタネーション方式
  • PSA方式
  • 膜分離方式

脱炭酸+メタネーション方式は、水蒸気改質工程とCO転化工程で処理された粗ガス中のCO2を選択的に分離し、さらに残ったCO2とCOをメタンに転換させて水素を得る方法です。水素純度はPSA方式に比べ低く(90~96%)、また運転コストやメンテナンスコストもが高いので、最近の水素製造設備ではほとんどがPSA方式を採用しています。
膜分離方式は、膜を使って粗ガスから水素を分離する方式で、粗ガスと製品水素の圧力差を利用しています。そのためにPSA方式などに比べ、粗ガスの圧力が高いことが要求されますので、石油精製設備などから回収される高圧の廃ガスからの水素回収に使用されることが多いようです。
そのために圧力がせいぜい2MPaの水蒸気改質工程の下流に、膜分離方式による水素精製工程が設置されることはないようです。